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クズの婚約者にさよならと制裁を  作者: 佐古鳥 うの


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37/52

ハリボテを剥がすヴァン (後)

ハリボテの王子様の続きです。

時間軸はアルモニカ休学中です。

ほぼヴァン視点です。


本日は二話更新です(1/2)

 


 そんな不安渦巻く中、国王は王子達を呼び寄せことの次第を告げた。そこには最初の人数よりも二人減っていたがあの男爵令嬢がいないお陰で話は大分スムーズだった。


 だがさすがに王妃が捕らえられたと知った王子はとても動揺していた。

 動揺し過ぎてあの子供の落書きのような刺繍のドレスを売って辺境伯領を買い戻そう!などと妄言を言い出した。


 ドレスの持ち主は王妃ではないと懇切丁寧に丞相が教えると他の令息達も顔面蒼白になっていた。ドレスの価値はわからずともスネイル団は知っているのだろう。


 王子だけは平民は平民だろう?とバカなことをぼやいていたが。国境にいるランクBクラスのモンスターを何体も倒し続けられるか?と国王に問われやっと黙り込んだ。



『貴様達を呼び寄せたのは他でもない。まだ帝国側に預けられているジルドレド伯爵を逃したそうだな?』


 そして話し合い中にやってくれたオパルール側の不祥事に王子の側近達は萎縮した。一人はすでに父親である騎士団団長に捕らえられており、この会合が終わり次第息子に罰を与えるらしい。


 残った側近達にも罰を与えるのかと思われたが、丞相の進言で騎士団団長の子息の単独で片付けられた。


 国王もあっさり承諾したので側近達はホッと胸を撫で下ろしていたが、付き合いがそれなりにある仲間が代わりに罰せられるというのに呑気なものだなと冷めた目で眺めた。



 逃がされたジルドレド伯爵だがクエッセル元侯爵家の敷地を出るまでもなくオパルール王国騎士団に捕まり、確認のため面通しされた際は顔は腫れ上がり喋る元気もないほど弱っていた。


 それを見た王子達は悲鳴をあげ男爵令嬢にどう告げればいいんだと世迷言を呟いていたが、折角バカな親がバカな息子達を庇ってやったのに水の泡にする気か?と心の中でぼやいた。


 あの愚か者達は男爵令嬢にいいところを見せたくてジルドレド伯爵を逃がしたのだと自供していることに気づいていなかった。


 特に王子は辺境伯領を占領されたのにまだ理解できていないのか。そこにいる約二名ほど成績がトップクラスらしいが王子と一緒で詐称しているんじゃないかとさえ疑った。



 判別不能なほど傷つけられたのはジルドレド伯爵の商会被害に遭った者達に見つかったせいだった。被害者が多く王宮勤めの者にも被害が及んでいたのだ。


 怒り狂いそうな気持ちを仕事だからと我慢していたのに男爵令嬢が気まぐれでジルドレド伯爵を解き放ったせいで、また逃げる気かと追っていた者達から過剰な手段で取り押さえられたらしい。


『たす、助けてくださ……ディルク殿下…!パルティーとのよしみで一緒に偽物(商品)を売った仲じゃない、ですかぁ』


『はぁ?し、知らん!知らん知らんぞ!!そんな犯罪など王子である僕がするわけないじゃないか!!!』


 魔法でジルドレドの視線をディルクに向けてやると彼は呻きながらも必死に叫んだ。その声は部屋にいる者全員の耳に入り王子は慌てふためいた。

 帝国側にはすべて筒抜けになっているので必死になって弁解している王子は滑稽でしかなかったが。



『貴様達が……エドガードがバカなことをしなければジルドレド伯爵はこのように不要な怪我をせずにすんだのだ。

 この混乱でオパルールは人一人閉じ込めることもできず、警備も杜撰で、統率も取れない愚か者達がいる国だと知らしめてしまった。

 関わった者としてそのことを深く反省するがいい』


 この件で騎士団団長は責任を取ると申し出たが責任はジルドレド伯爵にあるとして脱獄を幇助した者達への追及は打ち切られた。


 外から見れば愚かな王子が側近達とバカな男爵令嬢を囲い好き勝手させたのが悪く、ジルドレド伯爵に意図せずにしても犯罪に加担していたというならそれなりの責任を王子に取らせるべきだろうに国王はそれをよしとしなかった。



