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クズの婚約者にさよならと制裁を  作者: 佐古鳥 うの


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後宮じゃなくて迷宮でした (4)

 



 死を覚悟した方々や顔を真っ青にさせ震え蹲る方々を確認したわたくしは、魔力を増やし結界に関わる建物をすべて砂にまで分解しました。

 この結界は建物込みで構成されているので建物さえなければ無効化されるのです。


 ほぼ一瞬で砂に変わったために足場を失ったわたくし達はバランスを崩し砂の上に落ちました。

 痛みはなかったですが天井や屋根も砂になったので這い出るまで少し時間がかかりました。



「あの方達も助けて良かったのですか?」


 陣がなくなったお陰で瘴気が薄くなり、モンスターの気配も遠くなっていくのを確認すると侍女がボソリと呟きました。

 視線の先には砂をかき分け這い出ている王子達で口に砂が入ったと嘆いていました。

 ご令嬢達も怪我がないことを確認して「近すぎて分けられなかったから仕方ないわよ」と小声で返しました。



「これじゃ砂漠ね」


 敷地のせいもあって一見すると砂漠にも見える。同意する侍女についた砂を払ってもらっていると遠くでヴァン達の声が聞こえた。

 門の方に人影が見える。あの辺でしょうか。



「クエッセル!!これはどういうことだ!!僕の後宮が!僕とパルティーの楽園が消えたじゃないか!!」


「私じゃありません!!私が壊した訳じゃないんですから私を責めないでください!!」


「じゃあどうしてこんなことになったんだ?!モンスターに地震、そしてこれだ!!どう責任をとるつもりだ?!」


「わ、私の責任なんですか?!」

「当たり前だ!!!」


 ご令嬢達の心配よりも後宮がなくなったことを嘆く王子と八つ当たりの標的にされた侯爵はまた取っ組み合いのケンカを始めました。

 ですがそこはそこそこ深い砂場。足をとられて転び、踠くほどに沈んでいきました。


「だ、誰か僕を助けろ!!」

「私のことも助けるんだ!私は魔術師団長だぞ!」


 ズブズブと沈みながら叫ぶ二人にわたくしは冷ややかな目で見下ろしていました。


 わたくしだけではありません。泣き腫らしたマルティーナ様もまだ具合の悪そうなメリッサ様も冷たく怒りを含んだ目で彼らを睨んでいました。


 そちらと目が合ったらしい王子達は騎士達に助けるよう命令しましたが彼女達は無視し背を向けました。


「ディルク殿下。この事は即刻本国に伝えさせていただきますわ。後宮入りのお話も考え直させていただきます」


「わたくしもですわ。お父様にお伝えしてオパルールを糾弾してもらいますわ。

 それから持ってきた家財道具すべて元通りにしてからわたくしに戻してください。なにひとつ欠けないように」


「わたくしのもです。もしミクロフォーヌ様のように侮ればどうなるかオパルールは身を持って知ることになるでしょう。

 わたくし達はミクロフォーヌ様ほど優しくありませんから」


 失礼しますわ、と歩きにくい中ご令嬢達は従者を連れて去っていきました。



「はああ?!なにが『身を持って知ることになるでしょう』だ!オパルールに敵わないと思ったから嫁いで来たのだろうが!!生意気な女め!

 後できつく躾てやる必要があるな!クエッセル侯爵!早く僕を助けろ!いつまで待たせるつもりだ!!」


「それが出たくても出られないのです!誰か…ミクロフォーヌ侯爵令嬢!貴様でいい。手を貸せ!でなければ人を呼んでこい!!」


「……言葉が過ぎますわね。クエッセル侯爵」


 厳密には違うとはいえ同じ侯爵身分だというのになんなのその態度。

 扇子を開き砂に埋まっている侯爵を見下ろせば彼は手を伸ばしドレスを掴もうとしたので後ろに下がりました。


「不愉快だわ。誰の許しがあってわたくしのドレスを掴むのかしら」

「それは貴様が助けないからで」


「わたくしの事情を知りつつ笑い者にした先程もあなたは助けてくれませんでしたわ」


 未婚の女性のドレスを掴むなど不敬極まりないことだというのに。侍女はわたくしを庇うように前に出て侯爵を睨み付けました。


「それからクエッセル侯爵、ディルク殿下。わたくしは今回のことで我慢することをやめましたの」


 二人はポカンとした顔で此方を見ました。


「わたくしが心血を注いで書き上げた『魔法学校』の設計図をこんな形で悪用したのです。

 しかもエクティドから与えられた資金を横領し『後宮』にあてがった。これは許しがたい行為です」


「は?何を言っている。その金はお前が贅沢をするために使い込んだのだろう?!自業自得をこっちのせいにするな!」


「殿下こそ本気で言っているのですか?後宮を見ましたでしょう?王宮でもそこまで使われていない高値の金をあれだけふんだんに使える予算がどこにあると?

