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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第四章 ダイク 八歳
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第119話 白磁の宿

「ここは・・・、なんですか!?・・・宿に案内してくれるんじゃなかったんですか?」

目の前には、どこかの貴族でも住んでいそうな白磁の豪邸が建っている。

「皆さんが王都にいる間、使っていただく宿はこちらになります。馬車は裏口に廻しますので、皆さんは正門からお入りください。正門と裏門には常時、兵士が立ちますので安心してお休みください。」

ロデオを牽いた兵士は、正門にいる兵士に一言二言告げる。

俺たちに敬礼のようなものをした後、馬車を伴って豪邸の塀の脇にある小道に入っていった。

呆気に取られていると、正面の門が兵士の手によって開かれていく。

「お待ちしておりました。皆様、どうぞ中にお入りください。」

正門の兵士も右手を後ろに回して、左手を腹の辺りで握りこぶしを作った。

この世界の・・・はたまた王都の敬礼なのか分からないが、他の街で兵士が敬礼するところを見かけたことは無い。

「ダイク兄~!早くおいでよ~!凄いよ~!」

門の前で考え込んでいると、三人はすでに門を通り過ぎていた。

追いかけるように門を潜ると、丁寧に手入れされたバスケットボールコートほどの広さの庭が目に飛び込んでくる。

門から豪邸へと続く石畳の道の途中には噴水があり、周りには幾何学模様に花壇が配置されていた。

大通りの街灯の明りが庭まで入り、水しぶきがキラキラと煌めいて幻想的な光景だった。


屋敷の前まで来ると大きな扉が勝手に開いて、執事の様な出で立ちの初老の男性が迎えてくれる。

「皆さま、お待ちしておりました。どうぞ、お入りください。お食事の用意もできております。」

門番と同じようなことを言い、扉の中へとエスコートしてくれる。

「わぁ、中も凄いんだねぇ~!」

一階はホールになっていて、左右の壁には四つの扉がついている。

正面には重厚な石造りの階段が構えている。

「皆さまにお休みいただくお部屋は、上の階にご用意してございます。下の階には食堂、使用人の部屋・・・。」

執事は一通りの屋敷の説明を済ませると、一歩引き下がって俺たちの後ろに控えた。

「部屋は沢山あるみたいだし、王都では一人部屋を使わせてもらうわね。親方のことも考えないといけないしね。一旦部屋を決めたら、用意してもらってるみたいだし食事にしましょうか。」

