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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第四章 ダイク 八歳
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第121話 散策

すいません、遅くなりました。

市場を一回り見終わってロゼとガンドのお腹が満腹になると、王都を散策した。

広大な街の中を当てもなく歩いて、王都の雰囲気を満喫する。

膨らんだ腹が少し重たいが、食後の運動としてはちょうどいい。

大通りをメインに少し脇道に逸れるくらいしか見ていないが、街の中央に向かうにつれて建物は豪華になっていく。

大通りに面する建物は綺麗に整備されているが、通りを一つ挟むだけで外壁の近くの建物は貧富の差を感じられるほどに古くてボロボロな建物が散見された。

目に着いた店を物色しながら歩いていると、いつの間にか宿の近くまで戻ってきていた。

「そろそろ戻るとするかのう。どうじゃ?」

断る理由は特になかった。

同じような建物ばかりで、サンテネラとさほど大差はなかった。

店も夕方前だというのに閉まりだしており、見たいものもない。

「俺は戻ってもいいと思います。ロゼは?」

「ボクももういいや!ルバークさんも帰ってるかもしれないし、宿に戻ろうか!」

三人の意見が一致したことで、足取りは宿へと向いた。


俺たちが宿の正門に近づくと、兵士が気がついて門を開けてくれる。

「お帰りなさいませ!どうぞ、お入りください!」

敬礼をしてくるので、仕事の邪魔にならないようにそそくさと一礼して門を潜る。

「なんだか、慣れないね!ボクは兵士さんにもっと普通にしてて欲しいんだけどな!」

ロゼも居たたまれない気持ちを理解してくれているみたいだ。

「あれが兵士方の仕事なんじゃ。わしらは・・・というか、二人は王から招かれている客だからのう。今はこの状況を楽しむしかないのう。」

ガンドがロゼを宥めるように言う。

ロゼは理解はしているんだろうが、納得は出来ていない顔を浮かべている。

「あと三日の我慢だよ。そうすれば、普通に接してもらえるようになるよ。」

そう言って、ロゼの頭を撫でていると屋敷の入り口までたどり着く。

扉を開けようとすると、執事が先に開けて出迎えてくれる。

やはり、この生活には慣れない。


夕食まではまだ時間があり、それぞれの部屋で休むこととなる。

執事が用意してくれたお茶を飲みながら、バルコニーに出て王都の景色を眺める。

「ルバークさん、大丈夫かな・・・?」

隣で景色を眺めていたロゼがぼそりと呟いた。

「大丈夫だよ。たぶん、久しぶりに会えたから話が長くなってるんだよ。もしかしたら、工房で魔道具を作るのに夢中になってるのかもしれないね。」

ロゼにもその姿が想像できたのか、声を出して笑った。

「アハハハ、そうだね!」

お茶を飲み終えると、部屋へと戻って鬼蜘蛛たちと戯れて時間を潰した。


夕食の時間になり、食堂へと向かう。

執事に扉を開けてもらうと、すでにガンドが座って待っていた。

「ルバークさんはまだ帰ってませんか?」

夕飯くらいまでには戻ってくるかなぁと思っていたが、まだ帰っていないのだろうか。

「まだじゃのう。久しぶりに親しい人と会ったんじゃ。酒でも酌み交わしておるんじゃろう。心配せずとも大丈夫じゃよ。」

ルバークが酒を飲んでいるところを見たことが無かったので、想像すらしていなかった。

そうか・・・、酒場にでも行っているのか。

「え~、そうなの~!?ガンドさんはお酒飲まないの?」

ガンドも俺たちと出会ってから、酒を飲んでいない。

「わしは飲めないんじゃよ。弱くてすぐに倒れてしまうらしいんじゃ。味も好きじゃないしのう。わしは酒よりも食事じゃな!」

運ばれてくる美味しそうな食べ物に目を輝かせながら言う。

「そうなんですね。じゃあ、いただきましょうか。」

