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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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閑話 妖精の冒険

更新が遅くなりました。

インフルに罹ってしまい、長いこと臥せってました。


この話でこの章は終わりです。

明後日から新たな章を始めたいと思います。

「はいはい、わかったわよ!もういいでしょ。わたしのことは放っておいてよ!」

ノームはそっぽを向いて、近くのベッドに腰掛けた。

ダイクたちと強制的に別れさせられた後、妖精の森の奥隅にある木の洞に作られた小さな部屋にノームは閉じ込められていた。

洞の入り口には格子状に固い枝が並び、まるで牢屋のようである。

「ちゃんと反省するのよ。いいね、ノーム。」

「人間とは関わっちゃダメだよ!何をされるかわかったもんじゃないんだからね!」

「この森で大人しく暮らせばいいのに・・・。」

年嵩の妖精たちがたびたび洞を訪れ、ノームに小言を口にして去っていく。

今日だけで何人の妖精が洞へやってきただろうか。

ノームはぐったりと疲れ果て、妖精サイズのベッドに横たわる。

「も~、本当にうるさい妖精共ね!こんなところに閉じ込めるなんて、・・・許せないわ!何が森の妖精よ!森を守りもしないで!」

眉間に皺を寄せて文句をブツブツと呟きながら、日々が過ぎていく。


季節が冬を迎えると、妖精の森にも寒気が訪れる。

クイーンの結界のお陰で雪が積もることは無いが、風はひんやりと冷たい。

妖精たちはそれぞれの家に籠り、冬が過ぎ去るのをじっと待つ。

ノームの元を訪ねてくる妖精もいなくなり、洞の入り口からは誰の姿も見えなくなった。


「ふふん、寒くなったから、誰もいないわね!トレントちゃん、出ておいで!」

ノームが魔力を込めると、洞の中に小さなトレントが現れる。

「トレントちゃん、あの邪魔な枝を吸収しちゃっていいわよ!」

指示を出すと、トレントはのそりと歩いて格子状の枝にしがみ付く。

すると、枝がバキバキと音を立ててゆっくりとトレントの体に飲み込まれていく。

大きな音が妖精の森に響くが、誰も確認をしにくる様子は無い。

「ありがとう、わたしは行くわね!この部屋はトレントちゃんにあげるわ!好きに使ってちょうだい!」

そう言い残して、小さな妖精は羽を広げて牢屋を飛び出した。

トレントの道を使いたいところだが、再びクイーンに察知されてしまう。

木々を通してノームが逃げ出したことは知られているんだろうが、掴まらなければ問題は無い。

一直線に妖精の森の結界の出口を目指してノームは羽ばたいた。


ノームは妖精の森が好きではなかった。

生まれた頃から森は何一つ姿を変えない、つまらないものにしか見えない。

安穏と変化のない生活を送る森の妖精たちのことも苦手だった。

木を通じて人間たちの営みを見るのが、唯一の楽しみだったのだ。

それはいつしか森を出て人間たちの元で暮らしたいという願望に変わった。

トレントの道を使って人間たちを間近で観察するようになると、次第に妖精の森には帰らなくなった。

ダイクたちに出会い、ノームにとっては楽しい日々だった。

まさか、クイーンがトレントの道に干渉できることをノームは知らなかった。

あっさりと捕まり、森の奥に閉じ込められていた。


「今、行くわ!ダイク、待ってなさいよ!」

必死に羽を動かして、木々を避けながらある場所へと向かう。

妖精の森へと出入りする方法はもう一つあった。

クイーンはこの森を“隔絶された世界”と言っていたが、実際は違う。

ダイクたちにここの存在を隠すために嘘をついたのだ。

クイーンの結界と幻惑で妖精以外に見つけることができない秘密の通り道が。

誰も訪れることのできない妖精の森に警備の必要もなく、ノームはあっさりと結界を抜け出ることができた。


結界は、とある森の古い祠の裏手へと繋がっている。

「ようやく妖精の森を出られたわ!ここからダイクたちの住む森まではかなりの距離があるわね・・・。トレントの道も使えないし・・・。」

ノームは木の枝に降り立ち、木に触れる。

妖精の森ではクイーンの阻害によって、木と繋がることができなかった。

「・・・ダイクたちは無事に帰れたようね!待って、あのちんちくりんは誰なのかしら!?」

久しぶりにダイクたちの姿を見ると、ノームの顔に優し気な笑みが戻ってくる。

「さて、どうしようかしら?」

再び羽を広げ、森の出口を目指す。


結界の外は雪が積もり、ノームの体が細かく震える。

「う~、寒いわね・・・。」

肌を擦りながら、寒さを我慢してダイクたちの家を目指して飛ぶ。


広大な森を抜けると、小さな村に辿り着いた。

家々の扉は開け放たれており、中には誰もいない。

「誰もいないのね!ちょうどいいわ!少し休ませてもらいましょう!」

一番近くの家に入り、扉を閉める。

調理場の窯には、まだほんのりと燻る炭が残っている。

近くにある薪をくべると、ゆっくりと火が燃え広がり体に温度が戻ってくる。

「はぁ~、助かったわ~!それにしても、ここの村人はどこにいったのかしら!?」

周辺に人の気配はなかった。

炭が残っていたことを考えれば、一日以上は家を空けていないんだろう。

「まぁ、考えるだけ無駄よね!どこかに布でもないかしら?」

体が温まると、部屋の中を漁りだす。


「こんなものよね!まぁまぁの出来だわ!」

戸棚の中から端切れを見つけ、体に巻き付け肩で結んだだけだがノームはどこか得意げだった。

羽の部分はどうしても穴を空けなければならないが、大きめの端切れでダイクたちが着ているようなローブも作った。

寒さ対策はできたが、どうしても温かい家から出るのを躊躇った。

扉を開けてみたものの、外は吹雪いていたのだ。

「この雪じゃ移動は厳しいわね・・・。しょうがないわ!今日はこの家に泊ることにしましょう!」

家主のいない家を我が物顔で使って、一夜を過ごした。


「ん~、あれっ!?ダイクのような気配があるわね!もしかして、迎えに来てくれたのかしら?」

人間用のベッドで堂々と真ん中に寝ていたノームは、気配を感じて目を覚ました。

扉を開けようとするが、ビクともせず開けることができない。

「う゛ぅ~ん、なんなのよ!なんで開かないの?」

扉の外には三十センチほどの雪が降り積もり、非力な妖精では開けることができなかった。

両手いっぱいに魔力を集め、扉に向けて放つ。

扉は大きな音を立てて、金具を引きちぎり大きく飛んでいった。

「ありゃ!?やりすぎたかしら?まぁ、いいわ!」

破壊した扉をそのままに、気配のする方向へと勢いよく飛ぶ。


「・・・ここら辺よね?」

気配の感じた場所までたどり着くが、辺りは一面に雪が積もっており、誰かが歩いたような足跡はない。

フラフラと周辺を飛んでみるものの、雪以外に何もない。

「おかしいわね・・・。気配は間違いなくあるんだけど・・・。」

ノームは目を閉じて気配を探るが、間違いなくこの場所のようだ。

「まさか・・・、雪に埋もれてるんじゃないでしょうね!?」

風魔法を使って、辺りの雪を慎重に押しやっていく。

先ほどの失敗を踏まえて、慎重に、急ぎつつも丁寧に雪をどかしていく。

ある程度、雪を除けるとノームが感じた気配の主が現れた。


卵のような結界に包まれた、見たことの無い服を着た少女だった。


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