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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第四章 ダイク 八歳
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第117話 王都ベルカイム

ゆったりと進んで、王都へと辿り着く頃には日が暮れ始めていた。

「ふぅー。やっと着いたわね・・・。遅くならないで助かったわ。みんな、お疲れ様。」

ルバークは御者台で体を伸ばしながら言う。

野盗紛いの男たちのせいで、予定よりだいぶ遅い到着となっていた。

「わぁ~、凄いねぇ!見て見て、川が流れてるよ!」

王都は堅牢な要塞の様で、サンテネラやフィリムとも違う雰囲気だった。

街の外壁の外側にはお堀が整備されており、門には跳ね橋が設置されている。

「威圧感が凄いですね・・・。外壁もサンテネラよりも高い・・・。」

高い街壁に圧倒されながらも、何とか声を絞り出す。

王都ベルカイムへと続く門には、すでに長蛇の列ができていた。

列の最後尾に並び着くと、馬車を出てガンドに声を掛ける。

「ガンドさん、そろそろ変わりますよ。中で休んでてください。」

「おぉ、すまんのう。助かるぞい。」

馬たちの手綱を受け取り、馬車と並ぶように列に並ぶ。

すると、前方に並ぶ人たちから変な目で見られることに気がついた。

何かを言われる訳では無いが、何となく気まずい感じだ。

周りの目を気にしないように、前だけを向いて耐える。


しばらく並んでいると、門の方から兵士が駆け付けてくるのが見える。

これまでに通ってきた街の門番たちとは違い、装備が統一されており、威圧感すらある。

「はぁ、はぁ。お、お前たち、そいつらは一体どうしたんだ?」

「王都へ来る途中の峠で襲われたんです。捕まえることができたので、連れてきました。」

「はぁ、そうか・・・。詳しい話を聞かせてもらいたい。私についてきなさい。」

「この馬車も一緒でいいですか?ルバークさん、聞いてましたよね?」

御者台に座る、ルバークに問いかける。

「ええ、聞いてたわ。わたしたちも一緒に行きますね。案内、お願いしますね。」

「あぁ、わかった。こっちだ。ついてきなさい。」

兵士は馬の手綱を半分引き受けて、俺たちを先導するように門へと向かう。

俺たちは門の脇にある兵士の詰所へと案内され、捕らえた男たちは馬ごと別の兵士に連行されていった。


「そこに並んで座ってくれ。」

詰所の中には剣や槍が無造作に壁に並べられ、部屋の中央にはイスとテーブルがあった。

指示された通り席に着くと、向かいの席に俺たちを連れてきた兵士が座った。

「お前たちはどこから来たんだ?王都へ来た理由も合わせて教えてくれ。」

口ぶりは軽いが、どこか尋問の様な雰囲気がある。

向かいの兵士はリーダー格なのか、部屋にいる兵士たちは気を付けの姿勢で壁際に並んでいる。

「わたしたちはサンテンネラの近くの集落から来たのよ。王都へは、この子たちが冒険者ギルドから招聘状を受け取ったの。ダイク君、見せてあげてもらえる?」

言われた通り、鞄からジョセフの用意した羊皮紙を兵士に渡す。

「どれどれ、見せてもらうぞ。」

兵士は紐を解き、羊皮紙を広げて中身を読む。

「確認をとるため、少し預かるぞ。お前、これを冒険者ギルドのマスターに見せて、本物か確認して来てくれ。」

後ろに控えていた兵士に渡すと、兵士は急いで詰所を出て行った。


向かいの兵士に峠であった出来事を説明していると、出て行った兵士が戻ってくる。

「そちらのお二方が鬼蜘蛛兄弟です。間違いありません!招聘状は本物でした!」

・・・鬼蜘蛛兄弟?

シラクモとクガネを連れているからかな?