 自分が国王ならルシェルシュ騎士団団長の息子一人にすべての責任を負わせたりしないだろう。こんな結果で彼の忠誠心が今後も続くと思っているのだろうか。


 自分ならナタシオン侯爵と同じ轍を踏まぬように昇級させるなり、ルシェルシュ伯爵の他の息子達と王家派の高位貴族の令嬢を婚約させるなり、子息の罪状を王子が引き受け軽くするなりして囲い込みを徹底させる。


 処罰を()()()()騎士団団長(父親)任せで放置なんてあってはならないことだ。



 そしてジルドレド伯爵は貴族籍を剥奪後平民として裁判にかけられ公開処刑されることがその場で決まった。

 処刑されるというのに王子達はホッとしていて他愛ないものだなと呆れた。


 自分達が加担したことを闇に葬れると安堵しているのだろう。残念だが裁判は帝国が介入しすべて白日のもとに晒されることが決定している。


 考えの甘い王子達にヴァンは一石を投じた。


 諸悪の根源である男爵令嬢を野放しにしておく理由はないだろう?ということでコラール男爵令嬢とジルドレド伯爵が縁戚で、脱獄の手引きを促したのは彼女では?と匂わせてやった。


 どうせならあの男爵令嬢を卒業前に消してやりたい。アルモニカの心を煩わせる害虫なのだ。

 できることなら此の世から消してやりたいくらいには存在が邪魔だったが、類は友を呼んだ同じ害虫達がこぞって男爵令嬢を庇いだした。


 エドガードの尊い犠牲が損なわれるとかなんとか、それが彼にとっての忠誠心なのだとか男爵令嬢は悪くないとしきりに叫ぶので『ああ、この国は終わったな』と思った。



 国王は王子達に同意はしなかったが男爵令嬢やコラール男爵に対しての話には言及しなかった。


 男爵家など労せずにどうにかできるだろうに王子の想い人だからなのか自分が真実の愛を貫いたからなのか、あれだけアルモニカの扱いについて指摘したのにも関わらず容認する素振りを見せる態度に腹が立った。


 なので帝国側が知らぬだろうとタカを括って黙っていたことつついてやった。


 話し合いの最中オパルール王国側の控え室に使っていた部屋から四人の令息令嬢が勝手に抜け出し隠密行動をしていたこと。

 その報告を帝国にしていないがオパルールはどういった経緯で許可したのか。何をしていたのか、させていたのか。もしや帝国を貶める算段でもあったのか。


 ジルドレド伯爵を見張っていた見張り役に丞相の息子が金を握らせていたことも確認していると不機嫌を露に伝えると、国王は慌てて平謝りした。


 そんなつもりはなかったと繕った国王は王子に再教育という名の謹慎を、側近達に半年の奉仕活動、男爵令嬢は修道院行きが言い渡された。


 勿論その裁定に王子達が抗議し、帝国側は嘲笑した。

 国王が下した罰を、しかも婚約者でも何かしらの功績があり有名でもないただの男爵令嬢が修道院に行くのを不服としたのだ。

 しかも国内だけではなくデヴァイス帝国がいる前で。


 王子達は常日頃から不満があれば誰にでも抗議し我が儘を押し通してきたのだろう。

 侯爵令嬢であるアルモニカと男爵令嬢の扱いがあべこべになっていても誰も指摘しないのはバカをバカのまま野放しにし続けてきた結果だ。


 とてつもない屈辱と辱しめだな、と自業自得の国王を眺めていると彼は顔を真っ赤にして『国王は儂だ!国王の言葉は絶対だ!変えはせぬ!!』と叫んで逃げるように部屋を出て行った。




