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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第103話 年齢詐欺

翌朝、朝食を済ませると、ガンドに俺たちのことを話した。

それぞれの生い立ちやルバークと出会ってからのこと、魔獣木のことを。

ガンドは静かに髭を触りながら、聞いていた。

「そうじゃったのか。ルバークさんはドワーフの血を引いておるんじゃな。ご両親のどちらかかな?」

「母方の祖母がドワーフだったの。ガンドさん、わたしにも“さん”はいらないわよ。さっきまで呼び捨てだったじゃない。」

ガンドは驚きつつ、申し訳なさそうな顔をした。

「今まですまん。年上じゃとは思わんかったんじゃ。」

「年上って何のこと言ってるの?ガンドさん。」

ガンドはおもむろに立ち上がり、洗面所へと入っていった。

まさかとは思うが、ガンドは思っている以上に若いドワーフなのかもしれない。


しばらくお茶を啜りながら待つと、ガンドが姿を見せた。

「が、ガンドさん!?どうしたんですか、その姿!?」

ボサボサだった髭が無くなり、伸び放題の髪もすっきりとして、見違える姿で立っていた。

「ガンド・・・さん?あなた、今年で何歳になるのかしら!?」

「今年で二十四歳じゃ。」

「え~、そうなの!?おじいさんかと思ってた!」

ロゼは平気な顔で、失礼なことを言う。

でも、見た目もそうだが、話し方もそう思わせていた要因だろう。

「なんで、そんな話し方をしているんですか?」

「わしは年寄りに囲まれて生きてきたんじゃ。その口癖が移ってしもうたんじゃろう・・・。」

「フフフ、そうだったのね。それならもっと早く言ってくれればよかったのに!」

ガンドが少し照れながら、席に戻った。


「ガンドさんは戦闘職じゃないって言ってましたけど、お仕事は何をしていたんですか?」

変な空気を打ち破るべく、ガンドに話題を振る。

「わしは、木工職人なんじゃ!家を建てたり、家具を作ったり。依頼があれば、木材で何でも作るぞい。ダイクに預けてある槌も魔道具の一種でのう。職人道具の一つじゃ!」

ルバークが俺のことをギラギラした目で見つめている。

魔道具を出せということだろう。

アイテムボックスから取り出して、ガンドに渡す。

「ほれ、ここの魔石を触ると自由自在に大きさが代わるんじゃ!」

柄の少し上に付いている魔石を触ると、大きさが変化した。

「へぇ~、ガンド君。少し見せてもらってもいいかしら?」

研究モードに入ってしまったルバークは、槌を受け取ると様々な方向から眺めている。

「ちょっと、貸してもらえないかしら?研究したいの。」

ルバークは問うが、あまりの迫力にガンドも頷くしかなかった。

満面の笑みで槌を持ち、走るように階段を上がっていってしまった。

「な、何なんじゃ、あれは!?」

「ルバークさんはね、魔石とか魔道具のことになるとおかしくなるんだよ!」

ロゼは冷静に説明するが、その言い方も失礼であった。

間違ってはいないんだが・・・。

「まぁ、あんまり気にしないでください。ガンドさんの話も聞きたかったんですが、またの機会に三人で聞かせてもらいますね。」

俺が立ち上がると、ガンドも立ち上がった。

「せっかくなので、裏庭に行きますか?ロゼ、昨日はどこまで案内したんだ?」

「うんとね、家の中とガンドさんの部屋に案内しただけだよ!」

「じゃあ、ちょうどいいですね。裏庭に行きましょう!」


ガンドを引き連れて、三人で裏庭へと出る。

広い空間ではないので、ガンドは一人で見て周ることになった。

その隙に、俺とロゼはロデオの世話をする。

「ガンドさん、別人みたいになっちゃったね!」

餌をあげ終わったロゼが声をかけてくる。

