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クズの婚約者にさよならと制裁を  作者: 佐古鳥 うの


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ハリボテの王子様 その4

王子側の話続いてます。お花畑とご都合胸くそも続行中。

時間軸はアルモニカ休学中です。


本日2話更新予定です(1/2)

 


 親子喧嘩が一段落すると帝国側の使者はわざとらしく溜め息をついた。


「そちらの事情はどうでもいい。後で好きなだけやってくれ。此方が言っているのはこの扇子だ」


「扇子?」


「この扇子が記載されているのはなぜだ?ことと次第によってはここにいる貴様達全員の首をはね、この国を蹂躙しなくてはならない」


「はあ?!」



 一気に不穏になる言葉に思わず声を上げた。首をはねるって国王や王妃、王子の首をか?!なんでいきなりそんな話になった?!と叫べば国王に黙れと叱られた。


「も、申し訳ない。理由を教えていただけるか?」


 下手に聞く国王に本当に知らないのか?と帝国側は訝る顔で教えてくれた。



「……この扇子は我が帝国の皇后様がとあるご令嬢へと成人の祝いに贈られた品だ。先程現物を確認してきたが間違いなく本物だった。

 それがなぜ目録に記載されているのか聞きたい。

 まさかと思うが皇后様からいただいたこの扇子を何も知らないなどと浅はかにも考え、我らを試したのではないだろうな?」


「そんなっ滅相もない!」


 国王は慌てて丞相に確認したがわからず、王妃も否定した。ここは手違いということにしておこう、と目配せをしそのように帝国に伝えた。


「なぜそのようなものが紛れこんだのかわからんのだ!気づいていれば目録に記載したりしない!」


 敵意はないのだと誠心誠意伝えれば帝国側は無愛想に頷いた。そんな態度が傲慢に見えたが属国だった名残りがオパルールの国王を踏み留まらせた。



「……そうですか。ならばその扇子は早急にご本人に返すように」


「ち、ちなみにもしその扇子を入れたとしたらいくらくらいになるのですか?」


 しかしそうではない者がいた。

 とあるご令嬢が誰なのかわかったのか王妃は国王の言葉で引いたデヴァイス帝国を無意識に軽んじ、興味本位で聞くとより低い声で帝国側の使者が答えた。



「……取り戻したい領地は簡単に買い戻せるでしょう」


「で、でしたら」


「先程も言ったようにこの扇子を売ったと同時に貴様達の頭は胴体から切り離されオパルール王国はなくなる。それでもいいなら売ってみるがいい」


 鋭い睨みに王妃はヒュッと呼吸が止まり首を引っ掻いた。締め付けられたように誤認したらしい。首には何も巻き付けられていないのに。


 椅子から転げ落ちのたうち回る王妃を国王達は助けるどころか見ているしかなかった。体が萎縮して動くことも叫ぶことも出来なかったのだ。


 属国だった頃の恨みだけが残り敵対心を育て子供達にも教えてきたが、帝国の実力がいかほどなのか、王国は耐えうる強さを持っているか今初めてディルクは疑問に思った。

 今王妃は攻撃を受けているはずなのにそれが誰のものでどういう魔法なのかすらわからない。


 単純に魔力を帯びた殺気と睨みを浴びたことにより緊張とストレスで気管が収縮し呼吸が一時的に不能になっただけなのだが、弱い魔力と四大自然魔法で知識が止まっているオパルール王国では面妖な奇術に見えた。


