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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第一章 ダイク 五歳
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第16話 裏庭と鑑定の魔道具

朝食後、お茶を飲みながらルバークに謝った。


ロゼは余程作った靴が嬉しいのか、朝起きるとすぐに靴を履いていた。

靴は外で履くものだよと軽く注意するが、悲しい顔をされるとそれ以上言葉は出てこなかった。

ルバークに「すいません。」と謝るが、笑って許してくれている。


「よっぽど嬉しかったのよね、ロゼ君。みんなで作ったものだしね。」

「うん、ずっとだいじにするんだ~。」

「せっかくだし、履き心地を確かめに外に出てみましょうか?」

ルバークは玄関に行き、自分と俺の二足の靴を持って洗面所と蜘蛛達の作業場の間の廊下を進んでいく。

シラクモを頭に乗せたロゼの手を取ってルバークについていった。


「今日も吹雪いてますけど・・・。この中、外に出るんですか?」

ニマニマした顔をこちらに向け、靴を履きだす。

「ほら、ダイク君も早く履いて!」

しょうがなく、覚悟を決めて靴を履く。

ルバークは靴を履き終えると、躊躇なく廊下の突き当りにある扉をあける。


一瞬、ひやりとした空気を感じたが、雪は降っていなかった。

扉をくぐると、雪ではなく、青々と草や花が茂る庭園が広がっていた。

右側には扉のない小屋が建っていて、馬が入り口から顔を出していた。

庭園の中央には東屋が建っていて、中にはテーブルと椅子が見えた。

左側にはごつごつした岩が並んでいた。


ロゼの手を握りながらルバークに問いかける。

「ここは何なんですか・・・?外は吹雪でした・・・よね?」

「わたしが作ったわけじゃないから、詳しくはわからないわ。あっちの小屋にいるのは、愛馬のロデオよ!」

馬小屋に向かって歩き出した。

ロデオって暴れ馬ですか?すごく大人しそうなんですけど・・・。


上空を仰ぎ見ると、相変わらず吹雪いていた。

目には見えない結界のようなもので雪が防がれているみたいだ。

日に当たっているような明るさがあり、空気はひんやりとはしているが、暖かさも感じる。


ルバークは小屋の前にある餌箱にマジックバックから刻まれた野菜を取り出し、補充していた。

「さわってもいい?ルバークさん。」

ロゼが尋ねると、「いいわよ。」とロデオの側で手を招いた。

栗毛で黒色のたてがみをした馬を「こうやって優しくね。」と目と鼻の間を撫でて見せてくれる。

ルバークと同じように撫でると、つやつやした毛並みをしていた。

はじめはロデオも俺たちの臭いを嗅いでいたが、あまり興味がないのか、小屋を出てご飯を食べていた。


「ロデオはご飯みたいだから、向こうに行きましょうか。」

ルバークは東屋に向かい、マジックバックから魔石の嵌められたiP〇dのような板を取り出した。

「魔法を教えるって言ったでしょ。これは鑑定の魔道具よ。適性の確認をするから、ダイク君から魔石に触れてちょうだい。」


この魔道具はどこまで鑑定できるのだろうか。

転生者だと知られてしまうかな。

二人はどんな反応をするのだろうか。

まぁ、知られてもこの二人なら受け入れてくれるだろう。


考えてもしょうがないので、えいやと魔石に触れた。

魔道具がふわりと光りだし、文字が浮かび上がる。


【名前】 ダイク

【称号】 転生者

【職業】 -

【体力】 30/30

【魔力】 -

【従魔】 シラクモ

【スキル】 火魔法

【固有スキル】 アイテムボックス 鑑定


職には就いてないから”-”でもわかるけど、魔力の”-”はなんでだろう。

魔法は使えないってことかな?

でも、スキルに魔法が書かれている。ん~、なぞだ。


ロゼとシラクモには表示された内容を伝えた。


転生者と表示されたからには、腹を括って話そうとルバークを見ると、ニコニコした顔で文字を眺めて固まっていた。

「ルバークさん、ロゼ、シラクモも。俺は転生してこの世界に生まれたんです。」

「てんせいってなぁに?」

「ん~、前世・・・ここじゃない、別の世界で生きていた記憶があるんだ。思い出したのも最近なんだけどね。」

「そうなの?でもダイク兄はダイク兄でしょ。」

「そうだよ。何も変わらないよ。ロゼは俺の大切な弟だ。シラクモもね!」

ロゼとシラクモをギューッと抱きしめた。


ルバークは一言も発さなかった。

「ルバークさん?」とロゼが動かないルバークを揺すった。

「あぁ、ごめんなさい。実は、マザーからそれとなく聞いていたから。マザーの主も転生者だったらしくてね、何かダイク君に感じてたのかもしれないわね。」

マザーの主とはこの森で余生を過ごした冒険者のことだ。

「転生者って珍しくないんですか?」

「珍しいわよ。というか、マザーの主とダイク君しか知らないわ。公表してないだけの可能性もあるけれどね。鑑定自体珍しい魔法だし、この魔道具もとても貴重なものよ。国にひとつあるかないかってレベルのね。」


「どうしてルバークさんがそんなものを持っているんですか?」

「わたし、マザーから家を譲ってもらったでしょ。家の中に魔石が沢山貯められていたのよ。その中の一つに魔力が込められた魔石があって、調べてみたら鑑定の魔法だってわかったのよ。で、この魔道具を作ったってわけよ。」

そう言いながら、ルバークは魔道具の魔石を触れた。


【名前】 ルバーク

【称号】 鬼蜘蛛の森の守護者

【職業】 魔道具士

【体力】 320/320

【魔力】 1495/1500

【スキル】 火魔法 風魔法 水魔法 土魔法 無属性魔法


「わたしね、街にいた頃は魔道具士の見習いだったの。魔道具士っていうのは魔道具を作る人ね。もう少しで一人前って時に、魔熱病に罹ってこの森に来たのよね。暇つぶしに魔道具を作ってたらある程度のものなら何でも作れるようになったわ。」

二十年近くこの森に住んで、魔獣と戦ったり、魔道具を作ったりした結果なのだろう。

体力だけを比べても十倍以上の差があった。


「そうだったんですね・・・。」

「さぁ、次はロゼ君の番よ。ここの魔石に触ってくれる?」

ロゼは「うんっ!」と元気よく返事をして、魔石に触った。


【名前】 ロゼ

【称号】 -

【職業】 勇者候補生

【体力】 100/100

【魔力】 25/30

【スキル】 火魔法

【固有スキル】 成長加速


ロゼを見ると「なんて書いてあるの~?」と平和そのものだった。

ルバークも知らなかったのか、ポカンとしていたが、ロゼの一言でフフフと笑顔になった。

ロゼにステータスを説明してやった。

俺よりも体力が多いこと、火魔法が使えること、勇者候補生のこと。

「ゆーしゃこーほせいって何だろうねぇ。」

「わたしも分からないわ。ダイク君にもね。ロゼ君はロゼ君の生きたいように生きればいいのよ。」とルバークは言う。


その通りだと思った。

勝手に決められた職業に縛られることなく、ロゼには自由に生きてほしい、と。


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