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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第四章 ダイク 八歳
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第120話 王都の市場

翌日、用意された豪華な朝食をいただいてから、馬車に揺られて冒険者ギルドまでやって来た。

カウンターに行くと、丁寧な案内で昨日使用した二階にある応接室へと連れてこられた。

扉を開くとグランドマスターがすでに待機しており、着席するなり話し合いが始まった。


「おはよう。朝から来てくれたんだね。お茶でも淹れるから、待っていてくれ。」

机いっぱいに広げていた書類を片付けながら、マティは言う。

「おはようございます。マティさん、お茶ならわたしに淹れさせてください。」

ルバークがマジックバックから茶器を取り出して言う。

「あぁ、・・・ありがとう。お願いするよ。それで・・・。」

ルバークがお茶を用意している間に、事実確認が始まる。

主な話は魔獣木が中心で、ジョセフからしっかりと報告が上がっているのか、俺は終始「はい。」や「間違いありません。」を繰り返した。

「そうかい。・・・それで、君たちはどうやってバルテペスまで行ったんだい?バルテペスの冒険者ギルドでの目撃情報と、リンデンからサンテネラで見かけない魔獣を君たちが持ってきたことは報告を受けているんだ。」

ジョセフに報告は・・・、してなかったか。

妖精の腕輪を使って移動してるんです、なんて言って信じてもらえるのだろうか。

マティの問いかけに頭を巡らせていると、ルバークから声が掛かる。

「ダイク君、言っちゃっていいんじゃないかしら。ここまで知られているのに、変に疑われたままじゃ気持ち悪いもの。話しちゃダメな訳じゃないんでしょ?」

森の妖精クイーンはそんなこと言ってなかったように思う。

「あの・・・、この腕輪を使ったんです。」

服を捲って腕輪をマティに見せる。

「この腕輪が何なんだい?」

当たり前にマティは腕輪をじっと見て、首を傾ける。

「この腕輪に魔力を流すと、魔獣木の近くにいるトレントまで連れて行ってもらえるんです。森の妖精を統括しているクイーンに貰いました。信じられないでしょうが、これを使ってバルテペスまで行ったんです。」

嘘偽りなく事実を述べた。

自分で言っていても、嘘くさい話だなと思う。

「ほぅ・・・。それは何回かこれまでに使っているかい?」

真剣な眼差しでマティは俺のことを見つめながら言う。

「何回か使ってるよね、ダイク兄!ほとんどは森の中に出るからどこだか分からないんだけど、バルテペスは街の中に着いたんだよね!」

マティは書類の束から羊皮紙を一枚取り出して、何かを確認しだした。

「ふ~ん、なるほどね。・・・そういうことか。」

独り言のように呟きながら、頷いている。

「あぁ、すまないね。王国にある魔獣木を定期的に確認させているんだけど、何本かが突然姿を消した事件があったんだ。ハハハ、どうやら君たちの仕業の様だね。」

納得がいった様で、羊皮紙に何かを書き込んでいく。

「信じられるんですか、こんな話・・・。」

「信じるも何も、事実なんだろ?君たちが密かに魔獣木を回収しているとすれば、すべてに納得できるんだ。・・・なんだ、そうだったのか。」

マティの体から力が抜けて、ソファに背中をつけて体を伸ばした。


それからは、妖精の話やガンドとの出会いを軽く話して終わることとなった。

「君たちは本当に大冒険をしているんだね。・・・あぁ、それから、王との面会日が決まったんだよ。四日後の昼過ぎにね。私もついて行くから、その日に冒険者ギルドへ来てくれる?」

俺が思っていたよりも早い日程だった。

「わかりました。四日後に冒険者ギルドに来ればいいんですね。・・・あの、親方とのことなんですけど、会ってみることにしたんです。」

返事をするとともに、意を決したルバークは親方のことを告げる。

「そうかい。なら、私が親方のところまで案内しよう。今日はいろいろと教えてくれて、ありがとう。行こうか、ルバーク。」

マティはそう言って立ち上がると、ルバークをエスコートする。

「ありがとうございます。じゃあ、行ってくるわね。」

緊張した面持ちでルバークはマティの手を取って、立ち上がる。

「いってらっしゃ~い!」

「落ち着いて話してくるんじゃぞ!」

ロゼとガンドが声をかけるので、俺は手を振るに留めた。

二人が出て行って話し合いは終わり、テーブルの上には茶器が残されている。

茶器を魔法で綺麗にしてアイテムボックスにしまうと、ロゼが俺の服を引っ張った。

「ダイク兄~、お腹もすいてきたし、市場に行こうよ!」

目をキラキラと輝かせながら、ロゼが言う。

隣でガンドもロゼと同じような顔で激しく頷いている。

「そうだね。市場にでも行こうか!」

座り心地のいいソファから立ち上がり、冒険者ギルドを後にする。


ロデオと馬車は宿の人が連れて帰ってくれたため、徒歩での移動だ。

市場の場所は分からないが、人の流れを頼りに大通りを歩いているとすぐに市場が見つかった。

サンテネラと同様に、大通りから一本脇道に入ったところにあった。

「わぁ~、これまでの市場よりも大きいね!」

「そうじゃの!さすが、王都の市場じゃのう!」

二人のテンションは話し合いの時と比べると、明らかに高い。

「あんまり離れないでくださいね。ロゼも少し落ち着いて。」

サンテネラの市場でのことを思い出したのか、俺の手を握ってロゼは歩き出す。

「ほら、ダイク兄!行くよ~!」

ロゼは反対側の手でガンドの服を摘まんで市場を歩く。

今までの市場とは違い、様々な種類の野菜や果物、道具や武器が雑多に並んでいる。

人通りも多く、人と物でひしめき合っていた。

「あっ、あれ食べよう!」

早速、ロゼのお眼鏡に適った屋台が現れる。

「美味そうじゃのう!ダイク、わしの分を建て替えとってくれんか?」

ガンドの財布・・・というか、金貨の沢山入った袋は俺のアイテムボックスに入っている。

「いいですよ、ガンドさん。ここは俺が出します。一つずつでいいですか?」

ロゼとガンドはこちらを向いて、激しく頷いている。

店主にお金を支払って、商品を三つ受け取る。

市場の空いているスペースに移動して、串に刺さった肉をそれぞれ口にする。

「ん~、美味しいね!」

「そうだな。少しクセがあるけど、なかなか美味しいな。」

スパイスの味なのか、ピリッと刺激があって少しだけ獣臭い串焼きだった。

ジビエだと思えば、肉質は柔らかくて美味しい部類だろう。

「なかなかイケるのう!次はあっちの屋台に行くぞい!」

食欲旺盛な二人がいると、食事を提供している屋台一つ一つに足止めをくらい、なかなか進まない。

ゆっくりと楽しみつつ、市場を満喫した。


王都の市場はスパイスや調味料が豊富で、念願だった胡椒を手に入れることができた。

塩と比べると百倍近い価格で売られていたが、金に物を言わせてかなりの量を買い揃えられた。

他にもお酢やワイン、様々なスパイスを買った。

この日だけで金貨百枚近く使ってしまったが、お財布にはまだまだ余裕がある。

買い食いついでに買い物をしただけなので、もしかしたらまだ見ぬ食材もあるかもしれない。

今度はゆっくりと買い物に来ようと心に誓う。


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