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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第102話 これから

空が夕日に染められ始めた頃、俺たちはトレントの口から吐き出された。

「いやー、楽しかったのう!それにしても、こんな移動方法があったのか!世界は広いわい!」

ガンドが興奮冷めやらぬ感じで、鬼蜘蛛の森を見渡している。

穴に落ちた当初は悲鳴をあげていたが、次第にスライダーを楽しんでいた。

「フフフ、よかったわね。ダイク君、わたしはマザーに報告に行ってくるわ!ガンドさんのこと、お願いね!」

ルバークはそう言って、戻ってくるなりマザーの元へと向かった。

「わかりました。そろそろ暗くなるので、気を付けてくださいね!」

「いってらっしゃーい!」

姿が見えなくなると、アイテムボックスを漁る。


「ロゼ、魔獣木を砕いてくれるか?」

疲れているだろうが、これだけはやっておかなければならない。

また、味覚や感情を失うのは御免だ。

「うん、いいよ!早くしないと、ダイク兄が困っちゃうもんね!」

アイテムボックスから魔獣木を取り出して、あとはロゼに任せる。

「こいつは魔獣木だったのか!?わしの知ってる魔獣木とはえらい違うが・・・。」

ガンドは魔獣木にどんどんと近づいていく。

「ガンドさん、危ないので離れてください!これも魔獣木なんです。俺たちにもどうしてこんな姿をしているのかはわかりませんが、悪い影響があるので回収して周っているんです。」

