ハリボテの王子様 その1
王子側の話です。お花畑とご都合胸くそ続行中。
時間軸はアルモニカ休学中です。時間巻き戻ってます。
※思ったより長くて挟む場所間違ったかも。後で修正するかもです。
パルティーの成績不振がどうしても信じられず、彼女に打ち明けられないまましばらく悶々とした日々が続いた。
いやそんなことよりもあのアルモニカがパルティーどころか僕よりも成績が上だったなんて信じられるはずがない。なんならランドルやリュシエルよりも上なんだぞ?!そんなの信じられるか!
あいつは他国の出身故にオパルール王国の学力について行けず落ちこぼれだから僕という高貴な存在に縋っていたんだ!
僕と結婚したいがためにありもしない功績を作って高飛車に振る舞ってきたんじゃないか!そうだ、そうに違いない!
けれども学園長が言っていた言葉も無視できなくてディルクはひどく 混乱した。
素直に受け止められればなんてことはない事実だが長年下に見てきただけにプライドが邪魔してディルクは現実を受け止めきれなかった。
このことをランドル達が聞けば間違いなく卒倒する。前にも増してアルモニカにきつく当たるだろう。
もしかしたら僕のために外交問題も辞さない勢いでアルモニカを糾弾するかもしれない。さすがにそれは不味い気がする。
パルティーは僕の妻に相応しくないと嘆くかもしれない。彼女は繊細で自分に自信が足りないからな。可愛げもなにもないアルモニカなんかのために身を引くなんてことになったら一大事だ。
そうでなくともハーレムの件があるし、アルモニカよりも成績が低いパルティーを正妃にしたいと言えば母上が金切り声をあげるのは必至だろう。
アルモニカが何もできない役立たずのままならよかったのに。ああ、僕はなんて不幸なんだと身勝手で見当違いな悩みで苦しんでいた。
◇◇◇
そうこうしているうちにパルティーが泣き腫らした顔でディルクの元にやってきた。
「何?ジルドレド伯爵が夜逃げしただと?!」
「どうしよう。このままじゃお父様は爵位を返上して一家離散してしまうわ!」
ポロポロと泣く姿が痛ましく、そして庇護欲をそそり、人目も憚らずディルクはパルティーを抱き締めた。
そこは学園の廊下でほとんどの生徒は気にしていなかったが王子が男爵令嬢を贔屓する姿は他国の侯爵令嬢を苛める姿よりも印象が悪く写っていた。
それもそのはずで他国は婚約者だしどうしようもないが男爵令嬢は自国の貴族だ。
コラール男爵は数代前の商人が爵位を買って貴族になったのだとほとんどの者が知っている。そのため面白くないと思う者が多かった。
往来で号泣して同情を引く令嬢など同性からすればウザいこの上ない。平民に戻るならざまーみろとさえ思っていた。
しかし泣きついた相手は男爵令嬢ごときにどっぷり惚れ込んでいるこの国の王子だ。学園の規則や紳士淑女なマナーなど真実の愛の前では『なにそれ美味しいの?』だ。
ディルクはアルモニカに支払いを肩代わりさせる命令を下したと同時にジルドレド伯爵とソリッド商会にも圧力をかけていた。
特にソリッド商会には『婚約破棄される平民が悪い。パルティーという賢く美しい令嬢と一時の安らぎを得られたことを感謝すべきだ』として慰謝料の撤回を厳命した。
国でもっとも尊い王子の名前を出されてしまえば、ソリッド商会も撤回せざるを得ない。
しかもパルティーに優位な形で市井に流布すると、ソリッド商会は商売が立ち行かなくな致命傷になる前に閉店しオパルール王国から撤退した。
これで慰謝料もなくなり鬱陶しい婚約者もなくなったとパルティーと一緒になって喜んだが、ジルドレド伯爵が夜逃げしたと聞いて驚いた。
伯爵に圧力をかけていたが慰謝料の撤回をすれば許してやるつもりではいた。パルティーが世話になってるというし、彼に口利きをしてやった顔見知りでもある。
その話を当の本人にしていなかったことを思い出した。
だが詳しく調べてみればジルドレド伯爵は商会を運営する際コラール男爵を経営に一枚噛ませて保証人のサインを書かせていた。
それでも爵位を返上するほどの支払いがあるとは思えない。慰謝料を支払う必要がなくなったのになぜ家族が離散する危機に陥るのかと思えば、ジルドレド伯爵はなんとオパルール王国で安価な粗悪品を大量に売り捌いていたことが判明した。
その中にはパルティーの言葉に乗せられてディルク達が買ったり他の貴族に紹介したものもある。知らないうちにディルクは詐欺に加担していたのだ。
驚愕したディルク達は焦った。まさかジルドレド伯爵が高位貴族相手にマルチ商法をしてくるとは思わなかったのだ。
