第20話 風呂を満喫しました
家に戻ると、ロゼがコップに水を用意していた。
「ロゼ、まずはご飯にしようか。食べた後に手伝ってくれる?シラクモもそれでいい?」
「うん、いいよ~!」
シラクモも前足をあげて応えてくれる。
テーブルの上に、ルバークが置いてくれた食料があった。
そこにはパンが三つと、鍋に三人分くらいのスープが入っている。
「ロゼはスープの食器を用意してくれる?」
ロゼはコクリと頷き、キッチンの棚を開けて皿を探し始めた。
鍋をコンロの上に置いて、魔石に触れてスープを温めなおす。
コンロと言っても、見た目はIHのような感じで火が出るわけではないので安全だ。
「ルバークさんは食べないの?」
「やることあるから、食べててって言ってたよ。」
スープを器によそって、テーブルに並べ、席に着く。
「「いただきます!」」
少し前までは二人と一匹の生活が当たり前だった。
まだ数日しか一緒にいない、ルバークのいない食卓は少し寂しかった。
ロゼもそれを感じているのか、元気がない気がする。
「ルバークさんが部屋から出てきたら注意しないとね。食事はみんなでしないとダメだよって。」
「そうだね、ボクが注意するよ~。」とロゼは意気込んでいる。
食後、使ったコップや皿を浄化できれいにして棚に戻した。
「ダイク兄、はやく直しちゃおうよ~。」
「そうだね、ロゼはコップ持ってね。俺は水持っていくから。」
アイテムボックスから水筒を二つ取り出し、満杯にして裏庭に向かう。
露天風呂に着くと、すぐにロゼとシラクモは接着剤を作り出す。
できた接着剤をひび割れに流し込んでいく。
数回繰り返して補修作業自体は終了し、乾燥を待っていた。
「それでダイク兄、これは何なの~?」
「ごめん、説明してなかったね。お風呂だよ。ここを暖かいお湯でいっぱいにして入るんだ。」
ひび割れを避けて、風呂に入るジェスチャーを交え教えてみた。
「あはは、それじゃ服がぬれちゃうよ~。」
「もちろん服は脱いでだよ。あったかくて気持ちいいんだよ。シラクモも入れるなら一緒に入ろうな。」
前足をあげてコクコクと頷いている。
補修個所を触ってみるとすっかりと乾いている。
水漏れの確認を兼ねて、水魔法の練習をすることにした。
「ロゼ、もう少し魔法の練習をしてみよっか。手から水が出るイメージできる?」
「うん、できるよ~。やってみる!」
ロゼはう~ん、う~んと唸りながら頑張っているが、水は出てこなかった。
俺も蛇口をひねるイメージで手に集中すると、ちょろちょろと指から水が出てきた。
「ダイク兄、すごい!水がでてるよ~!!」
風呂の底一面に水が張れたところで、魔法を止める。
鑑定してみると、スキルに水魔法が追加されていた。
「ロゼ、火魔法と同じように魔石を使う感じでやってごらん。さっきも使ったでしょ。」
う~ん、う~んと唸りながら頑張るが、水は出てこなかった。
「なんでだろう、あとでルバークさんに聞いてみようか。」
「そうだね。ダイク兄はすごいねぇ~。」
「直したところからの水漏れも無さそうだし、他も大丈夫そうだね。家に戻ろうか。」
手を繋いで、家に帰った。
ロゼとシラクモで遊んで過ごしたが、日が落ちてもルバークは部屋から出てこなかった。
昨夜の残りの蜂蜜漬けのウルフ肉をオーブンで焼きはじめたが、まだ降りてこない。
「ロゼ、ルバークさんの様子を見てきてくれる?」
「うん!」とバタバタと階段を駆け上がっていった。
しばらくオーブンを覗きながら待っていると、ロゼがルバークの手を引っ張るように降りてきた。
「ルバークさん、お昼はちゃんと食べましたか?」
「ごめんね、ダイク君。ちょっと集中しててね・・・。ロゼ君もごめんなさい。」
「も~、ダメだよ。ごはんはみんなで食べるんだから~。」
プンプンと怒っているロゼを見て、俺とルバークは笑った。
お肉も焼き上がり、仲よく三人と一匹でいただきますをして、夕飯を食べた。
「それで、二人はあれから何してたのかしら?」
食後のお茶を配りながら、ルバークが聞く。
「聞いて~。今日はね~まほうのれんしゅうしてね~、おふろを直したの~。」
