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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第97話 バルテペス

「痛たた。・・・ルバークさん、ロゼ。大丈夫ですか?」

トレントの口から勢いよく排出され、転がり出た。

手が離れてしまったが、排出された後だったので、取り残されることなく二人の姿が確認できた。

「アハハハ、すごかったね!あ~、楽しかった!」

ロゼは長い滑り台を楽しそうに振り返った。

怪我をしている様子もなく、平然と立ち上がった。

「痛ッ!・・・ひどい通り道だったわね。体のあちこちが痛いわ。」

痛いと言いながらも立ち上がり、腰を撫でながら体に着いた埃を払った。

「シラクモは大丈夫か?」

フードの中にいた、シラクモの確認をするが、元気そうに頭の上に出てきた。

「大丈夫なら、ルバークさんに魔法を使ってくれ。俺とロゼは大丈夫そうだ。」

シラクモはルバークの足元に跳ぶと、体を淡く光らせて魔法を使う。

「あぁ・・・、ありがとう、シラクモ君。痛みがなくなったわ。二人は大丈夫そうね。それにしても、ここはどこかしら?」

薄暗い場所で、それぞれの姿がぼんやりとしか見えない。


「窓を開けるよ~!」

木でできた窓の隙間から、光が漏れていた。

ロゼが窓を開けると、光が入ってきて部屋の全貌が目に入ってくる。

何も物がない部屋の隅にポツンと植木鉢に小さな木が生えていた。

「まさか、これから俺たちは出てきたのか?」

植木鉢を含めて、俺の膝丈までもない小さい木だ。

「そうみたいね・・・。こんなに小さい木にも顔があるわ。この木もトレントなのね。」

ルバークは驚きながら、小さなトレントを観察している。

「ダイク兄、こっちも見てよ!」

窓の外を眺めていたロゼが俺を呼ぶ。

トレントを離れて、ロゼの元へ行って窓の外を見た。

「どこだ、ここは・・・。」

窓の外には小さな街が広がっていた。


白い壁でできた小さな家がいくつも見える。

温度も高く、外壁の向こうは砂漠だろうか・・・。

街も砂に覆われており、少し寂しさを感じさせた。


「ダイク君、トレントが動き出したわよ!」

窓から離れてトレントのところまで戻ると、植木鉢の土から根っこを外そうと動いていた。

クイーンによれば、トレントが道案内をしてくれることになっている。

この小さなトレントがその役目を負っているんだろうか。

モゾモゾと植木鉢から脱出すると、手を口に突っ込んで魔石のようなものを取り出した。

「これって・・・。腕輪に付いていた石かしら?」

拾って腕輪に付けると、ぴったりと嵌った。

「よかったね、ダイク兄!これでいつでも帰れるね!」

「そうだな、ロゼ。ありがとう、トレント。早速案内を頼みたいところだけど、ここはどこかの街みたいなんだ。まさか、街の中に魔獣木があるとは思えないし、ここを出るまで隠れていてもらわないといけないな。」

