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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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閑話 雪の降り積もった日(前編)

今年の冬も雪が沢山降り、表の玄関は使えなくなっていた。

一階はすでに雪で埋もれてしまい、常に魔道具の明りが灯っている。

裏庭には結界が張ってあるために雪は積もらないが、風は冷たい。


俺とロゼ、ガンドの三人で裏庭で作業を始めようというところだ。

「今日はこの設計図の物を作るぞい。ダイク、道具と木を一本出してくれるか?」

俺が一番初めに書いた設計図を指差して、ガンドが言った。

「この木でいいですか?」

アイテムボックスから一本の木を取り出して、裏庭に寝かせるように静かに置く。

かなりの長さがあり、まだ枝や樹皮の処理すらしていない木だ。

「ああ、これでいいじゃろ。この道具を使って、まずは余計な枝を取っ払うんじゃ!」

鉈のような刃物を振り下ろし、ガンドは枝を落としていく。

「ボクもやるよ!ダイク兄、剣ちょうだい!」

ロゼに適当な剣を与えると、嬉々として剣を振って枝落としを始める。

魔法を使えばあっという間に落とし終わりそうだが、初めは黙ってガンドの作業を見守った。

「こんなところでええじゃろう。次は樹皮を剥がすぞい!ダイク、そっちを持ってくれ!」

湾曲した刃のついた大きな道具を木を挟んで二人で抱える。

「よいか?向こう側に一気に行くぞい!」

刃を樹皮にあてて、二人で滑らせると綺麗に皮が剥けていく。

「わぁ~、すごいね~!ボクにもやらせて!」

木を回しながら樹皮を剥いて、きれいな丸太が姿を見せた。


「樹皮と落とした枝はしっかりと乾かせば薪の火付けとして使えるぞい。・・・この家には必要無さそうじゃがな。」

剥がした樹皮と枝は裏庭の隅で日干しすることにした。

ガンドの言う通り、この家にいれば使い道は無いが、旅先では役に立つはずだ。

「次の作業に入りましょうか?次は何をすればいいですか?」

ガンドはの鋸を取り出して、木に所々軽く傷をつけていく。

「この傷の位置で鋸を挽いていくぞい。大変な作業じゃが、気合を入れて挽くんじゃぞ!」

俺とロゼに鋸を持たせて、俺は根っこに近い部分を。

ロゼには木の中央部分を切り落とさせるようだ。

道具の使い方を軽く教わると、ガンドは別の場所で鋸を挽いた。


「はぁ~、大変な作業だったね!」

丸太を鋸で切断する作業は想像以上に過酷だった。

俺とロゼは切り落とすと疲れ果て、その場に横になった。

「大変だったじゃろう!?お~、よく切れておるわい!初めてにしては上出来じゃぞ!」

俺たちが挽いた切り口を確認して回り、褒めてくれる。

「ガンドさん、魔法を使っちゃ・・・ダメですか?」

職人としてのプライドを傷つけるかもしれないが、ダメ元で聞いてみる。

さすがに、この作業を続ける自信はなかった。

「別にいいぞ!使えるものはなんでも使わにゃぁのう。で、どんな風に使うつもりじゃ?」

ガンドの許しが出たので、残っている傷ついた箇所で試して見せることにする。

「いきますよ。」

手の先にチェンソーが回るようなイメージで風を高速で回転させていく。

それを木に当てると、木屑をまき散らしながらあっさりと切れていく。

「ほぅ、便利じゃのう!これから木を切断するときはダイクに任せるかのう。次はこっちを頼むぞい!」


鋸挽きに長い時間を要し、丸太を切るだけで昼になってしまった。

「二人とも、大丈夫!?なんだか疲れた顔をしてるわよ?」

昼食のために家に戻ると、ルバークが食事を用意してくれていた。

「大丈夫じゃないかもー!木を切るのってすごく大変なんだよー!」

ロゼの言う通りだった。

走り回るのとは違って、今まで使ってこなかった筋肉たちが悲鳴を上げている。

慣れの部分もあるのかもしれないが、体はクタクタだ。

「食事の用意、ありがとうございます。ちょっと、作る気にはなれなかったので助かります。」

