ハリボテの王子様 その10
王子側の話続いてます。お花畑とご都合胸くそも続行中。
時間軸はアルモニカ休学中です。
いや待て。それはおかしくないか??殴られるようなことをしたのはパルティーだろう?
確かに王妃はヒステリーを起こして手を上げてしまったが、家族が、国境の砦が帝国に奪われたんだぞ??
それなのに茶化すように水を差したのはパルティーだ。王妃が怒る方が妥当に思うのはおかしいのか?
連れてきたディルクに責任はあるが、あの殺伐とした状況を空気を読まずに話しかけてきたパルティーにだって問題はあるはずだ。
そう、パルティーにも問題があったのだ。
「……ディルク殿下。パルティーさんに何も説明していないのですか?」
もしかしてパルティーってちょっと変なのか???
と困惑していると夫人に問われ無言で返した。それを是と受け取った夫人は溜め息を呑み込み女性騎士に合図した。
「そうだわ!きっとそうよ!このおばさんはお義母様がアタシに嫌がらせをするためだけに雇ったんだわ!!婚約者じゃなくなったアニーさんをいびれなくなったからアタシにターゲットを変えたのよ!!
ディルクお願い!早くお義母様に言ってこの人を解雇してもらって!アタシが殺される前に!!」
「おば?!いや、そ、パルティー?何を言って…」
「そうよね!解雇だけじゃ足りないわよね!!このおばさんを捕まえて牢屋に入れちゃえばいいのよ!
王太子妃になる素晴らしいアタシを泣かせるまで苛めたんだから処刑されたって文句言えないんだから!!ね?ディルク!こんなおばさんやっつけちゃってよ!!」
「いや、……パルティー?お前、何を言って」
今まで訂正しなかったがどんどん細くつり上げる目にディルクは脂汗を吹き出させ喉がカラカラになった。
まだ王太子になれていないし、国王に命名されていないのに王太子と名乗ることはタブーとされている。
仲間内やよくわかっていないであろうアルモニカの前なら自慢気に振るっていた権力もレゼクトゥール夫人の前では恥の上塗りにしかならず、パルティーが叫べば叫ぶほどディルクは悶絶するほど恥ずかしく居たたまれない気持ちになった。
「……何を悲劇のヒロイン気取りに叫んでいるのですか。授業くらいで死ぬわけがないでしょう。むしろ教養を身につければその王太子妃とやらになれる可能性があるかもしれませんよ」
「う、嘘よ!!そんなの習わなくたってアタシの可愛さは損なわれないわ!」
「損なわれなくても国の上に立つなら必要なことですよ。ディルク殿下の母君である王妃様も、ディルク殿下の婚約者であるアルモニカ様もマスターされているのですから」
「……え?」
王妃教育が遅れに遅れているアルモニカが?
「?何を仰っているのですか?アルモニカ様の王妃教育は残り僅かだと聞いておりますよ。
その残りも教師や王家の都合で先送りにされているとか。アルモニカ様に問題があるわけではありませんよ」
え?そうなのか??聞いていないぞ??
さっきから更新されるアルモニカの話にディルクは大混乱だった。
落ちこぼれかと思いきや成績良好で、エクティド王国での功績も嘘ではなかった。そして魔法は使えないが王妃教育をこなしほぼ修了間近……。
そこであることを思い出した。
アルモニカはあの時『魔法制御装置』とあの腕輪を掲げていなかったか?
眉唾物の昔の遺物で国宝のひとつだったが本物かどうかまでは知らなかった。ただクエッセル元侯爵が魔法制御装置だと言っていたからそうなのだろうと思っただけだ。
自分より下でなくてはならないと思っていたからディルクは『アルモニカは魔法が使えない』と言い張っていたが、遺物のせいで本当に魔法が使えなくなっているとは思っていなかった。
鍵を知っている誰かがそのうち解除するものだと思い込み、そして使えなくしていることを忘れていた。
まあ、貴族だから魔法が使えなくても問題ないだろうが。そんな気持ちが更に記憶から追い出す結果になったのだろう。
もしアルモニカに魔力があるとなれば祖父の遺書通り結婚しなくてはならなくなる。
結婚できる条件も資格もあるのだ。それもあってアルモニカは僕とパルティーの仲を見せつけても自信満々に僕の婚約者でいられたのだろう。
だがそうなると困ったことになる。
僕は真実の愛で結ばれたパルティーを捨ててアルモニカと結婚できるのか?