 なので国王は真っ青な顔で情けなくも王妃を助けてくれと乞うしかできなかった。



「我が国の皇后様は穏やかな方だがご結婚されるまでは冒険者としても名を馳せた実力を持つ方。

 彼のご令嬢とお揃いの扇子をプレゼントをした時点でどれだけ敬意を払っているか一目瞭然であろう」


「そのご令嬢の扇子が奪われたとなれば皇后様はさぞやお嘆きになり自ら出向いてご令嬢を冷遇したこの国を蹂躙するだろう。

 一体どういった経緯でこの目録に書かれたのかお答えいただこうか」



 じっとディルクを見つめる帝国の使者達にまずい、と思った。


 わかってしまったのだ。その扇子がアルモニカから奪ったものだということを。勿体ぶって生意気だと思ったがまさかこんなことになるとは思っていなかった。


 このままでは軽い気持ちでアルモニカを売ろうとして辺境伯領がなくなってしまったあれの二の舞になってしまう。

 蛮族だと帝国を蔑んでいるが下手に刺激すればオパルール王国は文字通り蹂躙されると直感した。



「あ、あー、これは、その間違いです。同じ場所に保管していたから間違ってしまったのでしょう」


「ほう。間違い。でしたらなぜ貴族のご令嬢の私物が王宮の保管庫に入っていたのかな?」


「そ、それは()()()()()が大切に保管したいと言ったから仕方なく」


「ディルク殿下、それは」

「ディルク!」


 予想はできていただろうがディルクの軽率な答えに丞相や国王が叫んだ。


 わざと名前を出さずに濁していたのは大事にしないためだ。それがエクティド王国のアルモニカだとわかればただでは済まないとディルク以外が気づいていた。


 だから口にしなかったのに、と大人達の形相にやっとそこでディルクも失言だとわかったが使者は笑みを崩さない。



「ほう。エクティド王国のアルモニカ・ミクロフォーヌ侯爵令嬢の持ち物でありながら手違いで目録に入れてしまったと」


「そ、そうなんだ。ついうっかり従者が入れてしまって」


 帝国側の目が鋭くなった。


「それはいささかおかしな話だな。貴様はミクロフォーヌ侯爵令嬢と婚約関係であったはず。なのに下賜された経緯を知らない?

 王宮に預けるならどれだけ大切なものか誰からいただいたか絶対に知っているはずだ。王家の宝物庫がそんな気軽なものでなければな」


「そこの両親である国王らが知らぬというのも管理しているはずの丞相らも知らぬというのも解せん。本当にミクロフォーヌ侯爵令嬢が預けたのか?

 それともオパルール王国は我らデヴァイス帝国を総出で謀っているのか?」


「いえ、そんなまさか!我々は何も知らなかったのです!」


「ミクロフォーヌ侯爵令嬢はお礼の手紙でとても喜んでいたと皇后様が仰っていた。まさか王命を使って無理矢理ミクロフォーヌ侯爵令嬢から奪い取ったのではあるまいな?」


「えっな、なぜそれを知って……あ!」


 王命と聞き、しかも肯定したバカ息子に国王は憤怒の顔で睨み付けた。

 余計なことを喋るなという睨みだったがそれが確証になってしまったことを国王は失念していた。


「……我々は言ったはずだぞ。再度ミクロフォーヌ侯爵令嬢を取引の材料として利用すれば、誘拐されたとして奪還作戦を実行すると。貴様らは戦争がしたいのか?」


「いえ、いいえ!違います!!戦争をしたところで我が国に勝ち目などありません!!」


 そして凡庸な王子は己の失言のせいで帝国からの圧力、ヴァンの殺意を帯びた視線を受け震え上がり過度なストレスに負けて嘔吐した。



「聞き捨てならない言葉はまだあるぞ。そこの王子はパルティーとかいう女と結婚するそうだな。それはどういう意味か正直に答えよ。ミクロフォーヌ侯爵令嬢はあなたの婚約者ではなかったか?」


「……それは、その、アルモニカと婚約破棄をしてパルティーと結婚を」

「ディルク殿下!!」


 朦朧とした感覚のまま正直に答えれば、丞相がディルクの肩を掴み言葉を遮った。揺すられた気持ち悪さにまた吐いた。


「こ、これは息子の戯言です!そんなことを儂が許すはずがないではないか!勿論アルモニカ嬢と結婚させますとも!な、丞相!」


「え、ええ!ディルク殿下の若気の至りです!卒業すれば殿下もきっと目を覚まされるでしょう」


「結婚道具一式は仕方なく記載させただけなんだ!アルモニカ嬢が我々の助けになるのならと快く言ってくれたのだ!だから気づかずその扇子も入れてしまっただけで……手違い、そう、手違いだったのだ!」



 国王達の必死な訴えもにわかに信じがたい顔で帝国側は顔を見合わせると「そういうことにしておこう」と引いてくれ、オパルール側はホッと息を吐いた。


 だが扇子を抜いた目録は辺境伯領を買い戻すにはかなり足りず、交渉を重ねたが帝国側が譲歩することはなかった。

 国王は内心なぜ王家の宝物庫に模造品がこんなにも多く目録に記載されているのか理解できなかった。


 辺境伯領は王妃の実家だがオパルール王国の国境の要でもある。誰もが取り戻したいと思っているはずなのだ。

 それなのに目標の金額の半分にも満たない模造品の数々にどういうことかと冷や汗を流した。



「無知な愚か者の貴様らに部外者の我らが教えてやるのも気が引ける話だが後学のためにひとつ教えておいてやろう。

 ミクロフォーヌ侯爵令嬢が興そうとしていた魔法学校だが、それが無事開校されれば我々との交渉材料になり後々オパルール王国に財をもたらすものになり得たのだが理解していたか?


