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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第101話 ガンド

「行きますよ!息を大きく吸って、止めてください!」

ガンドは泳げないようで、結局俺の背中にいる。

背中のガンドが息を止めたのを耳で確認すると、結界のような膜を触れた。

触れると、膜に引き寄せられるように体が水中に投げ出される。

あまりの勢いにガンドは背中から剥がされる。

突然、俺から離れた場所に投げ出されてパニックになったのか、口から大量の空気を吐き出して暴れているのが見えた。

泳いでガンドを捕まえて、水上を目指して足を動かす。

水上に顔を出すと、ガンドの口からは大量の水が吐き出され、空気を吸おうと暴れている。

「ガンドさん、落ち着いてください!暴れると余計に沈みます!」

そう伝えてもガンドの動きは一向に止まらない。

魔法で地面からニョキっと立方体の足場を作って、ガンドのことを水中から押し出す。

しばらく暴れていたが、落ち着きを取り戻すと立ち上がりこちらを見た。

「・・・すまんな、少年!あまりの出来事に混乱してしまったわい!」

俺も立方体の足場に登り、岸まで伸ばして砂漠の砂地に戻ることができた。


「あっ、ダイク兄~!おかえり~!」

ロゼたちは初めにオアシスに着いた辺りで大きく手を振っている。

「もう、心配してたのよ、ダイク君!」

ルバークとロゼは俺に駆け寄って、勢いよく抱き着いてくる。

「すいません。ご心配をお掛けしました!でも、魔獣木の回収には成功しました!」

ルバークたちが離れると、体をタオルで拭いてから服を着る。

「のう、少年。わしの服もくれんかのう。」

俺の後ろでガンドが股間を手で隠しながら言う。

「すいません、これがガンドさんの服です。体はこれで拭いてください。」

タオルとさっきまで着ていた服を渡すと、ガンドは後ろを向いて着替えを始めた。

「ダイク君、そちらの方はどなたかしら?」

ルバークとロゼにオアシスの地下であったことを説明する。


「そんなことがあったのね・・・。」

「はじめまして、ボクはロゼだよ!こっちがルバークさん!よろしくね!」

「わしはガンド。そこの少年に助けてもらったんじゃ。」

「少年じゃなくて、ダイク兄だよ!ガンドさん!」

「ファハハ、そうだったのう。すまん、ダイクに助けてもらったんじゃ!」

各々が自己紹介している間に、魔法でパラソルとテーブルセットを作った。

「すいません。話が長くなりそうなので、少し休憩させてください。」

誰よりも先に、くたびれた体を椅子に下ろした。

「じゃあ、お茶を淹れるわね!ガンドさんもどうぞ座ってください。」

ルバークに促され、ガンドが俺の隣に座る。

「それにしても、ここはどこなんじゃ!?二、三年地下に潜っとるうちに、地上は砂漠に呑まれたのか?」

ガンドの言っていることが理解できなかった。

ここの土地はもともと砂漠だったのではないんだろうか。

バルテペスの人々からもそんな話は聞けなかった。

「ガンドさんはバルテペスに住んでいるんじゃないんですか?それに、あんなところに二、三年も住んでいたんですか?」

確かに、地下の遺跡にあったガンドの部屋には、長年住んでいたような形跡があった。

魔獣の素材にしても、すぐに集まる物量ではなかった。

「バルテペスってどこじゃ?わしは魔王領のカノンという街に住んでおるぞ。ダイクに預けた地図を出してくれるか?」

「あの中に、地図があったんですか!?」

アイテムボックスを必死に探し、地図を見つけ出した。

ガンドに向けて地図を広げると、ある場所を指差した。

「ここがわしの住む街じゃ!」

ルバークは首を傾げながら、地図を凝視している。

「これが地図なのね・・・。ここがベルカイム王国ね。ガンドさんはこんなところに何の用があって魔王領から出てきたのかしら?」

ルバークはお茶を差し出しながら聞いた。


「出てきたんじゃない。転移の魔法陣を踏んでしもうたんじゃ。まさか、魔王領ですらないとは思わんかったがのう。・・・そうか。」

あからさまにガンドから笑顔が消えた。

「ガンドさん、とりあえず俺たちと一緒に帰りませんか?もうじき季節は冬になりますし、これから魔王領を目指すのは厳しいと思います。バルテペスまで送り届けるのもアレなので、ルバークさん、いいですか?」

