ハリボテの王子様 その5
王子側の話続いてます。お花畑とご都合胸くそも続行中。
時間軸はアルモニカ休学中です。
本日2話更新予定です(2/2)
そんな、そんなはずは。王子が目を泳がせながら反芻していると帝国側が動いた。
「ちなみに此方が皇后様から下賜された扇子の代わりに贈られたものです」
薄気味悪い黒髪の男が差し出した箱の中には子供が使うような稚拙な扇子が入っていた。
そんなもの知らない!と聞かれる前に叫んでしまったが、ディルクの従者の証言で言い逃れができなくなってしまった。
従者も少な過ぎる予算を駆使してわざと似合わないものを買ったのだそうだ。そんなの頼んでないと叫んだが誰も信じてくれなかった。
「………じゃらじゃらと品のない扇子だな。
しかもこのデザインはコピー商品じゃないか。宝石ではなく質の悪いガラスを使うなど、オパルール王国は財政事情が余程逼迫しているらしい」
「やはり皇后様から下賜された扇子を売るつもりなのではないのか?なんとも命知らずな話よ」
「オパルールの王よ。貴殿の息子は……いや貴様達はエクティド王国がなぜミクロフォーヌ侯爵令嬢を寄越してきたのかまったく理解していなかったのだな」
「「「……え?」」」
「ミクロフォーヌ侯爵家が魔法技術研究機関の最高責任者なのは知っているな?そしてミクロフォーヌ侯爵令嬢は父君の指導を受け幼い頃から魔法技術を習得していた。
数年前までは開発にも関わり簡易移動結界という素晴らしい魔法を発表し冒険者や災害地域でも大いに役立っている」
魔法技術研究機関???なんだそれは。聞いたことがないぞ。だが移動する結界の話は後宮の時にルダンブル王国の王女から聞いた。アルモニカのやつ、なんで僕にちゃんと話さなかったんだと勝手な言い分で愚痴った。
「そのミクロフォーヌ侯爵令嬢が次に目を付けたのは魔法を扱いきれず暴発などで不慮な事故を起こす平民への魔法教育だ。
いくら魔力が弱いとはいっても生活魔法を扱えるくらいはある者がほとんどだ。生活魔法があればいろんな場面で役立ち生活向上、国の豊かさにも繋がる。
魔法は貴族だけのものではない。そしてその知識は貴様達のためでもあったのだぞ」
下らない。こいつらは何を言っているんだと思った。
平民に暴発するような魔力があるはずないじゃないか。それになんか凄い肩書きを持っているがアルモニカはオパルール王国では魔力が使えない役立たずだ。
それなのになぜこいつらは魔法が使えるような素振りで話しているんだ?アルモニカの話ではないのか?
魔法に関して正しい評価をされていない(できる者がいない)ディルクは未だ魔法成績が上位だと勘違いしていた。
「やはりオパルール王国は一度解体してしまった方がよいのではないか?そこの王子とやらに次期国王になれる資質があるとは思えぬ」
「そもそもとしてミクロフォーヌ侯爵令嬢に釣り合わぬのではないか?自分が劣っているからこそ聞いたこともない家の小娘と結婚したいとなど言っているのだろう?」
ちょっと待て。なんでそうなる?貴様達蛮族に言われる筋合いはないぞ!
カッとなった王子はガタガタと音を鳴らして立ち上がると帝国側に掴みかかろうとしたがその前に膝から崩れ落ち勢いよく尻餅をついた。
意識はしっかりしてきたが体はまだ弱ったままだった。
なのでテーブルに手を掛け睨みをきかせれば薄気味悪い黒髪の男と目が合い慌てて隠れた。
あれ?なんで僕は隠れた?と思ったが目があった瞬間本能的に殺されると直感したことを遅れて理解し、更に遅れて体が震えあがった。
「そ、それは此方の事情です!過ぎた言葉は控えていただこう!」
王子の異常に慌てて丞相が入ったが体裁合わせ程度で大した威嚇にもならなかった。
「そうはいうがミクロフォーヌ侯爵令嬢は我々とも縁があるご令嬢だ。皇帝様の覚えめでたく皇后様からもくれぐれもよろしくという言伝もある。そんな方のお立場を憂い心配するのは至極当然だろう?」
「だとしても敬意を持って話していただきたい!此方はオパルール王国の王族だぞ!」
こっちは王家が相手してるんだぞ!と圧をかけてきたが帝国側は鼻で笑っただけだった。
「ならば問おう。貴国の王子は婚約してから何年経った?
ミクロフォーヌ侯爵令嬢の功績をいくつ知っている?仲の良い友人は?好きなものは?