 世界最高クラスの防御力と結界に優れた施設にエクティド王国でしか使用できない希少な教材が使え、選りすぐりの講師の中にはエクティド王国でも滅多にお目にかかれない特別講師がミクロフォーヌ侯爵令嬢の呼び掛けで教壇に立つ予定だった。

 我々帝国以外の国でもいつ開校するのか楽しみに待っていた者も多かったのだぞ」


 国王の疑問を余所に帝国からもたらされるとんでもない言葉に丞相と一緒に目を瞪った。

 そんなバカな。魔法学校はあくまで情操教育の一環で貴族の暇潰しに作られるものだったはず。


 いや、アルモニカから婚約した際に仰々しい分厚い書類を渡されたがオパルール王国は魔法を使う機会があまりなく、特に貴族は必要としなかったため本気に取り組まなかった。


 そのうちクエッセル侯爵や丞相らがアルモニカが魔法学校を作ることで王位簒奪するつもりだと進言され彼らの言葉を鵜呑みにした。

 なにせ魔法学校は貴族よりも平民を()()し、下手に知恵をつけさせるための教育機関だったのだ。そんな煩わしい学校など潰れてしまえばいい。


 クエッセル侯爵がなにやら企み動いていたが、アルモニカがいる限り援助が受けられると思い込んでいた国王は、魔法学校が潰れようがアルモニカの悪評が流れようが結婚さえさせれば問題ないと決め込み、見ないフリをし続けた。


 それがまさか、実は価値があっただなんて寝耳に水だと喉を鳴らした。



「何をそんなに驚いている?エクティド王国は国外の募集人数は限られているのだから同等の学校が開校され空きがあるのならそちらで学びたいと思うのは普通だろう?

 その入学話を取引材料にすれば自国の貧相な財政事情を他国に見せることはなかっただろうにな」


 口外にオパルール王国は随分と貧乏なのだな、と嗤われ国王は顔が真っ赤になったが目録を見る限りそう思われても仕方がないくらいの財しかなかった。


 そしてアルモニカが建てようとしていた魔法学校にそこまでの付加価値があるとは思わず国王達は驚きを隠せない。



「だ、だが、貴族が平民と机を並べるなど、あってはならないはずだ!」


「?何を言っている?エクティド王国の教え(魔法)が学べるのだぞ?そんなことを気にしてどうやって学ぶというのだ?そんな暇などないはずだぞ」


「最初こそ机を並べるが魔力の強さを計測した後すぐにクラスが編成され直す。同じレベル同士の方が吸収しやすいからな。

 その後属性の振り分けでまた再会することもあるが、貴族並に強い平民は稀だし、それほど強ければ国に貢献する者に成長する可能性がある。

 むしろ才能ある者を優遇し囲う方が得策だと思うが?」


「そのこともミクロフォーヌ侯爵令嬢は貴様らに報告した上で建設を申し出ていたと思うが、ちゃんと話を聞いてなかったのか?……ああ、もしや平民に追い越されるのが怖いから机を並べたくなくてそんなことを言い出したのか?」


「貴様達オパルール王国の貴族は年々魔力が乏しくなり魔力操作できるものも減っていたようだからな。その上そこの王妃の使い込みで財政が傾いていたからエクティド王国に援助を申し込んだのであろう?

 魔法学校はオパルール王国を救う唯一の手立てだと聞いていたが違うのか?」


「というか、ズーラ帝国やルダンブル王国は入学優先権を優遇してもらうために先走って婚姻を結ぼうとしただけだろう?

 なのにそれすらも気づかず姫君達の不興を買ってしまって大丈夫なのか?学校が建たないと知れば更に文句を言ってくるぞ?」


「そんな、バカな……」


 う、嘘だ……!僕の妃よりもアルモニカが作ろうとした気味の悪いイカれた学校の方が上だなんて…!


「我々も聞いた時耳を疑ったわ。お前達のために作られるはずだった金の成る木を後宮などという負債に変えるとはな」



 我々諸外国の本命はアルモニカが建てるはずだった魔法学校のみ。それを後宮に変えすべて砂に変えてしまった今、周りからオパルール王国はどう言われているか。


 青白い顔でカタカタと国王と丞相が震え、王妃は椅子に座り直すことも出来ずぐったりしたまま顔を覆っている。


 常日頃自国が世界で一番豊かで尊敬されていると自負している王妃を見てきた王子は会ったことがないデヴァイス帝国を偏った知識だけで蔑み差別していた。

 デヴァイス帝国に限らずエクティド王国や諸外国をも下に見ていてそれが態度に出ていた。


 今再度勉強させられているが長年刷り込まれたことを払拭するなど容易ではない。だからやらかしてしまうのだが。



 その結果、ディルク自ら己の国の破滅を呼び込み田舎諸国と揶揄していたアルモニカがオパルール王国を救おうとしてくれたのだと初めて知った。

 そんな馬鹿なと思ったが後宮の時のことを思い出しディルクは打ちのめされたようにがくりと肩を落とした。


 今まで描いてきたもっとも強く、もっとも尊いオパルール王国像がガラガラと崩れ落ちていく音が聞こえた。






読んでいただきありがとうございます。

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