「ボクもそれがいいと思うよ!バルテペスまで戻るのは面倒だもんね!」

せっかく言葉を濁したのに、ロゼがはっきりと口にする。

「・・・そうね。ガンドさん、わたしたちと一緒に帰りましょう。砂漠を歩くのはもう御免だわ。近くにサンテネラっていう大きな街もあるの。そっちに送ってもいいしね。ね、そうしましょう。」

ルバークがガンドに優しく声をかける。

「そうじゃのう。すまんが、世話になることにしよう。それで、砂漠を歩かずにどうやって帰るんじゃ?」

状況を飲み込んだガンドは、まっすぐにルバークのことを見る。

「フフフ、すぐに分かるわ!ガンドさんはここで休んでてね。ダイク君、疲れているところ申し訳ないんだけど、収納してほしいものがあるの。」

そう言うと、ロゼが俺の手を引いて近くの砂丘を登り始める。

「ダイク兄、こっちこっち!」

砂丘を超えると、魔獣の亡骸の山が築かれていた。

「ダイク君が潜っていって、少ししたらここにいる魔獣たちが襲ってきたの。砂の中からわらわらと出てくるんだもの。ビックリしたわよねー、ロゼ君。」

「そうなんだよ!ボクも頑張って沢山倒したんだよ!」

ロゼが誇らしげにはじまりの剣の柄を撫でている。

「そうか、ロゼもルバークさんも頑張ってたんですね。」

亡骸をアイテムボックスに入れながらロゼのことを褒めてやる。

「これは、・・・いれますか?」

電車程あるミミズのような死骸以外を収納し終えると、ルバークに聞いてみる。

「おそらく、サンドワームよね?街で教えてもらった魔獣だと思うの。死骸は残して、街の人たちに見つけてもらうことを祈りましょう。」

「そうですね。それがいいと思います。」

正直、気持ち悪くてアイテムボックスに入れたくなかった。

バルテペスの街で、かなり警戒しているようだった。

死骸が見つかれば警戒も解けて、いずれ物流も戻ることだろう。


サンドワームを残したまま、ガンドの元へと戻る。

「じゃあ、帰りましょうか。ガンドさん、立ち上がってください。」

パラソルとテーブルセットを消すと、ロゼとルバークと手を繋ぐ。

「ダイク君、そのトレントはどうするの?連れて帰るの?」

すっかり忘れていたが、腕にはトレントが巻き付いている。

「トレント、俺たちは帰るけど、お前はどうする?送り届けてあげられなくって悪いけど。」

声をかけるが、トレントは腕にきつくしがみ付いて離れない。

「離れませんね。このまま連れて帰ってもいいですか?」

「いいわよ。ここに残すのも可哀そうだしね!」

トレントも連れて帰ることとなった。

「ガンドさん、そっちの手はルバークさんと握ってね!」

ロゼはガンドの手を握り、空いてる手をルバークと繋がせる。

「手を繋いでどうするんじゃ?」

ガンドは不思議そうにしているが、ロゼはそれを見てニヒヒと笑っている。

「じゃあ、帰りますよ。何があっても、手を離さないでくださいね!」

四人の手が輪っかになって繋がったのを確認すると、目を閉じて魔力を込めるイメージを浮かべる。

「ダイク、腕輪から何か落ちたぞ!」

ガンドが手を放そうとするのを、ルバークとロゼが手を繋ぎとめる。

「ガンドさん、動かないでください!手は離しちゃダメですよ!」


魔石のようなものが足元で薄く広がり、四人を包み込むと足場が無くなって俺たちは穴に落ちていく。


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