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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第四章 ダイク 八歳
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第111話 雪解けと鳥居

雪が解け、新年のお祝いが終わってから十日ほどが過ぎていた。

日差しが暖かくなり、森の木々や草花は早くも芽吹き始めている。

それなのに、まだ裏庭には木工職人が奏でる音色が響いていた。


「ガンドさーん、まだ出来ないの~?もういいじゃ~ん!」

雪解け後、すぐに魔大陸へと出掛けるものだと思っていたロゼが退屈そうにガンドに問いかける。

「もうちょっとじゃ!これを刻み込めば・・・、完成じゃ!!」

素人目にはすでにガンドが何をしているのかは分からなかったが、ついに馬車が完成した。

冬の間、俺の設計図を基に一通り作り終えると、ガンドは馬車を作り始めた。

雪解けの頃にはすでに馬車が仕上がっていたが、職人のこだわりが炸裂してここまで日程が延びていた。

「えっと・・・、立派過ぎませんか?これ。」

馬車を作ると言い出した時、俺の頭には幌馬車の様なイメージだった。

しかし、目の前にあるのは貴族でも乗ってそうな立派な馬車だ。

御者台の側にはルバーク特製の魔導ランタンが吊るされており、夜間でも辺りを明るく照らしてくれる。

「そうじゃな。・・・少し頑張りすぎたかもしれないのう!」

褒められたと勘違いしたガンドは、頭をかいて照れくさそうにしている。

「ボク、ルバークさん呼んでくるね!」

そんなガンドを他所に、ロゼはバタバタと家の中へと戻っていった。


「へぇ~、凄いじゃない!ガンド君、二人もお疲れ様。これで旅も快適に過ごせそうね!」

ルバークが出てくると、ガンドによる馬車の説明が行われた。

荷車を改造した馬車なので、大きさはほとんど変わらない。

外面は細かな模様が彫り込まれ、木だけでできているとは思えないほど豪華な見た目をしている。

中は向かい合う様に座席が置かれて、後方には荷物を置くスペースまである。

「この座席を倒せばベッドになるんじゃ!」

ガンドが座席の仕掛けを動かすと、座席が倒れてベッドのようになった。

「はぇ~、凄いねぇ~!もっと、他には何かないの?」

「ほ、他に!?よしっ、次はこれを見るんじゃ!」

車輪にはシラクモの作ったゴムが巻かれ、馬車の下部にはサスペンションの様なバネが取り付けられていた。

「はい!もういいわ!」

ガンドの説明は長く、ルバークが手を叩いていったん終わらせる。

「これはわたしからのプレゼントよ。開けてみてちょうだい!」

マジックバックから大きな布製の袋を取り出して、それぞれに渡してくる。

「なんですか、これ?」

柔らかく、重みもそこまでない。

「フフフ、いいから開けてみてね!」

袋を開けてみると、中には服一式と新しいローブ、靴が入っていた。

「わぁ~、新しい服だね!これ、どうしたの?」

ロゼが新しい服を自身に当てながらルバークに聞く。

「魔道具の研究も一段落したから、みんなの服を作ったのよ!もちろん私の分もね!」

退魔の首飾りの研究は行き詰っていたが、空いた時間を使ってみんなの分の服を作ってくれたみたいだ。

「ありがとうございます!大切に着ますね!」

「ありがとう、ルバークさん!」

「わしまでいいのか?すまんのう、ありがたく着させてもらうとするかのう!」

ルバークは「いいのよ。」と満面の笑みを浮かべて家へと帰っていった。

「よしっ、出発は明日じゃな!その前に鳥居を設置せにゃならんな!」

冬の初めに作った鳥居を設置しに行くこととなった。


森を歩くが、すでに雪は無くなり地面に泥濘もない。

ルバークはもうマザーに報告に行ったみたいで、家に残っている。

