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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第一章 ダイク 五歳
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閑話 ルバークのこれまで

このお話で一章は終わりです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


二章からもよろしくお願いします!

わたしの名前はルバーク。

今年で三十六歳。

母方の祖母のドワーフの血を色濃く継いで、見た目は少女の様だとよく言われるわね。

母はそんなことなく、普通の人間と同じように成長しているのになんでかしら。


十二歳で親元を離れて、別の街で魔道具士見習いとして働いていたの。

みんな小さいわたしを可愛がってくれたし、とてもいい職場だったわ。

給金も他と比べれば高かったし、大好きな魔道具を扱えることが何より嬉しかったのよね。


大小、様々な魔石を加工して、魔道具を作る。

だんだん生活が便利になっていく、そんな仕事にやりがいを感じ、毎日が楽しかったわ。


親方に「もう少しで一人前だな。」と言われたころに、生活が一変する出来事が起こったの。

流行り病の魔熱病って病気になっちゃってね、もう死ぬかと思ったわよ。

実際、罹ったほとんどの人が亡くなったって話を聞いていたから、なおさらね。

治癒院でお世話になりながら何とか回復したんだけど、治ったころには頭に角が生えているし、散々だったわ。

鬼になったとか、もともと魔族だったんじゃないかとか。

そんな話がわたしの耳にも聞こえるように、病室の向こう側からわざと言われたりしたわね。


治癒院を出た時には、街中に噂が広まっていて・・・。

わたしを見つけると蜘蛛の子を散らすように、みんな家に帰っていくの。

親方のところに回復の報告をしに行った時にも、親方以外は他と同じ感じだったわね。

あんなに可愛がってくれていたのに・・・。

今でも夢見るくらい、すごくショックだったのを覚えている。


親方はこのまま働けばいいって言ってくれたけど、そんな親方の迷惑になりたくなかったのよね。

辞めることを伝えると、退職金だって袋に沢山の金貨とマジックバックをくれた。

とても貴重なものなのに・・・。

親方に今までのお礼を伝えて、家に向かって歩いたの。


帰り道にある露店で食べ物を買おうと思っても、わたしなんかいないかの様に無視。

この街に、わたしの居場所はもう無かった・・・。


あの時は、大粒の涙を止めることができなかったわ。

走って家に帰って、マジックバックに荷物を詰め込んでね。

ヘアバンドとローブをつけて、逃げるように街を出たの。


両親の元を訪ねて、実家のある街に戻ってみたんだけど、そこにも噂は届いていたのよね。

わたしの名前までしっかりとね。

実家のある場所まで、こそこそと隠れながら行ってみたけど、そこには実家だったものしかなかった。


両親はたぶん、街の人たちに追い出されたんだと思う。

がれきの山を見て、両親に申し訳ない気持ちで潰れそうになったわ。


それから、いくつかの街に行ってみたけれど、どこも同じ感じだった。

食料を買い込んで、すぐに街を出てを繰り返したの。


どこの街にも、わたしの居場所は見つけられなかった。

もう、何のために生きているのか・・・そんな気持ちでいっぱいだったわね。

そんな中、足を踏み入れてはいけない森の話を、たまたま門番さんに聞いたの。

わたしの暮らしていた街からはかなり離れていたし、そんな話は聞いたことなかったのよ。


森に入ると、鬼蜘蛛に食べられるっていう子供に聞かせてやるような話だったのを覚えているわ。

昔に活躍した冒険者の従魔が住んでいる森らしく、立ち入り禁止になっているという話も別の人から聞いたの。


あのころのわたしは肉体的にも精神的にも疲れ切っていたの。

もう蜘蛛に食べられるなら、それでもいいと思っていたのは間違いないわ。

マジックバック片手に森に乗り込んだの。

どんどん奥に進んでいったんだけど、鬼蜘蛛もいなかったし、きれいな森で心がすっきりしたのを今でも覚えている。

安心したら、眠気に襲われてね、木に寄りかかるように寝ちゃったのよ。


起きたら、大きな蜘蛛たちに囲まれていたの。

