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クズの婚約者にさよならと制裁を  作者: 佐古鳥 うの


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目の前真っ暗

 


 ここから遠い国エクティドから嫁ぐためにオパルール王国にやって来たアルモニカは、慣れない土地と気候、言葉、貴族達に悩ませられながらも必死に王妃になるための勉強をしてきました。


 王宮よりも王都にある邸の方が気兼ねないだろうと言われれば『お心のままに』と笑顔で応え、オパルールでの見聞と知識を高めなさいと学園への入学を促されれば『お心のままに』と笑顔で応え励んだ。


 オパルールの王子と釣り合う年齢、爵位、品格、そしてエクティドでもトップクラスの魔力を誇るアルモニカに是非とも来てほしいとオパルールの方から乞われた婚約話のはずだった。


 魔力も魔法の知識も乏しいオパルールはエクティドの知識と血を取り込み、魔法や魔術を学び、国を豊かにするために魔法使いを増やしたいのだとアルモニカは信じて疑わなかった。



 それが数ヶ月前、王子ディルクはアルモニカにこう言ったのだ。



『魔法が扱えるからというだけで傲慢な態度を改めない魔女アルモニカ・ミクロフォーヌ!貴様との婚約を破棄する!!』


『……は?』


 そこはオパルール王国に住まう貴族なら誰でも通える学園で、朝人通りが多い玄関ホールでわざわざ注目させてから叫んだ。

 いや、いつもよりも密集していたから王子が早く来ていた令息令嬢達を引き留めていたかもしれません。


 わたくしが王子の婚約者ということはほぼ全校生徒が知っています。

 顔と名前が一致しない者は若干名いるかもしれませんが、パーティーで同伴したことがあるから認知されてると見て間違いないでしょう。


 そしてわたくしが他国籍の令嬢ということも皆さん知っています。

 なので、いえそうでなくても噂話が好きな令息令嬢達は興味津々の表情で、ある者は緩む口を隠しもせずわたくし達を傍観しておりました。



 全校生徒が集まっていたわけではありませんが、友人の一人二人程度では勿論なく不特定多数の中での婚約破棄宣言は辱しめ以外何者でもありませんでした。


 怒りでうっかり魔法を暴発させそうなくらい震えましたが顔には出さずに済みました。

 ええ、わたくしはこれでも一応王子様の婚約者なので。王子妃予定の侯爵令嬢ですからちょっとやそっとでは動揺など顔に出ませんの。


 しいて言うならば、こんなことをしでかす婚約者はこちらも願い下げですわ。親どころか国のトップ同士が決めた云わば王命の婚約に異議を唱えられないだけの話なんです。


 なので婚約破棄自体は願ってもない吉報なのだけど宣言した場所が悪い。タイミングも悪い。配慮のなさが最悪だわ。


 何で家同士、本人同士だけの話し合いにしなかったのかしら。婚約〝解消〟にしないのかしら。そうしてくだされば喜んで応じましたのに。



 そうでなくても王妃教育は最終段階に入っているというのに。

 新興国だから今止めても毒杯を賜るような機密事項はほぼないでしょうけど、それにしたって四年も婚約していたのに情が無いんじゃなくて?



『あら、殿下。そのお言葉は有り難く承るとして理由をお聞きしてもよろしいかしら?

 ええと、そうですわね。卒業をしたらすぐ結婚式だからと慌てましたか?まだ学生気分でいたいという意思表示かしら?

 わたくしが好みじゃないと陛下に告げられましたか?殿下の好みは確かふわふわの巻き毛を頭の天辺で犬の耳のように二つに分けて結っているご令嬢だったかしら?お名前は確か……』


『わーっ!!なぜ知っている?!』



 知らない方がおかしいわよ。学園の中も外も四六時中べったりくっつけて歩き回っているんだから嫌でも目に入るし、報告でも確認してるわよ。

 その紙の厚さが今何センチか教えてあげましょうか?


 チラリと王子の後ろに控えていたツインテールのご令嬢を見ると彼女は分かりやすく肩を揺らし、涙目で王子に縋りついた。


『や、やめろ!!パルティーを苛めるな!!パルティーは可憐で優しくていつも温かく僕を包んでくれる最愛の者なんだぞ!!』


 何言ってんの王子様。暴露して自爆でもするつもり?


『ディルク~!!』


 あなたもあなたよ。男爵令嬢が国の王子を呼び捨てしてるんじゃないわよ。


『僕達は愛し合っているんだ!!貴様なんかに邪魔はさせない!!僕を愛してるというなら涙を呑んで諦めろ!!はっはっは!』


『ごめんなさ~い!アルモカカさん。え、違う?……長くて覚えられないからアニーでもいい?

 ディルクとアタシは真実の愛で結ばれてるの。愛のない婚約なんてお金が入ってない革袋と同じだわ。あなたも貴族なら潔く諦めた方がいいんじゃない?』



 こちらは相手が愚かでも簡単に破棄できない政略結婚なんですけどね?