ロゼがルバークが部屋に籠ってからの出来事を説明してくれる。
「頑張ったわね~。」と頭を撫でながら、説明してちょうだいという目をこちらに向ける。
「二人とも、浄化を使えるようになりました。俺は水魔法も少し使えました。あと、裏庭へ出て左手に岩が積んであった場所あるじゃないですか。その岩の下にお風呂がありました。補修もしたので、飲み終わったら入りませんか?」
ルバークが部屋に籠ってからの出来事を報告した。
「そう、二人とも頑張ったのね。で、お風呂って何かしら?」
簡単にお風呂の説明をした。
ルバークが知る限り、お風呂を使っている人はいないらしい。
魔法を使うか、体を拭くかで済ませているようだ。
何に使うのか分からなかったので、岩置き場になったようだ。
ちなみに、岩はもともと魔物だったものらしい。
ゴーレムのような魔物だろうか。
「ロゼも頑張ったので、お風呂を見に行ってみませんか?」
そういうと、飲み終わった茶器を片付け、ロゼがルバークの手を引いて裏庭へ向かった。
外はすっかり日が落ちて、真っ暗だった。
「ダイク君、灯りイメージして魔法を使ってみて。」
言われた通り、イメージすると、手のひらからほんのり明るい光の玉が浮かんだ。
鑑定すると光魔法がスキルに増えた。
「ダイク君は魔法の才能があるわね。少し待ってね。」とマジックバックからランタンを取り出した。
ランタンに火を灯すと、消していいわよと言われたので、魔法は消した。
「これがおふろだよ~!」
ランタンの灯りでほんのりと照らされた、岩風呂が披露された。
「ルバークさんは水を温めることはできますか?俺が水を入れるので・・・。」
「任せてちょうだい。魔力が辛くなったら言ってね。わたしが代わるわ。」
指先に集中して、蛇口を緩めるイメージでドバドバと水を注いでいく。
どんどん蛇口を緩めるイメージで、手からは滝のように大量の水が注がれた。
「すごいねぇ。ダイク兄、頑張って!」
そんなロゼの応援もあってか、八分目まで溜まったところで止める。
「ルバークさん、お願いします!」
「お疲れ様。魔力は大丈夫?あとは任せてちょうだい!」
ルバークは屈んで、手を水にいれて温度の調整をしてくれた。
俺も手を入れて、温度の確認をした。
「このくらいで大丈夫です。ルバークさん、先に入りますか?」
「何言ってるのよ、一緒に入りましょう。ねぇ、ロゼ君もそう思うわよね?」
「うん、シラクモもみんなではいろ~!」
「それとも、また脱がせてほしいのかしら?ほら早く脱いで。」とルバークは恥ずかしげもなく、脱ぎながら言った。
「わかりましたよ。ロゼ、脱いだら浄化をみんなにかけてくれる?」と渋々脱いだ。
ロゼも体をくねらせ、服を脱ぎ捨てて、それぞれ魔法をかけてきれいにしてくれた。
「ロゼ君、魔法が上手になったわねぇ。」と裸でロゼの頭を撫でながら褒めている。
ルバークの控えめな胸と引き締まった体を見ても、変な気は起きなかった。
足からゆっくりと湯に浸かっていく。
ふぅ~。少し熱めだけど、気持ちいい。
岩にもたれかかるように肩まで入ると、それを見たルバークも真似して肩まで浸かっていた。
ロゼには少し深いみたいなので、俺の上にのせ、後ろから抱くように肩まで浸からせた。
シラクモもお湯にぷかぷかと浮いていた。
「あ゛~、気持ちいいわねぇ~。なんで今まで使ってこなかったのかしら。損したわ。」
「本当に気持ちいいですね~。これから毎日入ればいいですよ。ロゼはどう?」
「いいねぇ~。」
みんなで湯に溶けるように、お風呂を満喫した。
冬の間、吹雪くことはなくなったが、雪はしんしんと降り続いた。
午前はロデオの世話と魔法の練習、午後からはルバークからもらった木刀を振ったり、走り回ったり、簡単な自重トレーニングをして過ごした。
一日の終わりにみんなで露天風呂に入って寝る。
そんなルーティンを繰り返し、冬が過ぎ去っていった。
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