あれほど驚いた経験はないわねぇ。


糸でぐるぐる巻きにされて、どこかに連れていくんだもの。

門番さんが言ってたことは本当だったんだと、意外と冷静な自分にビックリもしたわ。

死を覚悟して、大人しくしていると、大きな木を登りだして・・・。

その上には、さらに大きな蜘蛛がいて声も出なかったわ。


そしたら、頭の中に声が聞こえてきたの。


とても不思議な感覚なのよね。

目の前の大きな蜘蛛が語りかけてくるのよ。

子蜘蛛たちからはマザーと呼ばれてるってことや、子蜘蛛たちと森を守ってほしいことをね。

もしかしたら、わたしの事情をなんとなく分かってたのかもと、今になっては思うのよ。

だって、わたしはあの時「はい」くらいしか言ってないのよね。

それに、何も知らない人に、昔、主人と暮らしていた家をあげないものね。


マザーと別れてからは、鬼蜘蛛たちが家まで案内してくれたわ。

この子たちには食べられちゃう、なんて失礼なことを思って申し訳なくなるくらい助けてもらったわ。

家の手入れもしてくれていたんでしょうね。

とてもきれいな状態で保たれていたの。


キッチンや洗面所はわたしには使いづらい高さだったから、改修させてもらったくらいでとても快適な生活を送ることができたの。

何より幸せを感じたのは、魔石が大量に保管されていたことね。


朝は散歩がてら森の見回りをして、問題がなければほとんど魔道具の作成に時間を割いたわね。

たまに、マザーから魔獣の侵入の知らせが届いて、鬼蜘蛛達と協力してやっつけたりもしたわ。

年に三回くらいはこそっと街にも行ったのよ。

やっつけた魔獣と鬼蜘蛛たちが作る糸や布を売って、食料を大量に買い込んで、森に籠るのよ。

たまにマジックバック目当てに、おバカさんたちが襲ってきたけど、簡単に返り討ちにできるほど強くもなったわ。


すごく充実していたから、あっという間に年月も過ぎた。

ロデオと出会ったのはこの森に来て十年を過ぎた頃だったかしら。


マザーから知らせで、森の外に馬と空の荷車が乗り捨てられていたの。

その時に、はじめて鬼蜘蛛たちが人間をこの森に入れないようにしていることを知ったの。

わたしは入れてくれたのに・・・。

馬はこのままじゃ可哀そうだから、家に荷車ごと連れて帰ったの。

もう十年近い付き合いになるのね。


ロデオのお陰で、街にも気軽に行けるようになったし、何よりおバカさんたちに絡まれることが減った。

ロデオのお世話の時間ができたけれど、全然苦じゃなかった。

嫌な顔をせず、わたしの話を聞いてくれるしね。


新たなルーティンが増えてから、また十年くらいかしら。

マザーから森に小さな子供が二人、入ってきたことが伝えられた。

わたしとしては、家に帰してあげるなり、保護するなりしたかったけど、マザーが様子を見ようっていうのよね。

理解できなかったけれど、まだ食べるものも豊富にある季節だし、きっと大丈夫よね。


そうは言いながら、たまに草葉の陰から覗いていたのよ。

マザーの住まう木の隙間で、楽しそうに暮らしていたわね。

お兄ちゃんがダイク君で弟くんがロゼ君ね、いい名前だわ。

このことはもちろんマザーに知られていて、怒られた。

指示するまで、近くに来るなと禁止令まで出されてしまった。


転生者の話をマザーから聞いたのも、このころだったかしら。

突拍子のない話だと、話半分に聞いていたわ。


少し肌寒くなってきたころだったかしら、森に異変が起こったのよね。

マザーの縄張りの外側の森から、大量のウルフが入り込んできたの。

今までとは比べられないほどで、マザーにできる限りの鬼蜘蛛を集めてもらって対処したわ。

やっと終わったと思えば、今度はダイク君が大怪我をしているってマザーから知らせが届いてね・・・。

鬼蜘蛛を集めたせいだわって血の気が引いたのを覚えている。


急いで向かって、見つけた時にはもう駄目だと思ったわよ。

あまりにも血を流れていたし、わたしも大怪我に効く薬なんて持っていないもの。

せめてロゼ君の側に、と肩を担いで連れてったの。

そしたら、二人についていた鬼蜘蛛が淡く光って回復魔法で傷を治しだすし・・・。

ロゼ君の栄養状態も治っていくし・・・。


一体、何のために小さな子供がこんな目にあっているのかしら・・・。

一体、マザーには何が見えているのかしら・・・。



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