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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第93話 妖精の小道

この話で累計100話となりました!

どうやってみなさんが、この小説に辿り着いたのかはわかりません。

ここまで読んでくれたみなさんに感謝です!

「起きなさい、ダイク!もう朝よ!早く、出掛ける準備をしなさい!」

気持ちよく寝ていたら、ノームが俺の頬を叩いて起こしてくる。

「ノーム・・・、まだ早いだろ。外を見てみろよ。まだ、真っ暗じゃないか。」

ほんのりと明るくなっている気はするが、まだ日は登っていない。

「うるさいなぁ・・・。ノーム、静かにしてよ!」

隣で寝ていたロゼも目を擦りながら体を起こした。

「ロゼもついて来るなら、早く目を覚ましなさい!もう出掛けるのよ!」

ノームはロゼの元へと飛び、瞼を引っ張り無理やり開けた。

「やめてよ、ノーム!痛いよ!」

ロゼが悲鳴をあげると、シラクモが素早い動きで妖精を捕まえた。

「シラクモ、よくやった。ノーム、いい加減にしないと怒るぞ!」

睨んだつもりで妖精を見る。

「何するのよ!早くしないと、あの子の口が閉じちゃうのよ!移動できなくなっちゃうのよ!」

シラクモに抑えられながら、必死に叫んだ。

「閉じるってなんだよ。」

「昨日、すぐに行くと思ってたからゲートを開けちゃったのよ!もう少しで閉じちゃうわ!早く用意してよ!」

あまりの必死さに、俺とロゼはベッドから出て装備を整え始める。

「なんで昨日のうちに説明しないんだよ。毎回、説明が足りないんだ。ノームは。」

着替えながらも妖精に対して、苦情を伝える。

「わかったわよ!早く行くわよ!鬼蜘蛛、退きなさい!」

「シラクモ、放してやっていいぞ。」

シラクモはノームを放すと俺の頭に跳び乗る。

「ダイク兄、用意できたよ!」

「あぁ、行こうか。」

ある程度の用意が整い、部屋を出た。


部屋を出ると、ルバークが扉の側に立っていた。

「全部聞こえていたわ。もう出掛けるのね。二人とも、気を付けるのよ。」

心配そうな表情を浮かべて言った。

「ありがとうございます。朝から騒がしくてすいません。いってきます!」

「おはよう、ルバークさん!いってくるね!」

それぞれがルバークに一言告げて、急いで階段を下りて家を出る。

「ダイク兄、盾を忘れてるよ~!」

ロゼが二人分の盾とはじまりの剣を抱えている。

「そうだった。ありがとう、ロゼ。」

盾を腕にはめ込むと、出掛ける用意は全て整った。

「早くして!トレントちゃんの口が閉まり始めてるわ!飛び込みなさい!」

妖精はそう叫ぶが、あの中に飛び込むのは勇気がいる。

「行くよ、ダイク兄!」

ロゼが躊躇している俺の手を引っ張って、強引にトレントの口へと飛び込んだ。


入り口は禍々しかったが、飛び込んだ先は草木の生い茂る一本道だった。

「走って!出口も閉じ始めてるのよ!急がないと、ここから出られなくなるわよ!」

ノームに言いたいことは山程あるが、今は飲み込んで走ることを優先する。

こんなところに取り残されるわけにはいかない。

「ロゼ、背中に乗って!」

ロゼに余計な魔力を使わせないよう、背負って小道を駆け抜ける。

身体強化を使って全力で走るが、出口が見えてこない。

「ノーム、出口はどこだ!?」

景色の変わらない小道を、ちゃんと進めているのかが分からなくなってくる。

「もうすこ「ダイク兄、あそこだよ!あれが出口じゃないかな?」」

妖精の声を遮って、ロゼが道の先を指差す。

道の先にかすかな光が見える。

その光も、だんだんと小さくなっている。

取り残されないように必死に足を動かして、光へと突っ込んだ。


「うわぁ~!」

狭まっていた出口に足を引っかけ、盛大に転んでしまった。

背中にいたはずのロゼが、少し離れた場所まで転がっている。

「ごめん、ロゼ!怪我は無いか?」

立ち上がったロゼは泥だらけになっていた。

「うん、怪我は無いと思うけど、泥だらけになっちゃったね・・・。」

魔法を掛けて、きれいにしてから怪我の有無を確かめる。

「大丈夫みたいだな。それにしても、ここはどこだ・・・。」

辺りを見渡すと、鬱蒼とした森の中だった。

地面は泥濘ぬかるみ、歩くたびに足が深くまで沈む。

「こっちよ!早く来なさい!」

ノームはお構いなしに、そそくさと飛んで行ってしまう。

「行こう、ダイク兄!ノームに置いて行かれちゃうよ!」

ロゼは汚れるのを気にすること無く、泥をはね上げながら進んでいく。

「なんなんだ。ここは・・・。」

ぼやきながら、ロゼの跡をゆっくりとついて行く。