ガンドを連れていくことも了承をもらっていた。

「マザー、元気かな?ねぇ、ダイク兄!」

「そうだな、元気なんじゃないのかな?ルバークさんも特に何も言ってなかっただろ?」

「そうじゃのう。マザーか・・・。楽しみじゃのう。」

初めてマザーに会えるガンドは好奇心で目を輝かせていた。

しばらく歩くと、マザーの住まう大木までたどり着いた。

「ほら、ガンドさん。行きますよ!」

木の大きさに驚きながら、ガンドは俺たちに続いて大木を登る。

魔法で作り出した階段は何の問題もなく登ることができた。


「お久しぶりです、マザー。」

大木を登りきると、大きな鬼蜘蛛の姿が見えてくる。

幹の上に鎮座し、以前と変わらない神々しさを放っている。

「おぉ、お初にお目にかかります。ガンドと申します。ルバークさんたちには大変にお世話になっております。森に迎え入れていただき、感謝申し上げる。」

ガンドはマザーの前で膝をついて、丁寧な口調で言葉を紡いだ。


(久しぶりだな、二人とも。ガンドはいつもの口調で構わないぞ。)


「へへぇ~、ありがとうございます!」

土下座の様な格好でガンドはそう言った。

「あのね、マザー。下に鳥居を立てたいんだ!いいかな?」


(好きにするといい。)


「そっか、ありがとう!」

「マザー、ルバークさんから聞いているとは思いますけど、近々俺たちは魔大陸に行ってきます。」


(あぁ、聞いている。森のことは気にすることは無い。気を付けて行きなさい。)


マザーの声が優しく頭の中で響く。

「はい、行ってきますね!じゃあ、俺たちは下で作業してますね!」

そう言って、手を振りマザーとお別れをする。


大木を下りって昔、俺たちが暮らしていた根の隙間の前に立つ。

「ここに鳥居を立てようと思うんだ。ロゼ、いいかな?」

「いいよ!ボクも絶対ここだって思ってたんだ!」

「決定じゃな!わしは何か手伝うことはあるか?」

「いえ、魔法で建てようと思います。ロゼと離れたところで見ててください。傾いてたら教えてもらえますか?」

ロゼとガンドはコクリと頷いて、正面と側面に分かれて傾きを確認してくれるようだ。

大木から一メートルほどの場所に、鳥居の足を埋めるための穴を掘り、沈み込むことが無いように穴の底を固く押し固める。

アイテムボックスから鳥居を取り出して、穴に足を埋めていく。

「傾きはどうですか?」

二人に確認をとるが、問題は無さそうだ。

掘った土を穴に戻して鳥居の設置が完了した。

鳥居の表面にはシラクモの接着剤をたっぷりと塗っており、水を弾くようにしておいた。

色は塗っていないが、逆に良かったのかもしれない。

周りの景色と良くなじみ、違和感は特に感じない。

「わぁ~、いいね、ダイク兄!」

「そうだな、ロゼ。シラクモもどうだ?」

頭の上から跳び下りて、鳥居を確認するように上を見上げながら両前足を高くあげた。

「思った以上に良いのう。マザーも喜んでくれるじゃろう。立派なもんじゃ。」

ガンドも誇らしげな表情で鳥居を見つめていた。


明日から長いこと森を離れることになる。

鳥居に向かって旅の無事と、森に何の問題も起こらないことを手を合わせて願った。


家に戻ると、出発するための準備が始まる。

俺とロゼは道中に食べる料理を。

ルバークとガンドは旅に持っていくものをマジックバックに詰め込んだ。

鬼蜘蛛たちが作る布や糸も冬の間に大量に生産されていた。

馬車に詰め込める量では無いので、俺のアイテムボックスに全てを入れることとなった。

バタバタと準備を終わらせて、夕食を詰め込んで早めの就寝となった。


すでに向かうルートは決まっており、気分が高揚してなかなか寝付けない。

ロゼも寝付けないのか、何度も寝返りを打っている。


ウトウトと覚醒を繰り返しながら、夜が更けていった。


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