ルバークが階段を上りだすので、俺たちもつられるようについて行く。

「あ~、お腹すいたね!ダイク兄、ボクたちは一緒の部屋でいいよね?ガンドさんはどうする?」

「わしも一人で部屋を使わせてもらうかのう。こんなに部屋があるしのう。」

階段を上ると左右に道が分かれて、左右の壁には扉が四つずつ見えた。

「わたしはここの部屋にするわ。じゃ、食堂でね!」

少し元気が戻ったルバークは部屋の中へと消える。

「じゃあ、わしは二つ先の部屋とするぞい。二人はわしとルバークの間の部屋を使うとええじゃろう。」

ガンドもそう言い残して、階段から三つ目の扉に消えた。

「ほら、ダイク兄!開けるよ!」

ロゼが手招きをするので、急いで部屋の前まで行って扉を開けてくれるのを待つ。


中はベッドが二つとソファ、ローテーブルと至ってシンプルなものしかなかった。

ベッドに天蓋でもついているかと思ったがそんなことは無く、過ごしやすそうな部屋だ。

外観は豪華な屋敷なのに、中は過度な装飾品のない・・・というか物が少ない宿だった。

窓から出ればテラスがあるが、今は食堂に向かうことにする。

「ロゼ、食堂に行こうか。お腹空いてるんだろ?」

ベッドの柔らかさを確認しているロゼに声を掛ける。

「うん!お腹がペコペコだよ!早く行こう!」

ロゼと並んで部屋を出て、一階の食堂へと向かう。


食堂にはすでに食事の用意が整っており、テーブルの上には様々な料理が並んでいる。

「遅かったのう。ほれ、早う座るとええぞい。」

ガンドとルバークはすでに食卓に座って待っていた。

「すいません、お待たせしました。ロゼ、おいで。」

二人の向かいの席に座ると、料理人が奥の部屋から熱々のスープを運んできた。

「わぁ~、美味しそう!いただきま~す!」

俺たち四人では食べきれないほどの食事が並んでいる。

一つ一つに手の込んだ深い味わいがあり、お腹が苦しくなるまで食べてしまった。

「あの~、聞いてもいいですか?」

扉の前に控えている執事に声を掛ける。

「はい、何でございましょうか。」

執事は素早い動きで俺の側に来て、腰をかがめて顔を俺の側まで近づける。

「この料理なんですけれど、沢山作ってもらうことはできますか?かかる費用はこちらで持ちますので、お願いします!」

ローストポークがあまりにも美味しかったので、アイテムボックスに入れておきたい。

フォークを入れるだけで繊維がホロホロと解けて、パンとの相性もいい。

「畏まりました。ご用意させていただきます。」

執事はそう言うと、料理人のいる部屋へと入っていった。

「その料理、美味しかったものね。わたしもお願いしようと思ってたの。唐揚げみたいにパンに挟んでも美味しそうよね!」

どうやらルバークも同じことを思っていたみたいだ。

表情はすっかりと明るくなっており、お茶を美味しそうに飲んでいる。

「あのね・・・。わたし、親方と会ってみるわ。返せるものは金貨くらいしかないけれど、元気にしているところを見せてくるわ。」

「ルバークさんが決めたなら、それでいいと思います。」

「ボクもいいと思うよ!親方はきっと、ルバークさんのことを心配してると思うしね!」

「ありがとう、二人とも。ガンド君、わたしが話し合いに参加できないときは、二人のことをお願いね。」

「あぁ、任せておけ!わしがしっかりと二人のことを見ておるぞい!」

ルバークの決意を聞いて、この日は解散となって部屋へと戻ることとなった。


部屋で休んでいると、執事が訪ねてきて料理人に確認を取ってくれて、料理を用意してくれることとなった。

料理人も一緒について来ていたので、作ってもらう量の相談もした。

お金はいらないと言われるが、宿の付随する業務からは外れているので、しっかりと請求してもらうこととなった。

料理の入れ物も無いので、鍋を新調して入れてもらうこととなった。

もちろん鍋にかかる料金も請求に入れてもらう。

簡単な打ち合わせが終わると、ベッドに倒れるように寝転んだ。

「今日もいろんなことがあったな・・・。」

ぼそりと独り言のようにつぶやく。

「そうだね!でも、ボクは面白かったよ!」

すでにベッドで寝ていると思ったロゼからの返事に驚いてしまう。

「ごめん、話し声がうるさかった?」

「ううん、そんなことないよ!明日から何をしようか、考えてたんだ!」

ロゼは胸の辺りにクガネをのせて、撫でながら言った。

俺も真似をするように、シラクモを胸の辺りにのせて撫でる。

「何かしたいことでもあるのか?」

「うん!冒険者の依頼も受けたいし、市場にも行きたいね!あとは、王都を探検もしたいなぁ!」

「そうだな。何日いることになるのか、まだ分からないけど、ロゼのやりたいことはたぶんできるよ。明日、冒険者ギルドに話をしに行ったら、まずはガンドさんを連れて市場に行こうか。」

「え~、いいの!?楽しみだなぁ~!」

ロゼはそう言うと、だんだんと大人しくなり、寝息が聞こえてくる。

毛布を肩までかけ直して、俺も寝る準備に入る。

察したシラクモとクガネは、枕元まで移動して足を折りたたんで体を小さくした。

「おやすみ、シラクモ。クガネ。」

二匹を軽く撫でて、目を瞑る。

疲れが出たのか、意識はあっという間に無くなった。


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