言葉が通じたのか、トレントは枝を伸ばして俺の腕に絡めた。

枝が縮みだすとトレントの体ごと腕にピタリと張り付いた。

「ダイク君、大丈夫ッ!?」

トレントの俊敏な動きに、ルバークは心配そうな顔をこちらに向けた。

「大丈夫です、ルバークさん。これならローブに隠れるし、街も歩けそうですね。」

トレントはローブの袖を巻き込んで張り付いているが、袖を引っ張ると力を緩めてくれた。

「しばらく、ここで我慢してくれよ。」

トレントを覆う様に袖を下ろすと、ローブにすっかりと納まって違和感なく隠すことができた。

「じゅあ、とりあえずここを出ましょうか。」

部屋の扉を開けると、すぐに階段があった。

向かいにはもう一部屋あったが、人の気配はない。

ロゼが勝手に開けてしまうが、中には何もなかった。

「空き家なのかな?下からも人がいる感じはしないね!」

ロゼは能天気に、そんなことを言いながら階段を下って行った。

「わたしたちも行きましょう!」

ロゼに続くように、俺とルバークも階段を下る。


下の階にはやはり誰もおらず、家の中は砂まみれだった。

「長いこと、誰も住んでないみたいですね。」

家具はいくつか残っているが、きれいに全て砂を薄っすらと被っている。

「ダイク兄、もう開けちゃうよ!」

待ちきれずに、ロゼは玄関と思われる扉を勢いよく開いた。


「暑いとは思っていたけれど、外はもっと暑いのね・・・。」

外に出たルバークがフードを深く被りながら言った。

「そうですね・・・。ロゼもフードを被ったほうがいいよ。日焼けして、後で痛くなっちゃうよ。シラクモ、俺もフードを被るから、頭の上においで。」

シラクモが頭に乗ったのを確認すると、フードを深く被った。

ロゼもフードを被ったところで、街を探索してみることにする。

トレントには悪いが、ここがどこかも分からない。

せっかく、街に来たんだ。

買い物くらいしても、罰は当たらないだろう。

適当に街をぶらぶらと歩いていると、市場が見つかった。

「ダイク君、市場よ!少し、買い物をしていかない?せっかくここまで来たんだしね!」

ルバークも同じことを思ったんだろう。

もちろん、俺も賛成する。

「いいと思います!買い物しながら、ここがどこかを確かめましょうか。」

「えぇ~、急がなくていいの?」

「ロゼ、ここには見たことない武器だってあるかもしれないんだぞ。それに美味しい食材も。ロゼは気にならないのか?魔獣木を処理し終えた後に、ここに戻ってこれるかも分からないんだぞ。」

「・・・そうなの?なら、先に見ておかないとね!」

ロゼの気持ちを乗せたところで、市場の中へと入っていく。


寂し気な街の市場も、どこか活気がない。

店は並んでいるが、あまり商品が並んでいないし、客もまばらだ。

「いらっしゃい!お嬢さんたち、見ていかないかい?」

市場に入ってすぐの店主が呼びこんでくる。

「ここは何を売っているのかしら?」

見たことの無い形状の野菜かフルーツを売っている店だった。

「何だい!?見たことないのかい?ってことは旅人さんだね!大変な時期に来たもんだ!」

店主は大げさな動きで、そう言った。

「大変な時期ってなんのことですか?」

何を売っているのかも気になるが、店主の言葉の方が気になった。

「魔獣だよ!旅人さんたちも大変だったろう、この街まで来るのが。魔獣が増えた影響で、バルテペスに来る行商人が減ってるんだ。」

この街の名前だろうか。

砂漠の街 バルテペスでも魔獣木の影響が出ているようだ。

「そうなのね。わたしたちも大変だったのよ。おじさん、それを一つ貰ってもいい?」

何だか分からないものをルバークは買うと、俺たちを連れて市場を離れた。


「この街はバルテペスって言うみたいね。二人も聞いていたと思うけれど、わたしたちはただの旅人よ。」

「え~、ボクたちって旅人だったの?」

ロゼは大きく口を開けて、驚いてみせる。

「ロゼ、ここがどこかも分からないんだ。ようやく街の名前だって分かったところなんだぞ。余計なことを言わずに、何か聞かれれば旅人ってことにしておけばいいんだ。旅人ってのも、あながち間違いじゃないしね。」

「そっか、わかった!ルバークさんはさっき、何を買ったの?」

ルバークが抱えているものを、ロゼは眺める。

「とっさに買っちゃったわ。これは何かしら?」

俺に差し出して、鑑定しろと圧を掛けてくる。

「デーツっていう果物みたいですね。」

俺の知っているデーツとはかけ離れてでかい。

パイナップルくらいの大きさをしている。

「とにかく、戻って市場を見ながら、情報収集をしましょうか。」


再び、市場へと戻り、店を見て回ることになる。

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