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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第一章 ダイク 五歳
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第15話 靴作り

俺の一言で、変な空気感になってしまった。


心の中でルバークに謝りつつ、重い空気を打ち破るように明るく話しかける。

「ル、ルバークさん、なるべく平らで深さのあるお皿ってありますか?」

「あ、あるわよ。これでいいかしら?」

調理場にあるオーブンの中から天板を持ってきた。

「はい、汚れちゃうかもしれないんですけど・・・いいですか?」

「いいわよ。浄化クリーンを使えばきれいにできるし、いくつか予備もあるから。」

「ありがとうございます。シラクモ、さっき作ったものをこの天板いっぱいにしたいんだけど、できるかな?」

シラクモは前足をあげて、任せろと言わんばかりに頷く。


コップの形のゴムから枝を引き抜いてみると、すっかり中まで固まっていた。


コップに水を入れてテーブルの上にいるシラクモの近くに持っていくと、水の中に糸を垂らしてくれた。

ロゼに枝を渡して混ぜてもらい、接着剤をつくる。

トロリと天板に流して傾けながら満遍なく広げていく。

五回ほど繰り返し、一センチ程の厚みになったくらいで終わりにする。

トントンと軽く天板をテーブルにぶつけて空気を抜きながら、手伝ってくれたロゼとシラクモにお礼を言う。

二人とも嬉しそうな顔を浮かべていた。


ルバークは作業をジッと見つめていた。

「それは何を作っているの?」

興味深そうに聞いてくる。

「俺たちの靴を作ろうかなと思いまして・・・。」

俺とロゼは今まで靴を履かずに生きてきた。まぁ、与えられてこなかっただけだが。

この家は土足厳禁なのか、ルバークも入り口で靴を脱いで入っていた。

この家にいる限りは必要ないが、外に出られるようになったらほしいよなと思っていた。

今までは生きることが優先で、それどころではなかったので気にならなかったが、この贅沢ともいえる生活を送れているうちに生活用品を揃えたいと思っている。

足の怪我予防にも靴が欲しい。


「これがどうやって靴になるのかしら?」

怪しげな目をこちらに向けている。

「ルバークさんの靴を見せてもらってもいいですか?」

ルバークは玄関の脇の棚から靴を持ってきて、俺に渡してきた。

何かの皮でできた靴だった。

底の部分は皮を何枚か重ねて縫われている。

「底の部分にこのゴムを使って作ろうと思ってます。柔らかいので足にも優しいなぁと思ったんですけど、ルバークさんはどう思いますか?」

「どうかしら?・・・」と懐疑的だった。

まぁ、初めて見たものだし、そんなものだろうなぁと思った。


天板に作ったゴムの様子をみてみると、もう固まっていた。

ひっくり返すと、ペロンと簡単に剥がれてテーブルに落ちた。

軽く折り曲げてみるが、割れたり千切れたりすることもなかった。

「ルバークさんの靴底につけてみますか?」と一応聞いてみた。

「う~ん、そうねぇ。試してみてもいいかしら?」

「では、魔法で靴をきれいにしてもらっていいですか?」

ルバークは浄化クリーンと靴に唱えてくれる。


切り出したいので、床に敷く板が欲しいと言うと、マジックバックから小さなテーブルを作業台として床に出してくれた。

作業台の上にゴムを置いて作業を始める。


ゴムの上にルバークの靴を置いて、余裕を持たせた大きさに短剣で両足分を切り抜いた。

切り抜いたゴムに乗ってみると、程よい柔らかさで潰れることもなかった。

ルバークに靴を履いてもらい、ゴムに乗ってもらう。

「まだ靴と接着していないので、わかりにくいとは思いますが、どうですか?」

「うん、いいわね。柔らかくって足によさそうね。どうやって接着するのかしら?」

「ゴムが固まる前の液体で試してみようと思います。靴を履いたまま待っててください。」

ルバークを椅子に座らせ、待っていてもらう。

ロゼの方を見ると、任せろと言わんばかりの目で接着剤を準備をしてくれた。


ルバークが履いている両方の靴底に接着剤を枝で塗りたくり、切り抜いたゴムに靴を圧しつけてもらった。

暫くして、接着具合を確認すると、しっかりと乾いてくっついていた。

「接着されたみたいなので、立ち上がって確かめてみてください。」

ルバークは立ち上がると、テーブルの周りを歩き回るように履き心地を確かめた。

「いいわ・・・すごく、いい!これで完成なの?」

キラキラした目をこちらに向ける。

このままでは接着が剝がれてしまうかもしれないので、靴底のゴムと革靴を縫い付けて、もう一枚靴底にゴムを貼る予定を伝える。

「皮を縫えるような針と糸はありますか?あれば貸していただきたいんですが・・・。」

ルバークはちょっと待っててと、靴を脱いで階段を駆け上がっていった。


ロゼとシラクモの頭を交互に撫でていると、裁縫セットを抱えたルバークがおりてきた。

「裁縫は得意だから、わたしがやるわね!こんな感じでいいかしら?」

スルスル針に糸を通し、ゴムの靴底と皮靴を縫い付けている。

「そんな感じでお願いします!」


俺とロゼはもう一枚ずつ靴底を切り出し、裏面に滑り止めを簡単に短剣でジグザクと刻んだ。

ルバークの縫い付け終わった靴に接着して、ようやく完成した。

「これで完成です。履き心地はどうですか?」

キュッキュッっと音を鳴らしながら、履き心地を確かめていた。

「いいわね・・・少し重くはなったけど、滑らないし柔らかくって最高ね!」

ルバークはテンション高く言う。


「これを俺とロゼの分、作ります。」

「わかったわ。とてもいいと思うわ。けど、靴自体は作れるの?」

「何とか試行錯誤しようかな、と思ってます。」

「とりあえずは、わたしのお古じゃダメかしら?靴に使えそうな皮もないし・・・ね!」

「ありがたく、いただきます。」


少し大きいサイズの靴を、俺とロゼの二人分いただいた。

その靴を同様に加工して、三人分のゴム底靴が完成した。


ご飯も忘れ、作業に没頭していたので、気が付けば日が落ちて薄暗くなっていた。

ロゼは嬉しそうに、寝るまで靴を履いて過ごした。


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