誕生日に何を贈った?それ以外のプレゼントは?何度エクティドに帰還させた?貴様達は子を心配する親の気持ちがわかるのか?」
「!!それは、その……」
「わからぬだろうな。預かったご令嬢を一度も家族の元にも帰さず、家族を国に招待もせず、それをいいことに結婚を遅らせ、結婚してないからと王宮に住まわせないのだからな」
なぜ帰国させていないことや王宮住まいじゃないことを知っているんだとディルク以外のオパルール側が顔を引きつらせた。
情報統制して手紙を細かくチェックしているのだから帰国などさせたことがなかった。申請が出てもなかったことにしたり難癖をつけては突き返していたのだ。
その処理をしていた丞相は顔色を一層悪くし、目を泳がせた。孤立無援にさせて頼れるべきはオパルール王国しかないと錯覚させようとしていたのだ。
それだけではない、と国王は唾を飲み込んだ。デヴァイス帝国はオパルール王国に間者を忍び込ませ綿密に調べ上げている。それがどれだけ恐ろしくオパルール王国を窮地に立たせているか脂汗が吹き出た。
しかも先程帝国は王妃の使い込みを看破していた。そして目録を再度覗き込めば王妃の私物がほとんどない。
まさか宝物庫のものを模造品と入れ替え、宝石や貴金属、ドレスを購入するために使ったのでは?と行き着き王妃を見た。
王妃はそんな目で国王が見ているとは知らず辺境伯領をどうにか取り戻してほしいと弱々しく懇願した。
自分のものを差し出していないのにどうやって領地を取り戻せと言うのだ?国宝を出せとでも言うのか?と国王は憤った。
「そういえば其方の王妃はミクロフォーヌ侯爵令嬢の魔法学校建設を潰しただけでなく、被害に遭った王女達の慰謝料という後始末を『婚約者なのだから支払うように』と強要したそうだな」
「自分は一ピンスも出さぬというのにただの婚約者には多額の慰謝料を出させるとは……オパルール王国は国を保てるだけの人材も資産もない、という明言をしているのかな?」
「王家が支払うべき負債を他国の貴族令嬢一人に押し付けるなど前代未聞だぞ。国の王として恥ずかしくないのか?」
「この話は我々帝国からエクティド王国と情報を共有する必要があるようだな」
「ま、待ってくれ!少し待ってほしい!お、王妃っそれはまことか?!」
国王はまさか王妃が慰謝料の件でアルモニカに圧をかけているとは思わなかった。
常日頃アルモニカに対して当たりが強いと思っていたがアルモニカもアルモニカで反抗心で地味な格好や王妃教育に非協力的だからお互い様だなと思っていて、卒業したらさすがに大人しく結婚するだろうと勝手に考えていた。
だが帝国側からもたらされる客観的情報は、王家はアルモニカが王子の婚約者ということをいいことにこぞって冷遇し貴族令嬢としてまともな扱いを一切していないように見える。
いやそんなはずはない。ないはずだ。
ディルクには常々アルモニカは伴侶になるのだから大切にしろと言い含めてきたし、アルモニカのお陰で生活水準が保てているのだと王妃にも伝えていた。
不興を買えば困るのは此方だと、だからアルモニカの我が儘に妻子共に我慢しているのだと思い込んでいた。
エクティド王国にも援助の感謝とアルモニカの代わりにどれだけオパルール王国で幸せに過ごしているか報告書と共に送っていた。
その報告書は嘘偽りの情報と改竄された文章ばかりだったが。
ディルクと仲睦まじい場面はアルモニカではなくパルティーのことであったり、お情けでディルクと参加した公式パーティーで一度しか踊れずその後壁の花になっていたことも、アルモニカが他貴族令嬢に嫌がらせをされ知らぬ間に一人で帰ったことも、都合よく修正された書面の前ではアルモニカは傲慢で我が儘で王子達が迷惑を被りながらもなんとか体面を保てているというものだった。
そしてその嘘を都合よく鵜呑みにしている国王は更に嘘を連ね自分に都合のいいようにエクティド王国に報告していた。
嘘の報告書のせいで王子がアルモニカよりも男爵令嬢に現を抜かすのも仕方ないと考え、パーティーで遠目から確認するアルモニカは王子の婚約者でありながら愛想もなく憮然とした態度で孤立しているのも、反抗心からの行動にしか思えず半ば諦め気味に見ていた。
それでもエクティド王国からの援助は必要だったので仕方なく我慢していたのだ。
ハーレム計画の話が出してきた時もなんの問題もないと考えた。むしろアルモニカの素行の悪さを隠してやっているのだから感謝するだろう、とさえ考えていた。
正妃になれないことを不満にするようなら今までの横暴な振る舞いをエクティド王国に報告すると脅すつもりでもあった。
報告するようになってからの四年間、エクティド王国とはかなり親密になった自負がありアルモニカよりも自分の方が信用されていると国王は変な自信を持っていた。
まさか王妃も王子もエクティド王国からの援助の件を忘れてしまったのでは?と国王は真実に気づいてしまった。そして顔色は更に悪くなった。
「本当にアルモニカ嬢に慰謝料を支払えなどと言ったのか?」
「え、いえ、その……アルモニカさんから『婚約者なのだから役にたちたい』と仰ったのです!ほら、学校建設がなくなったからお金が余ってると言っていたし」
王妃を見ればそんなことは言っていないと否定した母子揃って髪を弄り目を合わせない。嘘をついた時の態度だ。
「残念ながらその資金のほとんどを学校建設費用だと嘘を付いてクエッセル元侯爵が横領したそうだぞ。なあ、国王よ」
「え、だって、そんなはずは…アルモニカさんは嘘を付いたのね?!」
デヴァイス帝国側の冷たい返しで挙動が落ち着かない王妃は国王を見、丞相を伺った。どちらも肯定する態度に顔を真っ赤にして金切り声をあげた。それも自分の嘘を誤魔化す時の行動だった。
「横領の話は王子も知っているのだろう?貴様に聞けばそれもミクロフォーヌ侯爵令嬢が『是非とも後宮作りに役立ててほしい』と言ってきたのだと嘯くのだろうな」
「まったく、幼気なご令嬢を使って王家共々ろくでもない嘘つきばかりだな」
恥さらしもいいところだ、と吐き捨てられオパルール側は肩身が狭い気分になった。デヴァイス帝国はすべて知った上で話し合いに応じたに過ぎない。
大人しくジルドレドを受け取るだけで終わらせておけば余計な恥も顰蹙も買わなかったのだ。
だがここまできたらなんとしても辺境伯領を買い戻すか嘘を突き通すしかない。
アルモニカを虐げていたという事実を知らぬ存ぜぬで通さなければ間違いなくオパルール王国は終わると国王や丞相は考えた。
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