だがよくよく思い出せばジルドレド伯爵はいつもパルティーや若い貴族を使って宣伝していたように思う。ジルドレド伯爵個人に信用はなくても他の高位貴族は別だ。
商品がまともなら問題も起きなかったが粗悪品となればジルドレド伯爵と一緒に自分達の信用も落ちてしまう。なんとしてもその事実を隠さなければと焦った。
それから間もなくディルク達の生活にも支障をきたし始めた。
いつも食べているお気に入りの果物の質が悪くなり、気づけば食卓に並ばなくなった。執務で使っている自動誤字添削ペンが壊れると誤字修正で返却される書類が増え仕事が倍になった。
王妃は機嫌が悪くなり周りに当たり散らすようになった。どうやら粗悪な化粧品を買わされ肌が荒れたらしい。その他にも日常生活で困ることが増え小さな苛立ちが積み重なっていく。
その頃には中流貴族からも不満の声が上がり、やはりジルドレド伯爵が関わっている商品の訴訟が起こった。数も半端ない。ディルク達はなんともいえない罪悪感で見て見ぬフリをするしかなかった。
パルティーには悪いがこのままジルドレド伯爵は行方不明になってもらった方が自分達には都合がいいのでは?と思ってしまった。
それだけではない。
ディルクは花祭りでの珍事が、ランドルとリュシエルは広場での粗相が社交界や平民が集う酒場を中心に噂が出回ったのだ。
社交界の噂は揉み消すことはできたが平民に広まる噂はどんなに取り締まっても消えず、むしろ取り締まるせいで過剰に広がっていった。
その途中でディルクは自分が気に入っていた果実や、なくては困る道具がすべてソリッド商会が卸していた商品だと知った。
パルティーとの婚約を破棄させた相手がソリッド商会の息子だと知り、その商会は平民が経営していながらオパルール王国に留まらず諸外国にも品を卸し太いパイプを持っている大規模商会だと知った。無名のしがない商会ではなかったのだ。
慌てて戻ってくるように指示したが(勿論謝罪はない)オパルール王国での赤字は他国で賄えるのでもう用事はないとあっさり突っぱねられた。
むしろトラッド達は厚顔無恥甚だしいとアルモニカとの繋がり以外はすべて遮断していた。
そうして残ったものは、ディルクにとって不名誉な噂だけ。
『王子はお気に入りの愛妾を手元に置くために王都になくてはならないソリッド商会を追い出したのだ』とか
『真実の愛で結ばれていた婚約者同士を引き裂いた極悪非道な王子』とか背ひれ尾ひれがついた噂が王都中に広まった。
それを聞いたパルティーは、
『アタシは愛妾じゃないわ!正妃になるのよ!ディルクとアタシが真実の愛で結ばれているの!!トラッドみたいなケチな不細工はこっちから願い下げよ!』
とバカ正直に片っ端から言い返したのでコラール男爵家は周りから白い目で見られる羽目になった。
逆に元々ディルク王子の婚約者だと周知されてるアルモニカは広場の一件で国民から『王子妃に相応しい素晴らしい婚約者だ』と高く評価された。
事実は別でも誰もパルティーの言うことなど信じるはずがない。むしろ不貞を吹聴するなんて不敬だと何度か憲兵に突き出されていた。
それでもめげないパルティーだったがコラール男爵家はどんどん憔悴していき、パルティーに足を引っ張られる形でディルクの名前も市井でどんどん落ちていった。
そしてディルクを更に追い詰める話が舞い込んだ。
「ジルドレド伯爵が見つかった?!」
後宮消失事件でとてつもなく忙しい時に国王に呼び出されたディルクはマナーも忘れ叫んだ。何で今出てくるんだと思ったがそれは国王達もそう思っていた。
どうやらジルドレド伯爵はオパルールを出た後、なんとデヴァイス帝国に行って捕まったらしい。
よりにもよってあの蛮族に捕まるとは。どうせならモンスターにでも食われていれば良かったのにと誰もが思った。
「しかも書状には取引を望んでいるとあった」
「あの蛮族が戦争ではなく話し合いですか?」
それは殊勝なことだと思ったがジルドレド伯爵との取引には金が必要だと要求された。ざっと国庫の半分ほどだ。こっちにはそんな余裕なんてないしジルドレド伯爵がどうなろうと知ったことではない。
煮るなり焼くなり好きにしろ、と送る予定だったがどこで漏れたかジルドレド伯爵の被害に遭った貴族から身柄を引き取り裁判を!懲罰を!という声が四方から上がり王子達は頭を抱えた。
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