「いいのよ。体も冷えているでしょうし、沢山食べてね!」

パンとスープという質素な食事だが、温かいスープが体に染み渡る。

「ん~、絶品じゃのう。冷えた体にはスープが一番じゃな。」

ガンドは美味しそうに沢山スープとパンを食べていた。

「本当ですね。こういう寒い日には温かい食事に温かい風呂。今日は少し熱めの風呂にしましょうね。」

「いいわね!お風呂に入るまで頑張れそうだわ!」

そう言って、ルバークは立ち上がって残っているお茶を飲み干して、階段を上がっていった。

「わしらも続きを頑張るかのう!二人はまだやれるのか?」

ガンドは挑発的な目線を俺たちに向ける。

「もちろんやれますよ!」

「ボクだって!ガンドさんには負けないんだからね!!」

上手く乗せられて、裏庭での作業が再開される。


この日の午後も、樹皮剥がしと適当な長さに木を切る作業に費やされた。

作業を続けるにつれて、体が慣れたのか午前程の疲労感は無くなり、かなりの本数の木を処理することができた。

裏庭は木片でいっぱいになってしまったが、魔法でごみを一か所に集めて浄化を唱えれば元通りの裏庭へと戻った。

「よしっ!今日の作業はここまでじゃ!思った以上に二人は筋がいいのう!」

庭の隅にまとめられた丸太を叩きながら、褒められた。

「明日からは設計図に従って木を刻んでいくぞい!」

「「はいっ!」」

すっかりと親方と弟子のような関係性が出来上がっていた。


食事を済ませると、ガンドは部屋に戻っていく。

毎日風呂を勧めるが、魔法で体を綺麗にするだけで十分らしい。

「さぁ、わたしたちはお風呂に行きましょうか!」

食事の片づけが終わると、ルバークは早速風呂に入りたいようだ。

「シラクモ、クガネ、お風呂に行くよ。」

テーブルの上でじゃれ合っている二匹に声を掛けると、それぞれの定位置に跳び乗ってくる。

裏庭へと出ると、ひんやりとした空気が肌に刺さる。

「うぅ~、さすがに寒いわね。今日はわたしがお湯を入れましょうか?疲れているでしょ?」

気を使ってルバークが申し出るが、丁寧に断る。

寒いからこそ、湯の温度には自分好みの熱めを張りたいのだ。

「すぐに入れるので、ロゼに体を綺麗にしてもらっててください。」

いつもよりほんの少しだけ熱めの湯を張り、ロゼに体を綺麗にしてもらう。


「はぁ~、温まりますねぇ~。」

冷えた指先まで湯が染み渡り、体を癒していく。

「ふぁ~、気持ちいいねぇ~!ダイク兄。」

ロゼも俺に寄りかかりながら、熱めのお湯を満喫している。

「本当に気持ちいいわね~。一人だと魔法で済ませちゃうけど、やっぱりお湯に浸かると違うわね~。」

ルバークはいつものように縁に頭をのせて、体をお湯に投げ出した。

シラクモとクガネも気持ちよさそうに湯に浮かんでいる。

結界の上空では吹雪いているのが見える。

「今日は何の作業をしていたのかしら?教えてくれる?」

ルバークがそう言うと、ロゼが嬉々として話始める。

あれが凄かった、これが大変だったとロゼなりの説明を一生懸命に伝えている。

分かりずらいところもあるが、ルバークは丁寧に相槌を打ちながら聞いている。

「そう、頑張ったのね。明日からも続けられそうなの?」

「うん、頑張れるよ!ねぇ?ダイク兄!」

「そうだね。大変でしたけど、面白かったですよ。ルバークさんも一日くらいやってみませんか?」

「フフフ、そうね。どこかでタイミングが合えば、参加してみましょうかしら。」

この言い方は参加する気は無いんだろうと分かってしまった。

ロゼは本気にしているみたいだから言わないが、ルバークも少し気まずそうに笑っている。

「そろそろ上がろうかしら。二人はゆっくりと浸かってて。」

ルバークが立ち上がると、体中から白い蒸気が沸きあがった。

体にタオルを巻いて、素早く家の中へと戻っていく。

俺とロゼはもう少しだけ湯にとどまり、疲れを癒す。


大変な一日だったが、充実した一日となった。


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