ロゼが魔獣木を砕き始めると、ガンドの目はまん丸に見開かれた。

「わしも本気で砕こうとしておったのじゃが・・・、こんなに簡単に砕くのか・・・。ロゼ、おぬしは何者じゃ!?」

「ボクはボクだよ!ダイク兄がくれたこの剣がすごいんだよ!」

はじまりの剣をガンドの目の前に持っていき、自慢するように見せる。

「わしも振ってみてよいか?とても剣だけとは思えんが・・・。」

ロゼからはじまりの剣を受け取ると、ガンドは剣を高く掲げ、鋭く振り落とすが魔獣木に弾かれてしまう。

「が、ガンドさん、ロゼは剣の才能が・・・。」

慰めようとすると、ガンドが手をあげて言葉を止める。

「いいんじゃ。わしは戦闘職でも無いしのう。ロゼ、邪魔して悪かったのう。」

はじまりの剣をロゼに戻し、魔獣木が砕ける様を観察していた。


「ふぅ~。終わったよ、ダイク兄!」

額に浮かぶ汗を拭いながら、ロゼが言う。

「ありがとう、ロゼ。俺はこれを回収し終わったら家に戻るから、先にガンドさんを部屋に案内してあげてくれるか?」

そう言うと、ロゼは頷いてガンドを連れて家に入っていった。

魔獣木の塵一つ残さないように回収すると、腕に巻き付いていたトレントが動き出した。

「ここが俺たちの家だよ。トレントはどこに居たいんだ?前と同じように、植木鉢にするか?」

トレントが元々は植えられていた植木鉢を出すと、器用に鉢に登って体をくねらせながら根を土に埋めている。

「トレントもお疲れ様。まだ体が小さいし、家の中でいいか?」

トレントが体を前に倒したような気がした。

「そうか。窓際に置いてやるからな。」

植木鉢を抱えて、家の中に入る。

「ただいま。シラクモも出ておいで。」

フードに隠れていたシラクモが勢いよく跳び出し、窓際へと移動した。

「分かってるよ。」

植木鉢を窓際に置くと、シラクモは前足をあげた。

「トレントはそこにいてもらうことにしたの?毎日、お水をあげないとね!」

階段をバタバタと下りてきて、ロゼが言う。

トレントを軽く撫でると、トレントの顔がにっこりと笑った。

「ダイク兄、見て!トレントが笑ったよ!」

小さいトレントは普通の木に戻ることは無く、鉢に戻っても顔を維持している。

「本当だな。ロゼはトレントに水をあげてくれるか?俺は夕飯の用意をするよ。」

「うん、わかった!ボクに任せといて!」

魔法で水をあげてもよかったが、ロゼに任せることにする。


「いい匂いじゃのう。まともな料理は久しぶりじゃ!」

いつの間にかガンドが後ろに立っていた。

「もう少しで用意できます。ルバークさんを待ってから食事にしましょう。ガンドさんは座って待っててください。」

「ガンドさんはこの椅子に座ってね!」

ロゼが空席に案内しながら、食事の用意を手伝ってくれる。

「ありがとう、ロゼ。もうやることも無いし、座って待ってようか。」

ガンドの席はルバークの隣だ。

向かいに俺とロゼがいつも座る席がある。

「おぬしらは三人で生活しておるのか?親はどうしたんじゃ?」

ガンドが問うと、扉が開いてルバークが帰ってきた。

「ルバークさん、お帰りなさい。ガンドさん、まずは食事にしましょう。」

立ち上がって調理場へ行き、スープを温め直す。

「ただいま~。今日も大変だったわね~。食事の用意をしていてくれたのね!ありがとう。」

ローブを脱いで、魔法で体をきれいにするとルバークは椅子に座った。

頭のヘアバンドは着けたままだ。

「どこに行っておったんじゃ?」

ルバークは何をどこまで話したらいいのかと逡巡していた。

「まずは食事にしましょう。ガンドさんもお腹がすきましたよね?」

食卓にはパンとスープ、唐揚げにトマト煮込みがずらりと並ぶ。

さっきからガンドの腹の虫が鳴り続けているのを、俺とロゼは聞いていた。


食事が始まると、ガンドは余程お腹が空いていたのか、勢いよく食いついていた。

さっきまでの話のことなど頭に浮かばないほどに、美味しそうに食べてくれている。

食卓に並んだものを食べ尽くすと、部屋へと戻ってしまった。


「ダイク君、ロゼ君、わたしたちはお風呂に入りましょうか。」

テーブルの上を片付け終わると、ルバークがそう言った。

まだ早い気もしたが、体が疲れていたので了承して裏庭へと向かう。

ロゼとルバークはロデオの世話を。

俺は露天風呂のお湯を準備する。

ロデオの世話が終わる頃に、少し熱めの湯を張り終えた。

服を脱いで、ロゼに魔法を掛けてもらい湯に浸かる。

「はぁ~、気持ちいいわねぇ~。今日も一日、疲れたわねぇ~。」

湯に溶けながら、ルバークが言う。

「本当に、毎日退屈しませんね。ルバークさん、ガンドさんのことなんですけど、どこまで俺たちのことを話していいんでしょうか。」

ロゼを抱えて湯に肩までつかりながら問いかける。

「そうねぇ~、いいんじゃないのかしら。全部伝えちゃっても。これから一緒に冬を越すことになったんだし、変に隠し事をしていてもどこかで綻んじゃうと思うのよねぇ~。」

「そうだよね~。隠し事は無しだよ、ダイク兄!」

「わかりました。明日にでもガンドさんに話してみようと思います。」

当面、魔獣木を回収に行く予定はない。

いくらでも時間はあるし、ガンドの地図を写させてもらわなければならない。

それに、ガンド自身の話も聞いてみたかった。

「近いうちに、サンテネラまで行きましょうか。ガンドさんを連れてね。アル君たちの街にも顔を出しておきたいでしょ?」

「はい、干物の件がどうなったのかも気になってました。」

「ボクもお買い物がしたいな~!」

冬を前にして、最後の訪問になるだろう。

ガンドがここに住むのなら、それなりに食料も買わないといけないだろう。

毎食あんなに食べられてしまうと、今ある食料では全然足りないと思われる。

アイテムボックスに入っているガンドの物も、売る気があるのならばギルドで売るチャンスだろう。


いろいろと考えているうちに、長湯になってしまった。

ロゼもすっかり俺の上で寝そうになっていた。

「フフフ、そろそろ上がりましょうか。早く着替えて、体が温かいうちに寝ましょう。」

ルバークは先に上がり、体を拭き始める。

「ロゼ、起きろー!寝るのはベッドに戻ってからだよ。」

眠たそうなロゼの体を起こして、体を拭いて服を着せる。

俺自身も急いで服を着て、ロゼをベッドまで連れていく。

「おやすみなさい、ルバークさん。」

「おやすみ、二人とも。」

部屋の前でルバークと別れて、ロゼをベッドに放り込む。

風邪を引かないように布団をかけて、俺もベッドに潜り込む。


シラクモを撫でているうちに、あっという間に眠る。


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