「この先よ!ダイク、ロゼ、準備はいい?」

ノームが指差す先には、確かに魔獣木が生えていた。


その周りには、ウネウネと気持ち悪い動きをしているナメクジが大量発生していた。

「げっ、気持ち悪いな。なんなんだ、あの大きさは・・・。」

鑑定で見てみると、ポイズンスラグという魔獣のようだ。

ポイズンと名が付くくらいだ。

毒でも持っているんだろう。

「ロゼ、あいつらは毒を持っているかもしれない。攻撃は食らわないように、まずは魔法で攻撃を仕掛けよう。」

「うん、わかった!耳が無いのかな?ボクたちの声は聞こえてないみたいだね!」

姿を隠すことなく、普通に会話しているが俺たちに向かってくる気配はない。

「塩でも撒ければすぐに倒せそうだが・・・ダメだよな?」

ノームの方を向いて、一応確認をとっておく。

「バッ、ダメに決まってるじゃない!周りの植物たちまで死んじゃうわ!ダメだって分かってるなら聞かないでよね!」

「はいはい。じゃあ、まずは俺が魔法で攻撃してみるよ。ロゼはその後ね。」

「うん、わかった!」

ポイズンスラグの上空に岩の槍を作り、勢いよく落としていく。

あっさりとナメクジたちを貫通するが、それでもウネウネと動いている。

槍から外れようと動くが、ナメクジの体が裂けていく。

「・・・効いてるんだか、わかんないな。ロゼ、あいつら、火に弱いかもしれない。小さな火の玉を手前の奴に当ててみてもらえるか?」

魔法も上達してので、多少森に燃え広がっても大丈夫だろうと慢心していた。

「うん、わかった!」

ロゼが指先に集中すると、全然小さくない火の玉が出現した。

「ろ、ロゼ「いっけーーー!」」

止めようとしたが、あと一歩遅かった。

ロゼが大きな火の玉を投げると、ポイズンスラグに向かって勢いよく飛んでいき、火柱をあげて燃え盛る。

「熱っ!!」

熱風が俺たちまで襲ってくる。

ロゼを抱きかかえて、結界を張って中に避難する。

「あんた、強すぎるのよ!周りの木まで焦げちゃったじゃない!どうしてくれるのよ!」

魔獣木を残して、ナメクジたちは消し炭となってしまった。

「ろ、ロゼ。よ、よくやったよ。す、すごい魔法だったな。」

頑張ってくれたロゼを褒める。

「う、うん。ありがとう。」

ロゼにも予想外の威力だったのか、少し狼狽えている。


「ダイク、あっちの木が燃えちゃってるわ!早く消しなさいよ!あ~、あっちの木も・・・。」

魔獣木の側に移動して、木々の消火活動に勤しむ。

「ロゼ、俺は火を消してるから、ロゼは魔獣木を頼む!」

「うん・・・、ダイク兄、ゴメンね・・・。」

「気にするな。元はといえば俺がやれって言ったんだ。反省は後でしよう。」

「うん、わかった!」

消火作業に追われていると、上空から雨が降り始めた。

雨足はどんどんと強くなっていき、燃え広がりつつあった火の勢いが弱くなって、次第に完全に消火した。

「あ~、よかった~。ダイク兄、魔獣木は砕いてまとめておいたよ!」

安心からか、ロゼは腰を抜かしたように泥まみれの地面に座った。

「ありがとう、ロゼ。一時はどうなるかと思ったが、雨が降ってくれてよかったよ。さっさと回収して帰ろうか。」

まとめられた魔獣木のかけらを拾い集め、アイテムボックスへと入れていく。

座ったままのロゼを引っ張って起こす。

「また、泥まみれだな。」

ロゼの顔も、服も泥だらけだ。

「アハハ、ダイク兄もだよ!」

一息ついたからか、笑いが込み上げてきた。


「ノーム、ゴメンね!森は大丈夫だった?」

一通り笑い終わると、ロゼが妖精に謝った。

「雨のお陰で助かったわね!このくらいじゃ森は死なないわ!今度からは気を付けなさいよ!」

「うん、わかってる!ダイク兄、帰ろうか!」

森の一部は燃えてしまったが、ノームは大丈夫だと言った。

その言葉を信じて、ロゼと手を繋いできた道を戻る。

「ノーム、帰り道はどこだ?案内してくれ。」

初めてきた森で、どこから来たのかすらわからなくなっていた。


妖精の先導で、トレントまで戻ってくることができた。

「道を開けるわよ!少し離れて見てなさい!」

指示通り離れて見守ると、ノームがトレントに触れて何かを言うと、トレントの口が大きく開かれた。

「さぁ、帰るわよ!」

ノームを追いかけるようにトレントの口の中へと入っていく。

疲れているからか、抵抗なく入ることができた。

草木の生い茂る道に出るのかと思ったが、すぐに別の森に出たと分かった。

「なぁ、ノーム。ここはどこだ?帰るんじゃなかったのか?」

声を掛けたが、妖精はあたふたと慌てていた。


評価とブックマーク、ありがとうございます!

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