第11話 ルバーク
美味しい食事に舌鼓を打ちながら、ルバークに俺たちのことを話した。
両親と孤児院に捨てられたことや、この森に来てからの生活のことを。
魔法のことは伝えなかったが、ルバークは涙を目に溜めて静かに聞いてくれた。
突然立ち上がって俺たちの後ろに回ると、頭を抱き寄せ撫でてくれた。
「そう、二人とも辛かったのねぇ・・・まだ小さいのに・・・。」
「ダイク兄といっしょだったからつらくなかったよ!」
ロゼがそういうと、ルバークの涙腺は決壊した。
「「ごちそうさまでした!」」
「フフフ、それも挨拶?」
涙を拭いながら笑いかけてくる。
「そうです。食べ終わったときの。ルバークさん、とても美味しかったです!」
「おいしかったです!」
食事でロゼの警戒心か人見知りかが緩まったようだ。
「ルバークさんのことを教えてもらえますか?」
「そうねぇ。どこから話したらのいいか・・・まずはこれを見てくれる?」
ヘアバンドを外しながら言う。
右目の上部の生え際あたりから、五センチ程の角が頭形に沿うように生えていた。
「これが生えてきちゃってね・・・街にいられなくなったの。」
「だいじょうぶ?・・・いたいの?」
ルバークの角を触りながらロゼが聞く。
「痛くないから大丈夫よ。ロゼ君はいい子ねぇ。でね・・・」
ロゼを膝の上に抱えて、頭を撫でながら詳細を教えてくれた。
始まりは魔熱病というものに罹ったことから始まるらしい。
この病は生死を彷徨うほどの高熱が襲ってくる病気らしい。
罹患したほとんどが高熱の末に亡くなる、恐ろしい病なのだと。
ルバーク自身も朦朧とする意識の中、死を覚悟したらしい。
しかし、数日で熱は下がり、今度は頭が割れるような痛みに襲われ、頭に角が生えていたとのことだった。
「治癒院で世話になりながら、病を克服したんだけどね・・・この角でしょ・・・。魔族なんじゃないかって噂になってしまって。治癒院を出るころには街中に噂が広まっていてね・・・。家に帰ってマジックバックに物を詰め込んで、逃げるように街を出たのよ。」
そこからはいくつかの街を巡っていたみたいだが、行く先々で噂が広まっていて、この森に逃げ込んだのだとルバークは語った。
「角が生えたぐらいで・・・ひどいですね・・・。」
「ボクはこわくないよ!」
俺もルバークの近くに歩み寄り、ロゼとルバークを抱きしめた。
「ありがとう、二人とも・・・まぁ、初めのころは悲しかったわねぇ。角が生えちゃったのは確かだけど、わたし自身は何も変わらないのにね・・・でもね、もう二十年近くこの森に住んでるし、たまに街に下りて買い物したりできてるしね。蜘蛛たちもいるし、楽しく暮らしてるよ。」
「二十年近くって・・・どういうことですか?」
「あぁ、わたしにはね、ドワーフの血が混ざってるのよ。もう三十六歳になるわ。」
「エ~、そうなの?ぜんぜん、わからなかったなぁ!」とロゼは驚きながら言う。
少し年上くらいかと思ったが、前世の俺よりも年上だったのか・・・。
それにしてもドワーフかぁ。異世界だなぁ。
「次に、この森について話をしましょうか。この森はね、鬼蜘蛛の森といって・・・」
ルバークが語りだした。
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