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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第96話 懸念と滑り台

「ダイク兄、大変だっ!早く起きて!」

体を揺すられ目を覚ますと、ロゼが慌てた様子でいた。

「おはよう、ロゼ。どうしたの、そんなに慌てて?」

「ボクたちあのまま寝ちゃったんだよ!窓の外を見てみて!もう朝だよ!夕飯を食べ忘れちゃった!」

ベッドから起き上がり、窓を覗くと朝日が昇り始めているのが見えた。

「そうみたいだね。昼寝の習慣が無いから、少し寝るってことができなかったんだろうね。」

ロゼのお腹からは盛大に音が鳴っている。

「お腹もすいたし、下りて何か作ろうか。ロゼは何が食べたい?」

「ん~、そうだなぁ・・・、リンデンスペシャルかな。お腹空いてるから、三枚重ねで!」

朝から元気なロゼを連れて階段を下りる。


パンケーキを焼いていると、臭いにつられたのかルバークも下りてきた。

「いい匂いがしてるわね。おはよう、二人とも。」

席に着くなりお茶の準備を始める。

「おはようございます、ルバークさん。」

「おはよう!今日の朝食はリンデンスペシャルだよ!ルバークさんは何枚食べる?ボクは三枚お願いしたんだよ!」

ロゼのお腹の音が離れていても聞こえてきた。

「フフフ、昨日は二人とも夕飯を食べ損ねちゃったものね。わたしは一枚で十分よ。ダイク君、何か手伝うことはある?」

「焼くだけなので、俺だけで大丈夫です。ほら、ロゼの分が焼きあがったぞ。温かいうちに食べちゃいな。」

三枚重ねにしたパンケーキをロゼの前に配膳する。

ジャムをアイテムボックスから取り出して、テーブルの中央に置いた。

「美味しそう!いただきまーす!!」

ロゼは余程お腹が空いていたのか、口いっぱいにパンケーキを詰め込んだ。

「ルバークさんの分もすぐに焼けるので、もう少し待ってくださいね。」

「ありがとう、ダイク君。」

ルバークの分、シラクモとクガネの分、最後に自分の分を焼くと、作った生地はきれいに無くなった。


「ふ~、美味しかった~!ジャムは何にでも合うね!」

ロゼは満足そうに腹を擦っている。

「本当に美味しかったわね。」

少し手間だが、こんなに喜んでもらえるなら作ってよかった。

ルバークの淹れたお茶を啜って、食休みをとる。

「ダイク君、今日その腕輪、使ってみるんでしょ?やっぱり、わたしもついて行くわ。行った先にどんな魔物がいるのか分からないから、心配なのよね。」

「ルバークさんは家で待っていてもらえると助かるんですけど・・・。」

「ヴィド君たちが来るかもしれないって気持ちもわかるのよ。でもね、少しでも戦力はあったほうがいいでしょ?」

「そうなんですけど・・・。」

ルバークの帯同を渋っていると、ルバークは首を傾げた。

「なにか別の心配事でもあるの?それとも、わたしは邪魔かしら・・・。」

あからさまに悲しそうな顔を浮かべて、ルバークはこっちを見ている。

「全然、邪魔じゃないよ!ダイク兄はなにが嫌なの?」

ロゼまで不満げな表情で俺を見てくる。

「ルバークさんが、じゃないんです。クイーンのことが信用できていないんです。」

「あら、そうなの?どんなところが?」

「なんて言うか・・・、常識的なノームとでも言いましょうか。言っていることはもっともなんです。でも、やっぱり説明が足りないと思うんです。すいません、うまいこと言葉にできなくて・・・。」

ルバークはお茶をくいっと飲み干した。

「つまり、その腕輪が信用ならないってことかしら?」

「まぁ、そうです。本当に使えるのかもわかりません。使えたとしても、ルバークさんが無事でいられる保証も無いんです。」

「え~、そうなの?それなら、ルバークさんはお留守番だね!」

ロゼにも伝わったのか、同意してくれる。

「そう・・・、言いたいことは分かったわ。でもね、それならダイク君たちだって無事でいられるか分からないわよね?」

「まぁ・・・、そうですね。」

「でしょ?悩んでいても始まらないわ!クイーンのことを信じてみましょう。もし、わたしに何かあったら、クイーンのことを好きにしてくれていいわ。」

ルバークの意思は固かった。

これ以上、何を言っても無駄だと分かってしまった。

「・・・わかりました。信じてみましょう。」

お茶を飲み干すと、出掛ける準備がバタバタと始まった。


「ルバークさーん!用意できたー?」

準備の整ったロゼは、部屋に戻ったルバークを急かす。

「ごめんなさい、用意できたわ。行きましょうか!」

ヘアバンドとフードを深く被ったルバークが階段を下りてくる。

「はい。とりあえず、トレントの側で腕輪を使ってみましょうか。」

ドアを開けて、家を出る。

トレントは家の前を陣取り、ただの邪魔な木となっている。

「この木って、トレントなのよね?普通の木と変わりない様に見えるんだけど・・・。」

ルバークも初めてこの姿を見たのか、感想を漏らした。

「俺たちが帰ってきてから、この姿になりました。鑑定してみても、トレントなんですが、見分けは付かないですよね。」

「そうね。もしかしたら、今までも気がつかなかっただけで、沢山のトレントを見てきたのかもしれないわね。この森には、この子だけでしょうけれど。」

ルバークはそう言って、俺とロゼの手を繋ぐ。

「ダイク君とロゼ君も手を繋いでね。」

ロゼが開いている方の手で、俺の手をギュッと握る。

「準備できたよ、ダイク兄!」

頷いて、ロゼとルバークの顔を確認する。

「いいですね。向こうに着くまで、手は離さないでください。」

二人はコクリと頷いた。

「シラクモとクガネもフードから出ちゃダメだよ。」

それぞれの頭の上にいた二匹は、前足をあげてフードに潜った。

「じゃあ、始めます。」

目を瞑ってイメージを浮かべていく。

魔力を腕輪に流れて、溜まっていくイメージを。


厳密にいえば、魔力を感じたことは無いので、今まで想像力のみで魔法を使ってきた。

魔力が流れているのかはわからないが、頭の中で想像してみるしかない。

魔力を腕輪に流れて、溜まっていくイメージを。

ボトリと何かが落ちた音が聞こえてきた。

「ダイク兄、魔石が落ちちゃったよ!」

目を開けると、腕輪に付いていた石が地面に落ちていた。

「本当だ。クイーンに騙されましたかね?」

そう言うと、石がカタカタと動き出した。

「何かしらね。」

ルバークが魔石のようなものを覗き込むために、繋いでいた手が緩む。

「ルバークさん、ダメです。」

ギュッと握り直すと、石が足元に薄く広がった。

三人を覆うほどに広がると、パリンッと音を立てて割れると、俺たちは穴に落ちていた。

「何なの、これー!!」

ルバークの叫ぶ声が近くで聞こえるが、この感覚には覚えがあった。

「ルバークさん、大丈夫だよ!落ち着いて!」

クイーンのいた世界から追い出された方法に似ていた。

手を繋いだまま、揉みくちゃになりながら長い滑り台を下る。

「あそこが出口みたいです!手は離さないでくださいね。」

滑り台の先にある光がだんだんと近づいてくる。

「ほんとだ!ルバークさん、もう少しの我慢だよ!」

ロゼがルバークに声をかけるが、返事は無かった。


光を潜り抜けると、勢い余ってごろごろと転がり、手が離れてしまった。


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