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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第109話 滝までの道 完成

「これのお陰じゃろうか?」

ガンドは首にかけたネックレスを取り出して言った。

小さな木片に穴があけられ、首にかけられるように紐が通してある。

木片の中央には魔石のようなものが煌めいていた。

「ちょっと、よく見せてもらえますか?」

ガンドに近づいて、手に取り鑑定をしてみると“退魔の首飾り”という品物だった。

「もう、長いこと着けておるからボロボロじゃろ?だが、これを着けておると、風邪をひかないとわしの街では言われておるんじゃ。」

説明には、病気や魔獣を退ける効果のあるまじないを込めた逸品と書かれている。

「これってガンドさんの街まで行けば売ってるものですか?」

これがあれば、魔熱病に罹ることが無くなるかもしれない。

ガンドが魔熱病に耐性がある可能性を否定はできないが・・・。

「売っておるのかのう?わしの街のドワーフは生まれた時に貰えるんじゃ。誰が作っておるのかも、わしは聞いたことが無いのう。」

「そうですか・・・。」

「ダイク兄、もう戻ろうよ!別に変ったところも無いみたいだし!」

ガンドとの話に夢中になって、魔獣木の確認を怠ってしまったが、しっかりとロゼが見ていてくれたみたいだ。

「そうだな。ありがとう、ロゼ。ガンドさん、この話はルバークさんを含めてもう一度させてください。」

「そうじゃのう。今はこれから作るものに集中すべきじゃな。」

宙に浮いた状態の魔獣木を吊り上げているロープも、冬の間に朽ちて落ちることは無いだろう。

土も汚染されておらず、空気が以前よりきれいに感じる。

最低限の確認を済ませると、アルたちも元へと戻った。


「なんの問題もなかっただろ?」

滝の側で休憩していたビクターが聞いてくる。

「はい、大丈夫でした。これからも確認をお願いしますね!」

「それで、ダイク。おいらたちは帰り道に何をすればいい?周囲の警戒をしておくか?」

「そうですね・・・。俺の後ろからついて来て、おかしなところがあれば教えてもらえますか?もう少し道幅を広くとか、頑丈さが足りないとか。ロゼとクガネはさっきと同じく左右に分かれて警戒ね。ガンドさんは道の先を警戒してください。」

それぞれに役割を振ると、それぞれの持ち場へと離れていった。

ルバークの作ってくれた滝へと繋がる橋を終点として、起点を目指して屋根をこれから作っていく。

まずは柱を等間隔に建てる。

雪の重みに耐えられるように、地中から太い柱を生やしていく。

「おお、凄いのう!」

少し先を行くガンドの辺りまで一気に柱を立てたので、驚きの声が上がった。

十分に道幅を確保しているし、強度も問題なさそうに見える。

「こんな感じでいいですか?」

後方にいるアルたちに確認をとると、問題ないと返事があった。

柱に接着するように屋根をのせて、先へと進んでいく。


「ダイク、魔力に問題は無いのか?こんなに一気に作れるもんなんだな!」

休みなしで魔法を使って、始点まで屋根を伸ばしてきた。

「俺は大丈夫です。こんな感じでよかったですか?柱の間は雪が吹き込んでくるので、何か対策が必要ですね。」

「それはおいらたちで考えることにするよ。ダイクは休んでてくれ。」

ビクターとアル、ヴィドの三人で話し合いが始まってしまった。

「ダイク兄、そろそろリンデンさんの解体が終わるんじゃない?」

「そうだな。俺たちはサンテネラに戻ろうか。」

「うん!アルさん、ボクたち帰るねー!」

アルは話し合いを止めて、俺たちのそばまでやってくる。

「なんだ、泊っていかないのか?」

「すいません。まだ、サンテネラでやることがあるんです。干物もうまくいってるようですし、冬の間も引き続き魔獣木の管理をお願いしますね。」

「あぁ、任せておけ。」

ヴィドもこちらを向いてそう言った。

「ありがとよ、ダイク!俺が冬の間もしっかりと魚を捕るぜ!」

「三日に一回でお願いしますよ!」

「わかってるって!気を付けて行けよ!ルバークによろしくな!」

三人に手を振って別れ、村にいるロデオの元へと戻る。

三人で協力して荷車を取り付けて、アルたちの村を後にした。


サンテネラに着く頃には、日が落ちかけて空が綺麗な茜色になっていた。

まっすぐに宿へと戻り、ロデオを預けるとギルドへと向かった。


「わしはキャサリンさんのところに行っておるぞ。」

ギルドに入るとそう言って、一人で進んでいってしまう。

ついて行っても邪魔になるかもしれないので、ロゼの手を取ってリンデンのいる解体部屋へと入る。

「こんばんわ。リンデンさん、解体は終わりましたか?」

部屋の奥で解体をしているリンデンに声を掛ける。

「おう、待ってたぞ。」

近づいてきて、カウンターの下から羊皮紙と大きな袋を取り出してどさりと上に置いた。

「ここらで見ない魔獣だったから、多少高値になっているな。詳細は羊皮紙を読んでくれ。」

ほとんどがロゼとルバークで倒した魔獣なので、ロゼに羊皮紙を渡すが興味が無さそうだ。

「ありがとう、リンデンさん!また来るね!」

ガンドのことが気になっているのか、ロゼはすぐに部屋を出て行った。

「なんだ、どうしたんだ?急ぐ用でもあるのか?」

「いえ・・・、そういう訳ではないんです。リンデンさん、ありがとうございました。」

「そうか?まぁ、いい。また来いよ!」

リンデンはそう言って、作業に戻っていく。


「ガンドさん、清算は済みましたか?」

ガンドはカウンター前のテーブル席にロゼと隣り合って座っていた。

「終わったぞ!これを見てくれ!かなりの額じゃろう?」

テーブルの上にある大袋を見せてくる。

「すごい金貨の数ですね。かなりの枚数ですよ、これ。」

魔獣の解体で得た金貨の倍くらいの量が入っている。

「とりあえず、ダイクが持っててくれるかのう?」

大袋を俺の方に押し出すので、アイテムボックスへと収納する。

「キャサリンさんとは話せましたか?明日にでもサンテネラを出るので、今のうちですよ。」

そう言うと、ガンドの顔が真っ赤に染まる。

「何を言うておるのじゃ!?親切にしてもらった。それで十分じゃ!」

顔を隠すように、立ち上がりギルドを出て行ってしまう。

「ボクたちも行こう、ダイク兄!」

ガンドを追って、俺とロゼもギルドを出る。


外は日が落ちて、街灯の魔石が淡く辺りを照らしていた。


宿へと戻り、夕食をとって部屋に戻る。

おばさんにお願いしていた料理は朝までには出来上がるらしい。

今までになく短い滞在となったが、充実した二日間となった。

冬の間の食料も大量に買い込んだし、ガンドの持っていた素材も売ることができた。

あとは家へと戻り、冬籠りをするだけだ。

「ダイク兄、寝ないの?」

窓から街の景色を見ていると、ロゼがベッドの中から声をかけてくる。

「もう寝るよ。」

立ち上がり、ベッドに入ってロゼの隣に横になる。

「おやすみ、ダイク兄。」

「おやすみ、ロゼ。」


こうして、サンテネラの最後の夜が更けていった。


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