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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第106話 ギルドマスターと買い物

部屋の奥にいたギルドマスターが立ち上がり、俺たちの方に向かってくる。

「すまん。ちょっといいか?」

顔はどことなく申し訳なさそうで、いつもの覇気はない。

「どうしたの、マスター?ボクたちに何か用があるの?」

ロゼが何気なく聞くが、ジョセフからの返事は無い。

「何ですか、ジョセフさん。用が無いなら俺たちは行きますけど・・・。」

呼び止めながら、ジョセフの口は動かない。

「ダイクさん、ロゼさん。お茶を淹れますので、奥で話だけでも聞いていただけないでしょうか?お願いします。」

キャサリンがマスターの背中を押して、奥の席に押し込んだ。

「ほれ、お前たちも行くんじゃぞ。何があったかは知らんが、キャサリンさんに迷惑を掛けるんじゃないぞ。」

ガンドも俺とロゼの背中を押して、ジョセフの前まで連れていく。

「ありがとうございます、ガンドさん。今、お茶を淹れてきますね。どうぞ、椅子に座ってお待ちください。マスター、しっかりしてください!」

ジョセフに喝を入れて、キャサリンは部屋を出て行った。

誰も話し出さないので、部屋の中に変な空気が流れている。

室内にいたギルド職員たちも気まずそうにしている。


キャサリンがお茶を持ってくるまで、静寂は破られなかった。


「こちら、どうぞお飲みください。マスター、お話はされたんですか?」

丁寧にお茶を配りながら、ジョセフに確認をとる。

「いや・・・。」

「しっかりしてください。わたしは仕事に戻りますからね。みなさん、本当に申し訳ありません。」

キャサリンは深く頭を下げて、カウンターへと戻っていった。

ガンドはキャサリンの淹れたお茶を美味しそうに啜っている。

ジョセフの言葉を待つが、なかなか言葉が出てこない。

お茶を飲み干したころ、ようやく口が動いた。

「この前は本当にすまんかった。ギルドの・・・俺の勝手な判断でお前たちに不利益を与えたと思っている。本当にすまん。」

座りながら、頭を深く下げた。

「ジョセフさん、俺たちはもう気にしてませんから。頭をあげてください。」

「そうだよ!気にしないでよ、マスター!」

俺とロゼの言葉を聞いたジョセフは少し泣きそうな顔をしていた。

「ルバークは・・・どうしたんだ?」

この場にいないルバークのことを聞いてきた。

「ルバークさんは、家で留守番をしています。別にギルドが嫌で来てないとかじゃないですからね。」

「そうなのか・・・。俺としては、何かしらの褒賞を・・・。」

「ジョセフさん。もう終わった話です。俺たちは気にしてませんし、褒賞もいりません。」

俺が立ち上がると、ロゼも釣られて立ち上がる。

「なので、この話はもう終わりにしてください。いいですね。」

「お、おう。」

「じゃあ、俺たちは行きますね。」

ロゼとガンドの手を取り、カウンターへ抜ける扉を潜る。


扉の先にはキャサリンとリンデンが心配そうに立っていた。

仕事に戻ったんじゃなかったのか?