 何を言ってるのかしら?と白々しい顔で眺めていたけど後日、この婚約破棄はなかったことになりました。


 王子が父王にかなり本気で叱られたらしいです。

 だって魔力が強いわたくしの血を入れて国を強固にしていく予定なのにそれを捨てようとしてるんだもの。そりゃ怒られるわよ。


 母国エクティドに届けば父が夜叉の如く怒って直ぐ様国王に直訴してくれただろうけど、即日実家へ送った手紙は丞相の手に渡り握り潰されてしまいました。


 報告されたら困るのはわかるけど情報操作甚だしいし、わたくしへの謝罪が丞相が持ってきた国王の手紙一枚だけ、というのはいかがなものかしら。


 それに王子からの謝罪の手紙も言葉もまだないんですけど。

 これで婚約を続けられるなんてよく思えるわね。



 初対面の時から王子は雑な方だな、と思ってましたけど本当に何もかもがお子様な方でした。

 エスコートも雑、ダンスも下手、会話も自分語りしかしない。


 母国から遠く離れたオパルールに来てから四年経ったけれど未だに贈り物がなければ手紙もろくに届いたことがありません。

 此方から贈ったものも代筆で〝受け取った〟旨しか返さない。


 会える機会は公式パーティーか学園だけ。

 そのどちらもろくに相手をしてもらえず、贈ったものを使ってもらえてるかも不明のまま、ずっと距離感を感じて婚約者を続けてきました。


 わたくし達は会話もなければ行動もほとんど共にしていない。婚約者らしいことなど一切していない。

 それでも王命だから、貴族だから結婚して彼を支えるために責務を全うすることになるのだろう、そういい聞かせて我慢してきました。



 それももう、限界を迎えそうです。


 わたくしはオパルール王国の国王から与えられた大きな邸で独り暮らしをしているのですが、父が不自由がないようにと家で雇っていた者達をたくさん付けてくれました。

 その中に隠密に特化した者達がいて、影達にアホの王子のこと『も』調べてもらっていたのです。


 愛がないのはこの際仕方ありません。わたくしも今更芽生えるものもありませんし。

 けれど礼節くらいは持ち合わせてほしいと思うのはおかしいのかしら。だってわたくし達はいずれ結婚してオパルール王国を支えていくのよ?



「どうするのかしら、これ」



 あの人本当に王子なの?と何度思ったことか。報告書を見て頭が痛くなり溜め息が漏れ出ました。


『婚約者候補を五十人に増やし、すべてと結婚して五十人の妻達のために後宮を作っている』


 白昼堂々婚約者の前で浮気を公開して、婚約破棄が有耶無耶になった後に出てきたものがこれなのかと思うと泣きそうになりました。

 わたくしまだ謝罪も言い訳も話し合いもしてないんですよ?


 大方、あの男爵令嬢を囲うための苦肉の策なのでしょうけど五十人も候補を作らないと囲えないなら諦めた方がいいんじゃない?としか言えない。税金の無駄遣いよ。

 国を傾かせたいの??と声を大にして言ってやりたい。何で誰も止めなかったの?


「ないわー…絶対ありえない」


 次の紙には現王妃が許可を出し、国王も乗り気らしいとあって天を仰いだ。

 わたくしの婚約破棄がなかったことになっても王子がわたくしに興味がないというのはこれで明らかになったというのに。


 一夫一妻のエクティド生まれには理解できないシステムで目の前が真っ暗になりそう。

 せめて正妃に子が産まれなければ第二夫人を娶る、というのならまだ理解できるのに。


 五十人もいたら手をつけない女性は確実にいるし、それが自分になる可能性もあります。

 それに王子の態度からして第一夫人はあの男爵令嬢で、わたくしはそれ以下になるのは必然でしょう。


 それを執事や侍女に漏らしたらみんな激怒してくれて、今すぐ帰国しましょうと進言してくれた。


 できればわたくしもそうしたい。



 今すぐにでも母国エクティドに帰りたかったけれど、王命である婚約を残したまま逃げればエクティドや実家のミクロフォーヌ家に迷惑がかかってしまう。

 白紙にするには破棄ではなく解消にしなければなりません。それを相談できる貴族が誰一人居なかったことであと一歩踏み出すことができませんでした。


 助言を仰ぐにしても手紙でのやり取りは検閲が入ってしまい、うまく伝えることができませんでした。

 単文しか送れない魔法装置か長距離用の伝書鳥を連れてくるべきだったと心底後悔しました。



 その後もハーレムの話が頓挫することはなく、現婚約者であるはずのアルモニカに許可も相談もなく着々と国内外から令嬢達を集めているという情報を得て睡眠薬と頭痛薬を飲む羽目になってしまいました。


 自分がどんどん塞ぎ込み、暗くなっていくのをわかっているのに直す気になれず、ぼんやり過ごしていると更に追い討ちを知らせる報告が届きました。



 そこには魔法教育で使用する予算をすべてハーレムにあてがうことが書いてあったのです。


 現在、魔法学校を建設しているのだけどそこを後宮として使うため実質魔法学校建設は頓挫したと書いてありました。


 この魔法学校はいずれ産まれるアルモニカの子供や魔力を持ったオパルール国内の子供達に使い方を学ばせる大切な教育機関でした。

 使い方がわからなくて暴発や事故での怪我を減らせるように学校を作り学べる場所を用意する、というのは婚約の条件のひとつになっています。


 そして学校建設、教師、教材でかかる費用を実家であるミクロフォーヌ侯爵家やエクティド王国も出資しています。

 それを自分達の性欲解消のために消費しようだなんて…!


 アルモニカは慌てて影を呼び寄せ、確認しましたが再度裏を取るように指示しました。彼らの仕事を疑うわけではないけどこれが本当ならこちらも黙ってはいられません。



 母国エクティドは魔法特化の血筋を多く保有し、魔法、魔術を国をあげて研究使用しています。

 歴史に名を刻んだ大魔法使いや大魔術師はエクティド出身、在住の者がほとんどです。


 そしてわたくしアルモニカ・ミクロフォーヌはその世代でももっとも強い魔力量を持ち、小さい頃は神童と謳われたこともある逸材と言われています。

 その逸材とエクティドの知識(価値)よりもハーレムの方が上だなんて!!



 あまりのことにわたくしの視界は真っ黒になりそのまま意識が遠のきました。







読んでいただきありがとうございます。

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