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クズの婚約者にさよならと制裁を  作者: 佐古鳥 うの


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青空お茶会へようこそ(前)

今日は3話更新予定です(1/3)

 


 パーティー当日、会場に赴くと一風変わった様相になっていました。

 話では広場を貸し切りソリッド商会が取引している商品の博覧会的な催しのはずでした。それがソリッド商会の物は隅に追いやられ、代わりに品のないオパルール()()()商品が並べられていました。


 しかもここは市民が集う公道。その通りすがりに楽しんでもらうはずが貴族達が我が物顔に歩き回り、往来にはカフェテーブルが置かれ市民の憩いの場が封鎖されていました。


 それだけではなく広場に入る道前には警備兵が立ち塞がり貴族以外入れないようになっていて市民は回り道をするか出掛けることを諦めるしかない状況でした。



「ゼブラ様。これはどういうことですか?」


 警備兵に招待状を見せ中には入れましたが憔悴しきっているトラッド様の傍らにいるゼブラ様に声をかけました。


「それがジルドレド伯爵様達がいきなり現れ、この広場を使うと言って私共を追いやったのです」


「ジルドレド伯爵?」


「以前贔屓にしていただいていたお家なのですがある時からパッタリと……その後はうちの商品は模造品だと返金しろと度々訴えられていて」


 今日の招待客リストには入っていなかったのですがどこからか聞き付けて広場を占拠したたとのことでした。


「ごめん父さん。俺が、コラール令嬢に逆らったから……」


「お前のせいではない。元々ソリッド商会は目の上のたんこぶと思われていたんだ」


 あら、あの男爵令嬢が関わっているの?


「裏をとっていませんがコラール男爵はジルドレド伯爵の寄子なので何かしらの訴えをしたのかもしれません。

 ジルドレド伯爵は男爵のご息女を自分の娘のように可愛がっているとのことでしたので」



 うちひしがれるトラッド様の言葉に驚きましたがあのご令嬢を奔放な娘にした人物を知ってしまい、虚ろな目になりました。

 あの男爵令嬢は殿方を洗脳する魔法でも持ってるのかしら。


 いくら見た目がよろしくても愛嬌があっても貴族としてのマナーは下の下。いつ排除されてもおかしくないほどまで増長しているのにそれに気づかず放置しているなんて。


 視線を配れば一番騒がしい席に例の男爵令嬢とアホの……いえ未来の側近の一部、それからジルドレド伯爵がいらっしゃいました。


 なるほど。人が良さそうな顔をしていますが性格が悪そうな雰囲気が出ていますね。



「ヴァン。あれを用意してちょうだい」

「かしこまりました」


 何を言いたいのかわかったヴァンは恭しく礼をとるとすぐに行動に入った。連れてきた使用人達もそれに続いた。


「ゼブラ様。店仕舞いにはまだ早いですから、もう少しお待ちになって」


「え?ですが」


 しょんぼりしている親子に声をかけるとアルモニカは前を向いた。



「あの方達に少しお灸を据えてあげましょう」


 しばらくするとヴァンが戻ってきた。どうやら今来ている貴族全員に『アレ』が行き渡ったらしい。


 近くのテーブルでは「とても温かいわ!近くに火などないのに!」と喜んでいる。それはそうでしょう。出来立てをお出ししたのだから。



「どういうことですか?」


「先日お見せした『コンロ』を使って温かいお茶をご用意しましたの」


「え、でも……あいつらを追い出してくれるんじゃ」


 不法に占拠しているのに何でお茶なんて振る舞うんだよ、と不満を露にするトラッド様にニッコリ微笑みました。


「ミクロフォーヌ様は一体何を振る舞われたのですか?」


「ただのお茶ですわ。ああでもそのお茶は健康志向で体の老廃物を押し流す作用がありますの」


 まさか毒では?と内心危惧しているゼブラ様にアルモニカは扇子を広げクスクスと微笑んだ。

 そんなわたくしを見たゼブラ様は大きく目を見開くと「な、なるほど!」と言ってまだムスッとしている子息の耳を拝借しなにやら話し込んでいた。


 振る舞われたお茶はそれほど待たずに効果が現れ、『魔法が使えない魔法使いなどただの役立たず。さっさと田舎小国に逃げ帰ればいいのに』と近くの席で囁いていたご令嬢達が最初に立ち上がった。


