第13話 ルバークからの謝罪
目を覚ますと、真白な天井だった。
ロゼを起こさないように、ふかふかのベッドから起き上がる。
前世でもこんなにいいベッドは使ってなかったなぁ、なんて考えていると頭に重みを感じた。
「シラクモ、おはよう。ロゼが起きるまで待っていてくれる?」
背中を撫でながら、小声でお願いした。
シラクモはロゼのそばに跳び下り、前足を高く上げコクリと頷いた。
静かに部屋を出て、階段を降りるとルバークが朝食の用意をしていた。
「おはようございます、ルバークさん。」
「おはよう、ダイク君。よく眠れたかしら?」
「あんなにふかふかのベッドは初めてです。気が付いたら朝になってました。」
「フフフ、それはよかったわ。顔を洗ってらっしゃい。」
返事をして洗面所に向かう。
階段の脇の扉を開けると、トイレと小さな洗面台がある。
ルバークの背丈に合わせて作られているようで、俺とロゼも使うのに不自由しない高さだった。
トイレは普通に座ってするタイプのものだった。
さすがにウォシュレットは付いていなかったが、文明を感じる。
洗面台についている魔石に触れると水が蛇口から数秒流れ出てくる。
パシャパシャと顔を洗ってルバークの手伝いに向かう。
用意された朝食をテーブルに並べるのを手伝っていると、突然ルバークが俺の手を取って、頭を下げた。
「ロゼ君が寝ているうちに謝らせてちょうだい。」
なんのことだろうと首を傾げていると、ルバークは続けて語った。
「ダイク君、ウルフに襲われたことあるでしょ。そのことよ・・・昨日のこと覚えているかしら?わたしと鬼蜘蛛たちでこの森を管理してるんだけど・・・。」
管理とは森の環境を守っていたり、魔獣の侵入も防いでいるらしい。
俺が襲われたあの日、ウルフの大群がこの森に侵入しようとしてきたのを防ごうと多くの戦力を割いたことで、別の場所から群れとは別のウルフの侵入を許してしまったらしい。
俺はそのウルフにばったりと出くわし、怪我を負うに至ったということだった。
「本当にごめんなさい・・・。」
「謝らないでください!むしろ、ここで生きてこれたこともおかしいなとは思っていたんです。怪我を治してくれたのは、もしかしてルバークさんなんですか?」
「襲撃を抑え終わったころにマザーから連絡があってね・・・ダイク君が大怪我を負って倒れてるってね。シラクモ君と急いであなたの元に向かったのよ。そしたら、虚ろな目でとウルフのそばに倒れていてね・・・肩を抱えて急いでロゼ君のところまで連れていったのよ。」
あの時の・・・ウルフに襲われて怪我を負ったあとの記憶はぼんやりとしたものしかない。
「ロゼ君の状態にも驚いたけど、あなたがロゼ君に持ってたきのこを食べさせると倒れちゃってね。そしたら、シラクモ君が回復魔法を使ったのよ。ビックリしたわよ。みるみるうちにダイク君の怪我が治るし、ロゼ君も健康的な見た目になったのよ。おそらくシラクモ君は特殊個体よ。鬼蜘蛛が回復魔法を使えるなんて聞いたことないもの。」
「そうでしたか、助けてくれてありがとうございます!怪我したことはロゼには言ってなかったので、余計な心配をかけないですみました。ウルフの処理は・・・ルバークさんが?」
「それはそうね。吊るしただけだけどね。その後は、またウルフたちが森に入り込んできたから処理に奔走してたわけよ。」
そんな話をしていると、ギシギシと音をたてて頭にシラクモを乗せたロゼが階段を下りてきた。
「ダイク兄、ルバークさん、おはよう。」
ロゼが目を擦りながら言う。
「おはよう、ロゼ君」
「おはよう、ロゼ。シラクモ、今までありがとう。これからもよろしくな!」
嬉しそうにロゼの頭の上で両足をあげてクルクルと回っていた。
「え~、ボクも!シラクモ、ありがとう!!あっ、見て見て!!」
窓の方に走りながらロゼが言う。
窓から見える景色は、少し先が見えないほどに吹雪いていた。
「フフフ、すごい吹雪ねぇ。」
「ね~、すごいねぇ~。ダイク兄も見て!」
「うん・・・すごい降ってるね・・・・・・。」
昨日までは我慢すれば水浴びできるかなぁと思えるくらいの気温だったが、一気に冬になっていた。
この天気で、あの家で寝ていたら・・・最悪死んでいたかもしれないと思うとゾッとした。
「ねぇ、ダイク君、ロゼ君。相談なんだけど、暖かくなるまでこの家で一緒に暮らさない?」
「ルバークさん・・・迷惑じゃありませんか?」
「何言ってるのよ。もう知り合ったんだから、こんな中、あなた達の家に戻られる方が迷惑だわ。心配で夜も眠れないじゃない。だから・・・ね、遠慮しないで!」と俺たちの頭を撫でながら言う。
正直、ありがたい申し出だった。
ロゼも満面の笑みを浮かべながらこちらの様子をうかがっていた。
すっかりとルバークに懐いているみたいだ。
シラクモもルバークの頭に飛び移って、前足をあげてコクコクと頷いている。
「ありがとうございます。お世話になります。」
「ありがとうございます。なります!」
ロゼも繰り返した。
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