「そうだな。元の髭が凄かったからなぁ。まぁ、身綺麗にしている場合じゃなかったんだろ。」

ガンドは地下の遺跡に一人で住んでいた。

住んでいたというよりも閉じ込められていたんだが、若いのに一人で良く生きていたと思う。

そこらの街で一人暮らしするのとは訳が違う。

周りには誰もおらず、魔獣と常に隣り合わせの環境はしんどかったことだろう。

「なんじゃ、わしの話か?」

一通り見て周ったガンドが、馬小屋の柵の外から言った。

「そうだよ!ガンドさんが若返ってビックリしたねって話!」

「どうじゃ、わしもなかなか男前じゃろう?」

変なポーズを取り出すので、笑ってしまう。

「アハハハ、なにそれ!?」

「かっこいいポーズじゃろ!ロゼ、おぬしもやってみぃ!」

すっかりロゼとも仲良くなっているし、問題なく過ごせそうだ。


「ガンドさん、木工職人って言ってましたよね?どんなものでも作れるんですか?」

前々からいくつか、作りたいものがあった。

東屋に移動して、ガンドに相談する。

「何でも作れるぞい!ダイクは何を作ってほしいんじゃ?」

アイテムボックスから羊皮紙と羽ペンを取り出して、絵と設計図のようなものを描き上げる。

「ほぅ、見たことない形じゃな。どのくらいの大きさにするんじゃ?」

「そうですね・・・。人が通れるくらいの大きさでお願いします!材料は俺が持ってます。ほぼ生木ですけど、使えますかね?」

「おぬし、なかなか見どころがあるのう。どうじゃ、木工職人を目指さんか?わしの弟子にしてやるぞ!」

ガンドは俺の両手をとって、勧誘してくる。

「ダメだよ!ダイク兄はボクと冒険者をするんだから!暇な時に手伝うだけね!」

ロゼは止めるが、正直少し興味があった。

前世では、いつか自分で建てたログハウスに住みたいなと思っていた時期があった。

道具も暇もなく諦めていたが、この世界では作ることができるかもしれない。

「大丈夫だよ、ロゼ。冒険者は辞めたりしないよ。ガンドさん、道具は何が必要ですか?いつから作り始めましょうか?俺たちも手伝いますので。」

「わしはいつでもよいぞ!だが、道具は槌しか持っておらんのじゃ。どこかで用意せねばならんのう。」

やはり、サンテネラに行く必要がありそうだ。

「街に出た時に買い揃えることにしましょう。せっかくですし、いいものを作りたいですからね!あと、魔獣の素材はどうするんですか?」

「その街で売れるならすべて売ってしまうつもりじゃ。売れた金で道具を買うとするかのう。」

「いえ、道具のお金は俺が出しますよ。ガンドさんが選んだ道具を持っておきたいですからね。」

「いいや、いいんじゃ。可愛い弟子のためにわしに出させてくれ!」

「だからー。ダイク兄は弟子じゃないってば~!」

ロゼはほっぺを膨らませて怒るが、ガンドは大声で笑っていた。


道具もなく、やることも無くなったので家に戻って料理を始める。

ガンドとロゼは森の探索に行ってしまった。

食事を美味しそうにたくさん食べる一人が追加されたため、唐揚げやフィッシュフライのストックが無くなりかけていた。

肉や魚を捌いて、それぞれの衣を纏わせて揚げる。

魚のあらが大量に出たので、同時並行でみそ汁も作っておこう。

久しぶりに一人での料理だったが、大量にストックを作ることができた。


ルバークはあれから一度も下りてきた気配がない。

すぐにでもサンテネラとアルたちの村を訪れたかったが、どうなることやら。

研究熱が落ち着くのを少しは待ってあげたかったが、いつまでもは待っていられない。

森を抜ける風もだんだんと冷たくなってきた。

雪が降り出す前に、行って帰ってこなければならないのだ。

最悪の場合、ルバークは留守番でもいいが、ルバーク自身はいいと言うだろうか。

昼食の時にでも、聞いてみようと思った。


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