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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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閑話 雪の降り積もった日(後編)

裏庭にカンカンとノミを槌で叩く音が響いている。

結界の上空は吹雪いており、周囲の景色がぼやけている。


翌日、朝食を摂り終えるとすぐに裏庭で木工作業だ。

今日からは本格的に丸太を加工して、設計図を基にものづくりが始まる。

大きな丸太を魔法で四等分に切り分けると、ガンドがインクで印をつけてくれる。

「まずは刻み方を教えるぞい!こいつを使って少しずつ材料を刻むんじゃ!」

ノミと槌を手に、ガンドは実演しながら教えてくれる。

「木目に沿う様にしてじゃな・・・。」

慣れた手つきで、簡単に木が刻まれていく。

ガンドに教わった通りにやってみるが、実際は驚くほどに難しい。

電動工具がある訳では無いので、木に穴を一つ開けるだけでも大変な作業だった。

魔法を使えばすぐにでも出来るんだろうが、やり方は知っておいて損は無いはずだ。

ガンドの教えに従って、ゆっくりと丁寧に木材を刻んでいく。

一通り、教え終わるとガンドは俺たちとは別の木の加工を始める。

たまに様子を見に来るが、問題がないのか何も言わなかった。


「できたよ、ガンドさん!」

ロゼがガンドを呼ぶ頃、俺も刻み終えることができた。

「俺も終わりました!確認お願いします!」

俺とロゼの刻んだ穴を確認すると、ガンドは二ッと歯を見せて笑った。

「初めてにしては上出来じゃ!やはり、二人はわしの弟子になるべきじゃよ!筋がいい!」

「いやぁ、ボクには冒険者があるからね!ね、ダイク兄!」

褒められたことに照れながらも、冒険者は譲れないようだ。

「ハハハ、そうだな。」

「しょうがないのう。気が変わったらいつでも歓迎するぞい!」

冗談を交えながらも作業は続く。


昼食を摂った後も木材を刻み続け、夕方に差し掛かる頃に作業は終わった。

「ふむ、これで刻む作業は終わりじゃな!」

刻み終わりはしたものの、俺の書いた設計図とは大きく違う点があった。

「ガンドさん、ここからどうやって円柱に仕上げるんですか?」

俺たちが刻んでいた木材は、丸太を十字に四等分にしただけのものだった。

練習で刻んでいただけなんだろうか。

「言ったじゃろ。刻む作業はと。ロゼと少し離れて見ておれ!」

俺たちが離れたのを確認すると、ガンドは手を擦り合わせてから刻んだ木材を触った。

木材は少し浮いて、回転しながら余計な部分が削られていく。

「わぁ~、すごいね!ダイク兄、見てよ!」

俺の服の裾を引っ張って、興奮しながらロゼは言った。

「見てるよ。邪魔しないように静かに見てようね。」

半端な形をしていた木材が、どんどんと円柱状に形を変えていく。

何の魔法なのかは見ているだけでは分からなかった。


「これでどうじゃ?」

四つの木材はきれいな円柱に仕上がっている。

触ってみると、滑らかな表面でつやまで浮かんでいた。

「す、すごいですよ、ガンドさん!そんな魔法があるんですね。何の魔法なんですか?」

「風魔法の応用じゃ。ダイクも練習すれば出来るようになるじゃろう。魔法の話は後にして、仮組をするぞい!」

空が夕焼けに染まり始めているのか、裏庭は少し薄暗くなってきた。

「「はいっ!」」

ガンドの指示で、俺とロゼが動いて、刻んだ木材を組んでいく。

少し窮屈ところもあったが、ガンドが槌で叩くと問題なく組みあがった。

「よしっ、これで完成じゃ!細かい調整は必要じゃがな!」

貫に楔を打ち込むと設計図通りに、鳥居が組みあがった。

「わぁ~、すごいねぇ~!でも、これって何なの?」

四本の円柱を組み合わせたシンプルな作りの鳥居を見て、ロゼが問いかける。

「これは鳥居って言ってね、神聖な場所にあったりするんだ。ずっと前からマザーの住む木の前に建てたいと思ってたんだ。俺たちもお世話になった大木だし、神聖な感じがするだろ?」

「へぇ~、よくわかんないけど、ボクはいいと思うよ!ガンドさんはどう思う?」

「わしもいいと思うぞい!初めて作った気持ちのこもった鳥居じゃからな。マザーも喜んでくれるじゃろう。」

ガンドはまだマザーと会った事は無い。

話しだけは聞かせているが、マザーが許せば紹介してもいいかもしれない。

まぁ、イレギュラーな形ではあったが、ガンドが森にいることを許してくれている時点で問題なく会えることだろう。


「ボク、ルバークさん呼んでくるね!暗くなる前に見せてあげないと!」

ロゼはそう言って、勢いよく家の中へと入っていった。

「忙しないのう。ダイク、一度立ててみるか?」

鳥居は組んだだけなのでまだ横たわっている。

「いいですね!俺が魔法で立たせますよ。ガンドさんは離れててください。」

魔法で鳥居を起こして、二本の足を地面に軽く埋めて固定する。

「ほぉ~、立つと迫力があるのう。簡単な組み合わせじゃが、神聖な感じがするのう。」

「そうですね。本当なら色も塗りたいんですけど、このままでも十分かもしれませんね。」

「このままでもよいじゃろう。十分に立派に見えるぞい。」

二メートルほどの鳥居がグラつくことなく、裏庭に自力で立っていた。


「あら、凄いじゃない!これを作っていたのね!」

ロゼに連れられたルバークが、俺たちの後ろから声をあげた。

「ねっ、すごいでしょ!あれっ、ダイク兄、立たせちゃったの?」

さっきまで横たわっていた鳥居が立っていることに驚いてみせる。

「せっかくだし立ててみたんだ。ルバークさんに見せるのだって、こっちの方がいいだろ?」

「うん、そうだね!それにしても、大きいねぇ~!」

鳥居としては小さい部類だが、ロゼからすれば大きく見えるみたいだ。

「そうね。これをマザーのところに置くんでしょ?雪が融けるのが楽しみね!」

ルバークはそう言って、俺たちの頭を撫でてくれた。


裏庭の片づけを済ませると、すぐに夕食の準備に取り掛かる。

「わたしも手伝うわよ、ダイク君。」

スープと煮込みの温めを任せて、俺はサーモンを捌いて塩焼きにする。

ロゼが唐揚げを食べたいと言い出すので、テーブルには唐揚げもあがった。

この日の夕食はいつもより少し豪華な食事となった。

四人と二匹で楽しく美味しくいただいた。


鳥居には防水処理を施してないので、まだ完成とは言えない。

だが、形になった達成感はあった。

雪解けまでに作りたいものは山ほどある。

ガンドがいるうちに技術を教わる必要もある。


これから毎日がバタバタと、充実した冬を過ごすことになる。


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