第17話 魔法の授業
「ちょっと、休憩しましょうか。」
ルバークがマジックバックから茶器を取り出した。
ロゼの職業は勇者候補生となっていた。
神様はロゼを守るために、俺をこの世界に送ったのだろうか。
いや、候補生ってことは他にも何人かはいるってことだろ。
鑑定を使える人や魔道具が普及しない限り、見つかることもないのかな・・・?
カチャリと目の前に湯気の立ったティーカップが置かれた。
「ダイク君、あんまり考えてもしょうがないわ。分からないことは分からないものよ。そんなことより、今日は魔法を練習しましょう。お茶を飲んだらね。」
「・・・そうですね。」
疑問はいったん置いておいて、魔法に集中しよう。
冷えてしまったお茶をゴクゴクと飲み干した。
「さぁ、飲み終わったわね。はじめましょう。」
浄化と魔法で茶器を綺麗にしてマジックバックに戻しながら言う。
「テーブルが邪魔だから、ダイク君のアイテムボックスに入るかしら?」
言われた通り、テーブルを触り収納する。
ルバークはふーんと顎を触りながらその様子を見ていた。
「どうかしましたか?」
「いや、わたしのマジックバックはね、入れられるものの大きさに上限があるのよ。ダイク君のアイテムボックスはそんな感覚はあるかしら?」
ん~、そんな感覚は正直ない。マジックバックの上位互換なのだろうか。
「たおれてた大きな木もはいってるよね~。」とロゼが言う。
「倒れた木って・・・まさか、あのサイズも入るの!?」
ルバークには、俺が怪我で倒れていた近くの倒木とすぐに分かったみたいだった。
「ルバークさん、考えるのは後にして、魔法の練習に集中してください。」
ブツブツ独り言を続けているルバークの意識を戻してやる。
「ご、ごめんなさい。じゃあ、まずは魔力を感じるところから始めましょうか。」
ルバークは俺とロゼの手を取り、ロゼと俺も手を繋いで輪を作った。
「二人とも、目を瞑ってくれる?ダイク君にまずは魔力流すわね。」
ルバークと繋いでいる右手から温かい何かが流れ込んでくる。
これが魔力なのだろうか。
「温かいものが流れてきています。」
「そう、それが魔力よ!」
意識して右手から左手に、さらにはロゼに流れるように動かしてと言われたので、魔力を動かしてみた。
思った以上に簡単に魔力を移動させることができた。
しかし、左手首の手前あたりから先に魔力を送ることはできなかった。
「ルバークさん、魔力は動かせるんですが、このあたりから先に流れないです。」
左手首を指差しながらルバークに聞いてみる。
「怪我の影響かしら?ちょっと無理やり流してみるわね。ちょっと痛いかも。」
俺たちの手を放して、俺の左手首をさすった。
「ダイク兄、怪我したの?」
心配そうにロゼはこちらを見ていた。
「大丈夫だよ、ロゼ。少し前に怪我をしちゃって、ルバークさんとシラクモが助けてくれたんだ。」
嘘のない範囲で心配をかけないよう、ロゼに軽く打ち明けた。
「もう痛くないの?ルバークさん、シラクモ、ダイク兄を助けてくれてありがとう!」
頭の上のシラクモとじゃれ合っていた。
そんなやり取りをしている中、ルバークは俺の左手首に集中していた。
魔力の温かさを感じるが、痛みはなかった。
「これでどうかしら?」
再び三人で手を繋ぎ、輪を作って目を瞑った。
ルバークから流れてくる魔力は、無事に左手首を通過し、ロゼの方に流れていった。
「わぁ、ダイク兄の方からあったかいのが来たよ!」
嬉しそうな声が聞こえた。
ロゼからルバークへの魔力のリレーはすんなりと進んだ。
「二人とも、魔力は感じられたわね。」
「「はい!」」
今度は繋いでいた手を放して、自分の中にある魔力を探すように言われた。
目を閉じて、集中する。
しかし、探し出すことはできなかった。
「あったよ、ルバークさん!お腹の下あたりにあるのね!」
ロゼははっきりと認識できていた。
お腹の下あたりを探してみるが、見つからない。
「ロゼ君は見つけられたみたいだけど、ダイク君はどうかしら?」
「ぜ、全然見つかりません。俺には魔力が無いんでしょうか?鑑定の魔道具の魔力欄もおかしかったですし・・・。」
魔力”-”の疑問をぶつけてみる。
「魔力が無いことはないと思うわ。今まで火の魔石も使えていたんでしょう。さっきも鑑定の魔道具も使えていたじゃない。固有スキルの二つも問題なく使えているようだしね。魔力探しは今後の課題にしましょう。今は先に進みましょうか。」
そういうと、ルバークは指先にライター程の小さな火を灯した。
「指先に魔力を集中して火をイメージしてみて。火の魔石を使う感じでやってみてちょうだい。」
体内の魔力を感じられなかったけど、一応やってみる。
指先にライターのイメージを浮かべると、あっさりと火が灯った。
ロゼも苦戦していたが、アイテムボックスから火の魔石を取り出して、一度使ってもらいイメージを捕まえるとできるようになった。
「ダイク君もロゼ君も優秀ね。魔力は見つかったかしら?」
俺の方を見ながら言う。
「まだわかりません。でも火をつけられました。魔法って不思議ですね・・・。」
「そう・・・でも、魔法が不思議っていうのは間違いないわね。わたしにもまだまだ分からないことだらけよ。」
ルバークはフフフと笑った。
魔法が使えるようになった俺とロゼは、何度も火をつけたり消したりを繰り返した。
何十回か繰り返すうちにロゼが「きもちわるい~。」と体調不良を訴えた。
ルバークが言うには、魔力を使いすぎたことで酔ったのだと言う。
寝ていれば治るそうなので、部屋まで戻りロゼを寝かせて、この日の授業は終了した。
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