 顔を赤くして汗を吹き出させたご令嬢達は素早く席を離れるとトイレは何処かと侍女に聞いていましたがその者はわたくしの侍女。

 案内するために離れて行ったけど恐らくトイレには辿り着けないでしょう。わたくしへの悪口を彼女も聞いていましたし。


 殺気が駄々漏れでどうしようかと思いましたが…さすがに暗殺はしないわよね?釘を刺しておくんだったわ。


 他の貴族も立ち上がる度にわたくしの従者に声をかけ広場から離れていった。



 何人かは帰ろうとしているけど馬車が置いてある道は市民で埋められているので出るまで時間がかかりそう。

 警備兵に文句を言っているようだけど市民の声の方が大きいから別の道を行こうとして同じことを繰り返している。無事に出れるといいですわね、と眺めました。


 あとは騒がしい男爵令嬢達がいる席だけになりました。


 あそこは話が盛り上がってなかなかお茶を飲まないから時間がかかっているみたいね。



 全員口にしたことを確認してからわたくしはその場に向かいました。


「おや、どちら様かな?」


 先に気づいたジルドレド伯爵が愛想よく此方を見たので他の方々も此方を見ました。

 あら、何であなた方友好的な顔でわたくしを見てますの?もしかしてわたくしがアルモニカだとわかってない?


「やあ。誰の知り合いかな?」


「お前か?最近仲良くなったご令嬢がいると言っていただろう?」


「えー!うそー!ランドルってば浮気ぃ?アタシ悲しいんだけどぉ」


「パルティーの前でやめろよ!誤解しないでくれパルティー。僕は君一筋だよ!」


「はははっ天才と謳われた公爵家のランドル君もパルティーの前では形無しか」


「ジルドレド伯爵。冗談になりませんよ。パルティーに嫌われたら僕は生きていけないんですから」


「もっともだ!はははっ」



 心底困った顔で胸を押さえるのはランドル・フィクスバール公爵令息。

 父は丞相で少なからず関わりがあるのですが、そうでなくとも王子の側近として接触したことが多いはずなのにわたくしを見ても顔を歪めたり嫌味を投げて寄越さない。本当に気づいていないようです。