「しっかりと話せたのか?」

リンデンが厳つい顔で腕組をしながら聞いてくる。

「まぁ、・・・話せたんじゃないですかね?そもそも、俺たちも、ルバークさんも気にしてないんですよ。」

「そうだよ!もうすっかり忘れてたしね!」

「そうか。お前たちがそれでいいなら、いいんだ。マスターのために時間を取らせて悪かったな。」

「本当にありがとうございました。」

二人も俺たちに深く頭を下げだした。

「もう止めてください。俺たちは買い物があるので行きますね。」

逃げるようにギルドを飛び出した。


「おぬしらにも、色々あるんじゃのう。」

市場に向かう途中で、ガンドが話しかけてきた。

「本当にそうなんです。何もかも魔獣木のせいなんです。」

歩きながら、ギルドとの確執めいたことの顛末を話した。

「そうか。あの木は本当に厄介みたいじゃのう。」

「そうだよ!だからボクたちはいろいろな場所にある魔獣木を壊してるんだ!それより、ガンドさん。ガンドさんはキャサリンさんが好きなの?」

ロゼからのストレートな物言いに、ガンドの顔は真っ赤に染まった。

「な、なにを言っておるんじゃ!?素敵な人じゃなぁとは思ったが、好きかどうかはまだ分からん。」

「アハハハ、そうなんだ~!」

そんな話をしているうちに、市場に着いていた。


ガンドとロゼは買い食いをしながら、市場を楽しんでいる。

俺は俺で、食材を大量に買い込んでいく。

お目当ての道具屋に辿り着く頃には、十分な量の買い物をすることができた。


「ここじゃな。ダイク、すまんが立て替えてくれるかのう?」

ガンドの持っていたお金は硬貨ではなく、紙幣だった。

魔族領では当たり前に使えるが、サンテネラでは使えない。

「言ったじゃないですか。俺が出しますよ。好きな道具を買ってください。ガンドさんの家に持って帰りたい道具があれば二つ買ってくださいね。一通りの道具は置いて行ってもらいますからね。」

「そうか・・・。すまんのう。」

「ガンドさん、気にしないでいいよ!ボクたち、それなりにお金持ってるからね!」

ロゼの言葉を聞いて、ガンドは道具選びに集中しだした。

のみや鋸、釘に至っては様々なタイプが並んでいる。

ガンドは一つ一つ手に取って、真剣な眼差しで道具を選んでいる。

「ねぇ、ダイク兄。木工職人って何をする人なの?」

まさかの質問に拍子抜けしてしまった。

分かっているものと思っていたが、分からずに弟子入りを止めていたらしい。

「木を加工して・・・、切ったり、組み合わせて色々なものを作る人だよ。例えば、家のドアや家具は木でできてるだろ?ああいうのを作ってくれる人かな。」

「へぇ~、そうなんだ!ガンドさん、凄いんだね!」

ロゼの頭を撫でながら、ガンドの品定めを待った。


「本当にこんなに買ってくれるのかい?」

あまりの量に店主が目を丸くして驚いていた。

「はい。お願いします。いくらになりますかね?」

店主は算盤に似た何かを弾き、額を算定していく。

「これでどうだい?」

算盤に似た何かを見せてくるが、見方がわからない。

「すいません。読めないので、いくらか言ってもらってもいいですか?」

「おぉ、そうか。すまんな。金貨五十六枚だが、まとめて買ってもらったおまけで金貨五十枚でいいよ!」

高いのか安いのか分からないが、小さな袋に金貨を入れて店主に渡す。

店主は天秤を使って、金額の確認をしている。

「のう、ダイク。本当に良いのか?わしもどのくらいの価値かは分からんが、それなりの金額じゃろ?」

「ガンドさん、いいんですよ。家に戻ったら、ガンドさんには作ってもらうものが沢山ありますからね!」

店主の金貨の確認が終わり、買ったものを一つ一つ鞄に収めていく。

「すごい買ったね!これで買い物は終わりなの?」

ロゼがガンドに確認すると、まだ何か足り無さそうだ。

「ガンドさん、後はなにが必要なんですか?この街で買えるなら買ってしまいたいんですけど。」

ガンドは市場を見渡してため息をついた。

「木材を見たかったんじゃ。木にも色々と特性があってのう。何を作るかにも依るが、材料は使い分けた方が長持ちするんじゃ。」

サンテネラで木材屋は、まだ見たことが無かった。

道具屋の店主にも聞いてみるが、木材屋は知らないらしい。


「明日、近くの村に行くんです。その村の近くに雑木林があるんです。そこの木をいくつか分けてもらうじゃダメですか?まずは行って、見てみませんか?」

「そうじゃな。無いなら仕方がないのう。」

「そうだよ、ガンドさん!元気出して!」

明日の予定が決まった。

アルたちの村に行くことに。



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