というか、いつの間に二つ名のようなものがついたんだ・・・。

「そうか・・・。お前たちが噂の。すまんが、鬼蜘蛛を見せてもらえるか?いるんだろう?」

「シラクモ、出ておいで。」「クガネも出ておいで!」

それぞれに呼びかけると、シラクモは俺の頭の上に。

クガネはロゼの肩の上に跳び出てくる。

向かいの兵士は鬼蜘蛛たちを見ると、頭を下げて涙声でお礼を言った。

「ありがとう。君たちのお陰で・・・。すまん、この方々を冒険者ギルドへお連れしろ!」

顔をあげた兵士は目じりから涙を流し、拭いながら戻ってきた兵士に命令を下した。

「はっ!こちらへどうぞ!」

何故お礼を言われたのか、何故向かいの兵士が泣いたのかも分からないまま、俺たちは詰所を後にする。


「みなさんは馬車にお乗りください。冒険者ギルドまでの先導はわたしがします。」

俺たちが馬車に乗り込むと、兵士はロデオの手綱を握って前へと進む。

「何だったのかしら?よく分からないけれど、早く済んでよかったわね。それにしても、二人は鬼蜘蛛兄弟って呼ばれてるの?」

「ボクは初めて聞いたよ!ダイク兄は?」

「俺だって初めて聞きましたよ。街中ではシラクモたちをあまり見せないようにしてたのに・・・。」

「まぁ、いいじゃろ!二人が街に認められたってことじゃ。胸を張らんかい!」

そんな話をしていると、馬車は止まって兵士が馬車の扉を開けた。

「お待たせしました!こちらが冒険者ギルドです!こちらはお返しします!わたしは馬車を見てますので、みなさんどうぞ中にお入りください!」

兵士は羊皮紙を俺に返し、ロデオの元へと戻っていった。

「これって、そんなに凄いものなんですかね・・・。なんだか、嫌な予感がしますね。」

封をされていたため、中身は読んでいない。

今なら読めるが、読んだところで引き返せる状況でもない。

「諦めるんじゃな。ほれっ、行くぞい!」

ガンドは俺の背中を押す様に、馬車の外へと押し出してくる。

「わかりましたよ。ロゼも行くよ!」

ロゼに手を伸ばすと、繋いでギュッと握ってくれる。

「うん、行こうか~!」

馬車は冒険者ギルドの真ん前に停められており、周りにいた冒険者たちは何かと俺たちのことを見ていた。

「中に入りましょう。あんまりここにいては、みんなの邪魔になるわよ!」

ルバークはフードを被り、周りを気にすることなくギルドへと入っていく。

「ほらっ、ダイク兄も行くよ!」

ロゼに引っ張られながら、ガンドに背中を押されて冒険者ギルドに足を踏み入れた。


「おう、待っていたぞ!」

王都の冒険者ギルドの内部を見渡していると、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「えっ!?なんでいるの~?ここ、サンテネラじゃないよ!?」

入って右手にある掲示板の側に、タンクトップを着たリンデンが立っていた。

「あまりに暇だったからよ、王都の解体部屋の手伝いついでにマスターからの知らせを持ってきたんだ。お前たちが王都に来るぞっていう知らせをな。」

俺とロゼの頭をワシワシと乱暴に撫でながら教えてくれる。

「い、痛いですよ。そうだったんですね。でも、俺たちの方が先に着いちゃう可能性もありましたよね?俺たちの方が先に出た訳ですし。」

「まぁ、そん時は解体を手伝って、帰るだけよ!それにしても、盗賊崩れを捕まえてきたんだろ?お手柄じゃねぇか!」

「たまたま・・・よ、リンデン君。悪いんだけど、この街でまだ宿をとれてないの。いい所があったら教えてくれるかしら?」

ルバークはリンデンの手を俺たちの頭から剥がして言う。

「それなら心配する必要は無いぜ!ここのグランドマスターに会えば、案内してくれるはずだ。俺もついて行くからよ。こっちだぜ!」

リンデンはそう言って、カウンターの脇にある階段を上がっていく。

「ほれ、わしらも行くぞい!」

ガンドは顔を見合わせて首を傾げていた俺とルバークの背を押して、階段へと向かう。

「そうだよ!置いて行かれてるよ!ダイク兄、早く~!」

ロゼは俺の手を引っ張り、階段へと向かう。


階段を上がりきると、リンデンが突き当りの部屋の前で腕を組んで待っていた。


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