見た目はまったく好みではないが、僕のために頑張ってきた努力もあっただろう。
それにデヴァイス帝国の話が本当ならアルモニカは魔法で有名らしいから名声も金も持っているはずだ。
それを僕のために使うというなら結婚する価値があるかもしれない。
クエッセル元侯爵のせいで失墜した魔術師団の威光を取り戻せるかもしれない。
エクティド王国に帰ると言い出したのもそう言えば僕の気を引けると捻り出した苦肉の策なのだろう。
帰れば瑕疵がつき貴族令嬢が一生結婚できなくなるということを僕が知らないと思っているのだ。言うだけ言って帰る気もないくせにまったく浅はかな女だ。
そういえば我慢しないというのも、言葉の裏を読めば僕への想いを我慢しないという意味なのだろう。
僕のためなら魔法を使い僕の役に立ってみせる、だからわたくしを捨てないでほしいという訴えなのだ。
これでパルティーの半分以上の魅力があれば可愛がってやってもいいのだが………まあ、政略なのだから仕方ないか。
オパルール王国の政敵である帝国の皇后から扇子を秘密裏に貰っていたのは業腹だが、裏を返せばアルモニカが頼み込めば辺境伯領も無料で戻ってくるということだろう。
アルモニカの奴め、自分の使い道をわかっていなかっただけじゃないか。
結婚することで父と祖父の願いを叶え、辺境伯領を取り戻し、帝国をアルモニカの魔法で屈服させればオパルールはもっと飛躍し豊かになるだろう。
そのついでに子でも作ってやればアルモニカも喜ぶはずだ。子供は愛がないと作れないからな!僕似の魔法使いなんて最高に格好いいじゃないか!
魔法学校がどうのとも言っていた気がするがアルモニカが自分の子供に教えれば満足するはずだ。
王子妃が教鞭に立つなど醜聞でしかないし平民や他の貴族にも教えてやる義理はないだろう。
学校など作って帝国などにオパルールの財産になりうる知識を分け与える義理もないしな!はっはっは!ざまぁみろ!!
まだ魔法学校の資金が残っていたら僕とアルモニカの愛の巣でも作ってやってもいいな。
僕のために随分持ってきたはずだからそれくらいは残っているだろう。愛の巣作りはアルモニカも欲しがっていたからな。
だがそうなるとパルティーとの結婚は難しくなるな。
アルモニカは正妃じゃなくても僕と結婚できるなら側妃でもいいと言うだろうが、パルティーは絶対側妃なんて嫌だと言うだろうな。
まあハーレムを作ることだしパルティーにはバレないように番号を誤魔化せはなんとかなるだろう。
アルモニカも親友のパルティーがいた方が嬉しいはずだ。そんな親友同士で取り合っているのが僕なのだが……フッ魅力的過ぎるのも問題だな。僕はなんて罪作りなのだろう。
なんとも見当違いな妄想に酔いしれながらディルクはアルモニカは自分に惚れ込んでいるとなぜか一ミリも疑わず信じきっていた。
それにレゼクトゥール夫人のお墨付きが貰えれば王妃にも認めてもらえるかもしれない。
僕のためにもパルティーには頑張ってもらうしかない。
安直で愚かしい妄想で納得したディルクは夫人にパルティーを託すと彼女は恭しく礼を執った。素晴らしく美しい礼だ。
そういえばパルティーはここまで美しく礼ができなかったな。
マナーもぞんざいだったような?
ダンスもおんぶに抱っこで体力もまったくなかったし、そのくせ踊りたがりでよく足を踏まれたっけ。
あれ?そういえばカップもよくカチャカチャさせるしテーブルの上に肘を乗せたり、わざと胸をテーブルに乗せて寄りかかったりしてなかったか?
背凭れに寄りかかっては『もう入らない~』ってお腹を擦ったり、笑い過ぎてクッキーの欠片をよく飛ばしてなかったか?
ヒールを脱いで僕の足を擦ったり、エドガードに揉ませたりテンションがあがり過ぎてバシバシ背中を叩かれたりしなかったか?
あれ?パルティーってマナーや教養を本当に習ってきたのか??
あれ?と一抹の不安を抱きながらも泣き縋るパルティーを見たディルクは雑念を全部吹き飛ばして笑みを作った。
「いや、嫌よディルク!見捨てないで…!」
「大丈夫だパルティー。夫人は君を立派な淑女にしてくれる。そしたらきっと母上も素敵なパルティーを見て僕達の関係を認めてくださるはずた」
「ディルク……でも、でも」
「そのためにもほんの少し頑張ってほしい。僕達の未来のために」
パルティーの前に膝をつき手を取ったディルクはプロポーズと同じように手の甲にキスを落とした。
それをパルティーは頬を染め潤んだ瞳でうっとりと見下ろしていたが、それを壊すようにランドルとリュシエルも膝をつき「僕達のために頑張って」と同じくキスをした。
その光景を女性陣は引きつった顔で見ていたがあえて突っ込まず傍観していた。内心何この茶番、と思っていたのは言うまでもない。
逃げられないように両側で固められながらパルティーはクエッセル元侯爵家を後にした。
その際もディルク達は引き裂かれる主人公とヒロイン張りに役者のような演技で別れを惜しんだが、お花畑の面々以外はうんざりとした顔で見送った。
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