 彼らは男爵令嬢を中心に楽しそうに笑っていましたが蚊帳の外にいるわたくしを立たせたまま椅子を譲ろうとしないのでコホン、と咳払いをしました。


「ああすまない。話に盛り上がってしまってね。他の席は……おや誰もいないのか。それで寂しくて此方に来たのかな?誰か!このご令嬢に席を用意してくれ」


 一応公爵令息に確認してからジルドレド伯爵は椅子を持ってこさせようとした。しかしそれを許さない者がいました。



「え~っそうやってアタシを除け者にする気ぃ?アタシ寂しいんですけどぉ」


「そんなことないさ。パルティーは僕達の間に座ってるだろう?そしてキミをずっと見ている。これ以上に何が欲しいんだい?」


「手をぎゅっとしてほしいな。他の人に盗られたくないもん。二人はアタシにメロメロだって見せつけなきゃ」


「参ったなぁ。本当はどちらかを選んでほしかったのに」


「しょうがないさ。僕達のお姫様のご要望だ」


 視線だって向けちゃやだからね!と頬を膨らませて幼女のように我が儘を言う男爵令嬢に彼らは文字通りメロメロだ。何か盛られてるんじゃないかしら。

 そんな疑いを持ちたくなるくらい異様な光景に笑みを浮かべたまま持ってきてもらった椅子に座ろうとするとヴァンに止められた。



「あらどうしたの?」

「ひとつ椅子の足が弱っています。座ると折れてしまうかと」


 あら、嫌がらせかしら。チラリと椅子を持ってきた従者を見れば彼はジルドレド伯爵をチラチラ見ながら萎縮している。

 当のジルドレド伯爵は素知らぬ顔でお茶を楽しんでいました。知らずに折れた椅子から転げ落ちたわたくしを見て男爵令嬢達と笑うつもりだったのでしょう。


 相手もよく知らずに年若いわたくしに対して随分と傲慢なものね。普通ならば伯爵は慌てているところよ。

 彼も情けをかける必要はないみたいね。


 自分達の話に盛り上がっていたお陰で男爵令嬢に見つからずに済んだヴァンは椅子を交換するとそのまま後ろに下がった。わたくしの侍女達が戻ってきたみたい。



 後ろに控えさせるとわたくしは扇子を出し広げて見せた。少し大きめに音を立てたので伯爵が不快そうに眉を寄せ此方を睨んできたのでニッコリ返してやる。


 それを見て伯爵は訝しがったがわたくしの扇子に気がつくとみるみるうちに顔の色をなくし、大量の汗を吹き出させていた。良かったわ。少しは世間を知っているようで。


「まだ自己紹介をされてませんが、わたくしからいたしますわね」


「あ、いえ、私からご挨拶を」


「わたくしはアルモニカ・ミクロフォーヌと申します。これでも侯爵家ですのよ」


 慌てた伯爵を無視して自己紹介すれば伯爵の顔は真っ青になった。

 上位から挨拶するのは侮られる要因になりうるけどこれは無礼にあたる行為。アルモニカ・ミクロフォーヌは王子の婚約者で侯爵家なのは周知の事実。フランクに対応していい相手ではありません。


 そしてわたくしの持ち物で更に不敬な態度ではいられないと気づいた伯爵は自己紹介した上で頭を下げた。


「も、申し訳ございません!ミクロフォーヌ様とは気づかず」


「は?ミクロフォーヌ?」


 名前に気がつき此方に視線を寄越してきた三人はアルモニカを再度見て目を見開いていた。


「嘘!全然別人じゃん!」

「な、なな、何で?お前がこんなところに?!」


「いやその前に、その格好はなんだ?!ミクロフォーヌといったら髪をひっつめた地味で流行遅れなドレスしか持っていない貧乏令嬢でしょう?!」


「化粧のセンスも色もドレスの形もまったく理解していない田舎小国のエクティドが何で?!誰かの間違いじゃないのか?」


 そんなお前が何で?!と大騒ぎしてますがまず腕輪で気づいてほしかったですわ。


 それにメイクとドレスを変えただけなのにそこまで驚くことかしら?頬を赤くして此方を見てる令息の視線も少し気持ち悪いですし、引きつった顔で笑みを見せる男爵令嬢も怖いですし早く効果が現れてほしいわ。


「え、え~っ本当にアニーさんなの?全然わかんなかったよぉ。アニーさんってば()()()お洒落に目覚めた感じぃ?

 …ていうか、おじ様!いつまで頭下げてんの?頭に血が上っちゃうじゃん!ほら頭上げてアタシと一緒に楽しも!」


「…誰が頭を上げていいといいました?ジルドレド伯爵」


「は、はい!申し訳ございません!」


 男爵令嬢の言葉に頭を上げようとした伯爵をピシャリと叱りつけ頭を元の位置に戻させました。それを見て顔を歪めたのは勿論男爵令嬢でした。


「ええ~っアニーさん性格悪ぅ~い!アタシのおじ様を苛めないでよぉ!何様ぁ?」


 侯爵令嬢様ですが何か?


「ところでランドル・フィクスバール公爵令息」


「なんだよ。僕はお前に名を呼んでいい許可を与えていないぞ」


 男爵令嬢の声に被せるように令息の名を呼べば彼は不快そうに顔を歪め睨み付けてきた。

 そうそう。彼はこうやってわたくしを見下していたわね。


「初対面の時に許可はいただいているわ。好成績を修めてるあなた様がもうお忘れになったの?

 それに今はまだディルク殿下の婚約者でもあります。王家の婚約者に対してまだ準貴族のあなたの態度は不敬じゃないかしら」


「はあ?お前だって名ばかりの婚約者だろう?!」


 本当、予想通りの行動をしてくれるわ。

 だから此方も堂々と返すことができる。


「無礼者!わたくしはオパルールの国王に認められた正式な婚約者ですのよ!そしてこの国ではわたくしは侯爵家当主!

 あなたのような準貴族に名ばかりなどと揶揄される謂れはありません!!あなたの態度がご自分の家を貶めているとお気づきにならないの?」


 後ろからただならぬオーラを感じるわ。侍女達ね。そういえば直接わたくしが罵倒されているところを初めて見るのかしら。


 魔力の圧力(プレッシャー)を相当充てられているというのに令息は顔色悪くもまったく動じていない。もしかして魔力がないのかしら。

 それとも防御アイテムでもつけてる……わけないわね。オパルールにある魔法に関するアイテムは古代遺物のような古めかしいものしかないし。それをこのお洒落な令息達がつけるわけがなかったわ。









読んでいただきありがとうございます。

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