ハリボテの王子様 その2
王子側の話続いてます。お花畑とご都合胸くそも続行中。
時間軸はアルモニカ休学中です。
本日2話更新予定です(1/2)
ジルドレド伯爵が戻ってきたら自分達が加担していたことがバレてしまう。罪に問われることはないだろうが信用は落ちてしまうだろう。それはまずい。
なんとかして内々にジルドレド伯爵を処分できないか悩んでいたところでパルティーがやってきて何の気なしにこう話しかけてきた。
「ねぇねぇディルク。アタシ達の結婚式って大丈夫なの?」
「は?」
「ほら、ドレスはディルクが用意してくれるけど装飾品はジルドレドおじ様が用意するって言ってたでしょう?アタシ達の結婚式に間に合うのかな?って」
一瞬何を言われたのかディルクにはわからなかったが遅れてそんな話をしていたなと思い出した。
ジルドレド伯爵は自分の商会の宣伝をパルティーにさせようとしたのだろう。粗悪品を王子妃に身に付けさせ儲けようなどと醜悪過ぎる。
ディルクは平静を保ってジルドレド伯爵が用意するものよりもいいものを用意するから問題ないと返した。
「結婚式も盛大に挙げるつもりだ。美しい花嫁姿のパルティーを国中に見てもらう予定さ」
「そうなんだ!良かった!あ、そうだディルク。出て行ったお姉様にも招待状を送りたいの。多分外国にいると思うんだ。呼んでもいいかな?」
「当たり前だろう?パルティーの実の姉君だ。パルティーの花嫁姿を見たいと思っているはずだ」
「そうだよね!あ、あとね!結婚式のあとに披露宴パーティーあるじゃない?その時にねアニーさんが持ってた扇子を持って歩きたいの!すっごく綺麗な扇子なんだよ~!
なんかね。リュシエルに買ってもらおう思って聞いたらどこかの国で作ったオーダーメイドなんだって。ディルクってばいつの間にアニーさんにあんな素敵な扇子買ってあげたの?ズルいわ!アタシもあれが欲しい~!!
絶対アニーさんよりもアタシの方が似合うわ!お願いディルク!あの扇子アタシに頂戴!」
どこかの国ってエクティドのことか?とディルクは首を傾げた。そんなものを贈った記憶はなかったがパルティーが気に入るようなものをアルモニカが自分以外の誰かから贈ってもらえるわけがない、と勝手に断定した。
よもやまさかデヴァイス帝国の皇妃自ら下賜されたものとは知らずパルティーの願いを安請け合いした。
代わりになるものを僕からのプレゼントだと言って与えれば喜んで差し出すだろうと思い、従者に派手な安い扇子を見繕わせそちらの扇子と交換せよと送りつけた。
すると代筆で『その扇子は尊き彼の国から友好の印として特別にアルモニカ様に贈られたもの。ディルク王子からいただいたものではありません。それを易々と差し出すことはできない』と勿体ぶって断ってきた。
アルモニカごときが生意気な。後宮の件でもムカついていたディルクは王命を使ってその扇子は僕が間違って貴様に贈ったものだからさっさと返上しろと差し出させた。
体よく手に入れた扇子はとても精巧で確かにアルモニカごときが持つべき扇子ではなかった。
その素晴らしい扇子をパルティーにプレゼントするついでにジルドレド伯爵が見つかったことを知らせると「へーそうなんだ」と扇子を眺めながら気のない返事を返した。
見ていた限りでもジルドレド伯爵はパルティーを可愛がっていたし、パルティーもジルドレド伯爵を慕っていた。もう少し喜んでもいいのでは?と思わなくもなかったが、美しい扇子を手に入れて喜ぶパルティーがあまりにも可愛くてどうでもいいか、と思い直した。
戻ってきたところでジルドレド伯爵が重い処罰が下されるのは間違いない。
そのことを深く掘り下げても良かったのだがディルクはこの時、『パルティーは伯爵のことでこれ以上僕が罪悪感を覚えないようにわざと興味ない素振りをしているのだな』と都合よく解釈した。
最悪処刑もありうるがそれは仕方ないとしてディルク達が詐欺に加担したことはパルティーの名誉にも繋がるのだから黙っているようにと口止めすれば問題ないだろうと軽く考えた。
しかし問題はまだある。取引条件にあった金額だ。デヴァイス帝国に弱みを握られるだけでも業腹なのに、奴等を潤わせる金を渡すのも腹が立った。
どうするか、とランドル達と話した時にアルモニカが随分羽振りが良くなった話を聞かされた。
どうやら大枚をはたいてあのどうしようもない見てくれを着飾っているらしい。それであんな不相応な扇子を持っていたのかと合点がいった。
さすがに彼らは粗相の話はしなかったがあの広場の一件での恨みがあったので婚約者なのだから代わりに金を出させるのはどうだ?といつものノリで進言した。
それを聞いたディルクは名案だと喜んだ。
いっそアルモニカ自身をジルドレド伯爵の取引に使えばいいのでは?という話で盛り上がり、アルモニカの許可も国王達の許可も得ずにディルクは勝手にデヴァイス帝国に取引を持ち掛けた。
『未婚でそこそこ教育が行き届いている丁度いい年齢のミクロフォーヌ侯爵の娘、アルモニカという者がいる。その女とジルドレド伯爵を交換したい』
田舎小国だがアルモニカは侯爵位だしジルドレド伯爵とも釣り合いが取れるだろう。蛮族のデヴァイス帝国は田舎小国など知らないだろうが侯爵位を持っている未婚の女と言えば喜んで食らいつくに違いない。