 ◇◇◇




「しかし良かったのか?もう少し強く押せばミクロフォーヌ嬢の不釣り合いな婚約も無効にできたぞ」


「それではデヴァイス帝国側に対して多少なり遺恨が残るでしょう。アルモニカ様もそこまではお望みでないはずです」


 物思いに耽っていたらそんな風に声をかけられたが丁重に断った。

 押せば倒れてしまいそうな政権だが帝国に手間をかけさせるわけにもいかないし借りを作るわけにもいかない。


 帝国にはまだ話していないがオパルール王国は内々に遺物を掘り出し国を強固にする準備を続けている。

 古代遺物は強力な上に扱いが難しいから帝国はオパルール王国を脅威と見なしすぐさま侵略を始めるだろう。

 オパルール王国の国王が対等ではなく立場をひっくり返したいと願う野心家と見抜いているからだ。


 アルモニカが出て行った後は好きにしてくれていいが、出て行くまでは彼女主導でこの国に責任を取らせたい。


 そのために今は肥え太った贅肉を削ぎ落としているのだから。



「どうせ我らは彼奴らにとって戦が好きな蛮族でしかない。今更いい人ぶっても変わらぬだろうよ」


「温かいお言葉、痛み入ります」


 この国が生きるか死ぬかはアルモニカが決めることなのだ。

 その意図を嗅ぎ取った帝国側は軽快に笑うと何かあれば頼ってくれとヴァンの背中を叩いた。



「ミクロフォーヌ侯爵令嬢も重い腰を上げてくれて良かったな。我々もヒヤヒヤしていたのだ」


「焚き付けたのはお主か?見届け役も大変だっただろう?」


「いえ、アルモニカ様と過ごす時間は有意義でとても充実していました」


 本当のことを告げただけなのに帝国の者達はニヤニヤ笑って「若い者はいいなぁ」とまた背中を叩いてきた。いや、執事としての仕事の話なのだが。



「これだけ頑張っているんだからミクロフォーヌ嬢もさぞお喜びになるだろうな!褒美をちゃんと考えておけよ」


「いえ、そういったものは特に…アルモニカ様が幸せになってくださればいいので」


「っかぁ!これだからボスタール一族は生真面目でいけない!仕事ならもっと欲を出した方がミクロフォーヌ侯爵令嬢も喜ばれると思うぞ!」


「…え、いえですが…」


「もっと自分を出さんとご令嬢もどんな褒美を与えれば良いかわからぬと悩むかもしれぬぞ。使用人に優しい主人は臣下の人となりまで配慮してくださる方が多い。

 人を見抜くにはミクロフォーヌ侯爵令嬢はまだ経験が浅いだろうからお主から歩み寄る方が得策だと俺は思うがな」


 そういうものだろうか?別に褒美が欲しくてしてるわけではないしアルモニカのためになるから動いているだけだ。


 だけど。



「そうそう。さっき内々にあちらの騎士団団長に引き抜きの打診をしておいたが問題なかったか?」


「…はい。問題ありません」


 どうやら忠誠心が揺らぐと見てルシェルシュ伯爵に声をかけたらしい。抜け目がないことだ。


「どうせならあのバカ王子とパルティーとかいうあのとんでも娘を結婚させればいいのではないか?あの王子ではオパルールも後がなかろう」


「ズーラ帝国やルダンブル王国も侵攻の機会を伺っていることだし、いっそ言葉通りに属国に戻してやるか」



「だが本命の魔法学校は後宮になりすべてが砂となったのだろう?時期を見誤ればその慰謝料も我々帝国が支払う羽目になるぞ」


 それは困るな!と笑う帝国の会話はどこまでも軽い。力関係でいえばデヴァイス帝国の方が近年突出しているからその余裕が見えるのだろう。

 いざとなれば黙らせられる自信があるということだ。


「だが最後まで使えぬ国だなまったく。エクティド王国も早々に手を引かれた方が良いぞ。

 正しい見方もできない者共ではいくら宝があってもゴミと同じ扱いになってしまう」


「宝の持ち腐れとはこのことよ」


「ミクロフォーヌ侯爵令嬢を四年も五年も飼い殺しにしていたのだ。一目瞭然だろう。バカにつける薬などなかったのだ」


 苦労するだろうが頑張れよ、と去っていく帝国側にヴァンはふぅ、と息を吐いた。



 この四年間、主人であるアルモニカを見てきたが落ち度らしい落ち度はなかった。あったとすれば我慢強くそして少し優しすぎたくらいだろう。


 年数だけで見ればそこまで長くはないが少女として楽しく過ごせる時間を、魔法を更に躍進させる研究期間をオパルール王(この)国で無駄に消費させられたのだ。

 しかも瑕疵を厭わず費やした時間もお金も不意にしてまで、すべてを捨てて国に帰ると決められた。


 それがどれだけ辛く悲しい選択を迫られ思い悩んだことか。男のヴァンにはわからない、計り知れない屈辱だろう。



 胸ポケットから取り出したのは一枚の栞だ。栞の中央には白い花(パーヴィ)が押し花として飾られている。

 それを優しくなぞったヴァンは愛しげに目を細め再び胸ポケットへと仕舞いこんだ。


「貰えるのなら褒賞よりも褒め言葉の方が嬉しいかもしれませんね」


 思い浮かべた微笑みにつられるように微笑んだヴァンはそのまま歩きだし、そして移動魔法で姿を消した。







読んでいただきありがとうございます。

次から戻ります。

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