テーブルの上には、食べきれない量の食事が並ぶ。

どれも美味しそうで、丁寧に時間をかけて調理されていることが分かる。

「「「いただきます!」」」

その言葉を合図に、ガンドとロゼは取皿に色々な料理を山盛りに取り分けて食べ始める。

シラクモとクガネの分の食事を取り分け、俺も食事をいただく。

どの料理も絶品で、お腹が苦しくなるまで食べてしまった。

部屋に戻って膨らんだお腹を擦りながらルバークを待っていたが、いつの間にか眠気に襲われてしまう。

ベッドではすでに、ロゼが寝息を立てて眠っている。

起こさないように静かにベッドに潜ると、すぐに眠ってしまった。


翌日、食堂から漂ってくる美味しそうな匂いで目を覚ます。

昨夜の膨らんだ腹はすでに消えており、新たに膨らます気が満々みたいだ。

ロゼが起きるのを待って、身支度を整えて食堂へと向かう。

執事が食堂の扉を開けると、疲れた様子のルバークが席に座っていた。

「あら、二人ともおはよう。昨日は帰ってこれないで、ごめんなさいね。」

ガンドの言ったことは当たっていたようで、ルバークからは酒の匂いが漂ってくる。

「おはようございます。・・・もしかして、朝まで飲んでいたんですか?」

「おはよう、ルバークさん!少し、お酒の匂いがするね!」

火照った頬を押さえながら、照れたようにルバークは笑う。

「フフフ、そうなの。親方と少し飲んできちゃった。」

少しという時間では無いと思うが、気分のいい所に水を差すようなことは言わない。

「戻っておったのか。親方とはどうだったんじゃ?」

食堂の扉が開くなり、挨拶もなくガンドはルバークに問いかける。

昨日は心配ないと言っていたが、ガンドも少しは心配だったんだろう。

「フフフ、おはよう、ガンド君。悪くなかったわよ。話をしたいんだけど、少し頭がフラフラするの。明日でもいいかしら?あと、今日は冒険者ギルドに三人で行ってもらえる?マティさんが呼んでいたわ。」

ルバークは立ち上がると、フラッとよろけて椅子に捕まって何とか転ばずに済んだ。

「大丈夫ですか?飲み過ぎですよ。」

「も~、しょうがないなぁ~!」

ロゼと二人でルバークの両脇を支えて部屋まで連れていくことにする。

「ごめんなさいね。久しぶりに飲んだから、加減が分からなかったわ。ふぁ~。」

大きな欠伸をしながら、ルバークは抱えられながら俺たちの頭を撫でる。

「そうですか・・・。よかったですね。ほら、行きますよ。」

ルバークと親方との再会は、悪いものでなくてよかった。

楽しそうな足取りで歩くルバークを抱えながら、ふと思った。

「着いたよ!ほら、ルバークさん!ベッドに横になって!」

部屋に着くと、ルバークの目はほとんど閉じかけていた。

「ん~、ありがとぅ・・・。ふた・・・り。」

ほとんど意識のない中、ベッドに入って俺たちにお礼を言うとすぐに寝息が聞こえてくる。

ロゼが布団をかけてやると、静かに部屋を出る。


「ルバークさん、楽しかったみたいでよかったね!ちょっと、お酒臭いけど!」

ロゼが満面の笑みを浮かべてそう言った。

「そうだな。本当によかったな。」

食堂に戻ると、ガンドがお腹を鳴らして待ってくれていた。

「ルバークさんは寝たのか?食事の用意は終わっておるぞ!さぁ、食べよう!」

俺たちが席に着くと、ガンドは「いただきます!」と言って食事を摂り始める。

「あぁ~、ずるいよ!いただきます!」

ずるいも何も、食卓には朝食とは思えないほどの量が並んでいる。

二人は取り合う様に食べているが、俺も負けじと参戦する。

ルバークの心配事が一つ解決したからか、昨晩よりも食事が美味しく感じる。

単純に出ている料理も違うので、比較はできないがそんな感じがした。

心なしかシラクモとクガネも食べるペースが速いとすら思える。


自分のことではないが、自分のことのように朝から嬉しい気持ちで溢れた。


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