無事交換できた暁にはエクティド王国に、
『アルモニカが蛮族デヴァイス帝国に拐われ傷物にされた。これでは王妃としての価値はないから即刻デヴァイス帝国と連絡を取り其方に連れ帰ってくれ。支払いは勿論エクティド王国から出すように』
と手を回す予定だ。オパルールには魔法も使えない役立たずの女に支払う金も義務もないからな。
厄介払いもできて一石二鳥だとディルク達はほくそえんだ。
しかし、頭お花畑の王子達にとって予想外の出来事が起こった。
ディルクの手紙がデヴァイス帝国に届いたと思われた次の日に母である王妃の実家、辺境伯領がそのデヴァイス帝国に侵略されたと報告があったのだ。
あまりにも迅速な侵略と辺境伯を拘束したという卑劣な遣り口に抗議すると、
『貴国にとって犯罪者であるジルドレドなる者と良民を交換材料として利用する方が卑劣極まりない。
魔法大国エクティドの侯爵令嬢、アルモニカ・ミクロフォーヌ様はまだ貴国の民でもない。無関係の令嬢を人権なく勝手に取引の材料にするとはなんたる所業か。
オパルール王国はデヴァイス帝国とエクティド王国の不和をもたらしたいのか?エクティド王国と友好関係を結んでいる我が帝国が何も知らず取引に応じると思われたとは甚だ遺憾である。
我が帝国は貴国に侮辱されたとしてオパルール王国の一部を占領した。ジルドレドなる伯爵にそこまでの価値はないが、身代金を他国のご令嬢であり貴国の王子の婚約者で支払おうとしたのだ。
恥ずべき行為と猛省し当然の報いと受け入れるがいい。
この領地と引き換えにジルドレド伯爵を解放することとする。
別案があるなら聞かなくもないが、再びミクロフォーヌ侯爵令嬢を卑劣な取引材料に使った場合は貴国に誘拐の嫌疑をかけ救出作戦を実行する。
その際貴国は再び我らの属国になることと思え』
と返された。
打って変わって戦争を辞さない攻撃的な内容に誰もが戦慄し、ディルクも驚愕した。
そこまで怒ることか?だってあの田舎小国のアルモニカだぞ??などとまだエクティド王国とアルモニカを認められずにいる。
むしろ自国以外下に見ているのも相まって帝国がそこまで怒ることもその程度のことで辺境伯領を占領されることもディルクには謎でしかなかった。
しかし悪態はつけてもディルク一人の力では辺境伯領を取り戻すことはできないし、ランドル達も同意したのだと言うことはできても奪還できる有効な作戦も一人で立ち向かえる勇気も実力もない。
愚かな王子達は自分達で解決しようとしてとんでもない失態を犯した。
かくして前代未聞のやらかしをしたディルクに国王は激怒した。なにせ取引するにはまったく価値がないジルドレド伯爵とオパルール王国の国境を守る辺境伯領を知らぬ間に交換させられたのだ。
甘やかされ、権限ばかり行使してきたディルクは王子としての勉強をまったくしていないと四方から叩かれた。周りに太鼓持ちが多く成績詐称していた教師が多かったのが今更災いした。
国王や丞相などの重鎮達から説教と嫌味を疲弊して気絶するまで浴びせられた王子は王族の心得やマナー、デヴァイス帝国とオパルール王国の歴史、貴族としての勉強を最初から学び直すよう勅命が下った。
中でも怒り狂っていたのはディルクの母である王妃だった。辺境伯領は王妃の実家で今は王妃の義兄が治めている。とても仲が良かったのもあり王妃は扇子が折れるくらい物に当たり散らし実の息子の心を打ちのめした。
このままでは辺境伯領を足掛けにしてオパルール王国が占領されてしまう。
そうさせないためにも、辺境伯領の奪還を!と王妃が強く訴えたが提示された金額を支払う以外の良策は出てこなかった。
ここにクエッセル元侯爵が居れば居丈高に自分が軍を率いて戦争を仕掛けていただろう。だが実力はたかが知れているのでデヴァイス帝国の逆鱗に触れた上で甚大な被害を受けて属国になっていた。
スネイル団の弟子である騎士団長はその辺を弁えているので被害の大きさを数字で提示し辞退している。戦争は団体戦だがそれでは賄えないほどの実力差がオパルール王国とデヴァイス帝国にあるというわかりやすい答えだった。
そしてアルモニカの魔力と立ち位置を正確に把握している者がいれば有効利用できたがそれができる者が居なかったためオパルールが助かる唯一であり最強のカードを埋もらせるだけに終わった。
それ以前にアルモニカをちゃんと理解していれば冷遇するなんてことはしなかっただろうが。
辺境伯領を買い戻すにしてもエクティドに貸しを作るわけにはいかないという見栄しかない国王の意向で国庫から金額が支払われることになった。
中でもディルクは辺境伯領を手放す切っ掛けを作った罰としてほぼ全財産を出すよう強制された。王妃の怒りを諌めることは息子のディルクはできなかった。
ディルク、国王、王妃の順で出し合ったがそれでも足りないので結婚に使われる予算も充てられた。
そうでなくとも後宮の件でディルクと国王は個人資産を慰謝料に使っている。非常事態なのだからいいだろうということになった。
その中には式に使うドレスなどの道具も含まれたが公然の秘密としてそのドレス合わせはアルモニカではなくパルティーのサイズが採用されている。それもあり丞相達は問題視しなかった。
読んでいただきありがとうございます。