 デザイナーは王家御墨付、置かれていた調度品も最高級品ばかり。しかも予定よりも一年も早く完成させた後宮が安価で作れたと仰るの?」


「それは、その……」


「殿下が懐を痛めたのはフワフワな髪をしたおさげのご令嬢とご自分を有名画家に描かせた一枚だけ。

 仮に豪遊したとして、わたくしがなぜそちらの国の都合のためにわたくしが懐を痛めなくてはいけないのかしら?わたくしはこの国に来た時から魔法学校を作るつもりだと公言していましたのに……あなた方二人はそんなことも忘れてしまったの?

 そしてあえて聞きますがなぜ後宮を作る必要があるのでしょうか?先程の高貴な方々は殿下とどういった関係なのかしら?わたくし、後宮も、後宮にすら入れないことも、何も、聞いてませんわよ?

 オパルール王国はいつからハーレム計画を暗躍されていたのかしら。これは我がエクティドに対して立派な反逆罪ですわよ」


 ねえ、クエッセル侯爵。じっと見つめれば彼は汗を大量にかきながら目を彷徨わせた。

 それはそうよね。魔法学校を作るとなってからずっとわたくしと共に行動していたのですもの。味方を装って資金を横領するなんて造作もないことよね。


「ディルク殿下。以前にも申し上げましたがここは元々は『魔法学校』が建つ場所だったのです。それがクエッセル侯爵の策略により『後宮』に姿を変えました。

 今回モンスターが現れたのは書きかけだった結界の陣をクエッセル侯爵がわたくしの忠告を無視して勝手に作り替えてしまったのが原因です。殿下達の命を奪おうとした罪は重いですわよ」


「勝手なことを!殿下!こんな娘の言うことなど聞いてはなりませぬ!すべてはこの女の策略です!私はただ殿下のために」


「殿下のためならばなぜ結界を完成させなかったのですか?図面はありましたし、わたくしは何度も説明しましたよね?失敗しないよう細心の注意を払うようにとも。

 今回の件は侯爵の無知さと驕りが原因ですわ」


「う、煩い煩いうるさーい!!」


 子供のように癇癪を起こした侯爵は手元の砂を掴むとわたくしに向かって投げつけました。

 当たってもドレスくらいでしたが侍女がシールドを張ってくれ、そして侯爵は投げつけた以上の砂をかけられていました。



「あらヴァン」

「お迎えに上がりました。アルモニカ様」


 走ってきたのか少し息切れしていましたがそうした理由は勢いよく到着したついでに侯爵と王子を砂をかける計算だったようです。

 一番近かった侯爵はまた埋まり手しか見えません。王子はまた口に入ったと騒いでいました。

 無礼ですが同情しません。まだマシな嫌がらせですもの。


「ぺっぺっ貴様っ不敬だぞ!!僕はこの国の王子だ!僕を助けるのが先だろうが!!」


 わたくしの手を取るヴァンに王子は激怒しましたが、無視をしてそのままわたくしを横抱きにしました。

 いきなりのことに驚き目を瞬かせればその砂が目に入ったと王子から苦情が聞こえました。



「申し訳ありません。我が主人を守るのが私の使命ですので」


「だが、そいつよりも僕の方が上だぞ?!逆らったらそいつもただではすまないんだからな!!」


 僕の方が偉いんだからさっさと助けろ!と叫ぶ王子にわたくしはヴァンと顔を見合わせましたが、思っていたよりも近い距離になんとなく気まずくなって逸らしました。


「その主人が大切ならわかるだろう?僕を助ければそいつよりもいい立場にしてやるし褒美もくれてやる!」


「うるせーよ。愚物が」


 離れたところでオパルールの騎士達が此方に向かっているのが見えます。

 もしかしてヴァンは身体強化をして来たのかしら。面倒ごとにに巻き込まれないように外では大人しくするように言ってあったのですが仕方ありませんね。



「我が主人に無体な仕打ちをするこの国の者に施すものなどなにひとつありませんので。そこで己がしでかしたかとを反省してろ」


「なっ…」


 ピリッとした空気に前を向けば王子は固まり真っ青になっていました。

 ヴァンを見れば「では参りましょうか」といい笑顔で歩きだし、何かあった?と侍女を見れば落ちたわたくしの靴を抱えながら首を横に振りました。知らないという意味かしら?



「ディルク殿下」


 固まる王子に声をかければ驚いたように肩を揺らして此方を仰ぎ見ました。


「あなたのお気持ちはこの数年で十分理解しましたわ。わたくしもあなたへの気持ちはすっかり枯れはてました。

 卒業と同時に国へ帰りますのでどうぞお好きな方と結ばれてください」


 本当は言ってやりたいことがありましたがヴァンに抱えられたせいで全部飛んでしまいました。歩きにくいのは確かですが何もお姫様抱っこをしなくてもいいのに。


 お父様以外ですと異性では初めてのことでガラにもなく狼狽したわたくしの頬は熱くて仕方ないほどでした。

 手で隠してみても熱さは引かず、視線をあげればすぐそこにヴァンの顔があって。


 しかも視線に気がつくのも早く、此方を見てふわりと微笑むからとても心臓に悪くて前回とは違った意味で気を失いそうでした。嗚呼、心臓が痛い。









読んでいただきありがとうございます。

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