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パルティー・コラール男爵令嬢 (前)

閑話です。

かなりムカつくと思うので飛ばしてもいいです。

前後まとめてあげます。

 


 横顔。斜め前、左四十五度が一番可愛い。反対側も確認して最後に正面を見てニコッとスマイル。


「うん!完璧!」


 いつ見てもアタシって最高に可愛いわ!いつ王太子妃になっても問題ないくらい!


 最後に歯に何か挟まってないか黄色くないかを鏡で確認してから部屋を出た。

 歯の身だしなみって大切なんですって。それで婚約が破談になっちゃうくらい白い歯って重要なの。おじ様が紹介してくれた商人が言っていたわ。

 窓ガラスで自分の歯を確認してから身だしなみを整えてドアをノックした。



「パルティー。呼んだらすぐ来なさい。みんなが集まってからお前が来るまで一時間かかったぞ」


「ごめんなさぁ~い」


 うげげ。今日はお父様の機嫌が悪いみたい。逆らわないでおいとこ。


「お漏らしパルティー!まーた鏡とにらめっこしてたんだろ。お前好きだよな~自分の顔」


「漏らしてないもん!あれは生理現象!!仕方なかったの!それに鏡見るのは女の子なら当たり前でしょ?めちゃくちゃ可愛いじゃんアタシの顔!にぃにだってそう思うでしょ?」


「俺は顔よりも胸派だし」


「二人共煩いわよ」


「……へーい」


 うわ。何で長女のヒンディー姉様がいるの?アタシ姉様苦手なのよねぇ。昔は優しかったのにアタシが学園に入ってから急に冷たくなってさぁ。


 やっぱりディルクに見初められちゃったから嫉妬したかな?姉様の旦那様しょっぱい子爵だし。

 姉様の元婚約者は伯爵だったけどキス下手くそだったしなぁ。それに息臭かったし。姉様を想って教えて上げたのに泣きながら平手打ちされたの痛かったなぁ。


 姉様ってばあんなのでもいいなんて心広過ぎだと思う。子爵も子爵で地味で姉様には似合わなかったけど知らない間に結婚しちゃうしさぁ。



「あれ?帰ってきたってことはヒンディー姉様離縁したの?」

「これパルティー!なんてことを!」


 姉様も美人なんだからもっといい旦那様見つけた方がいいって!と笑みを浮かべて聞けばお母様に叱られた。なーんだ離縁して出戻った訳じゃないんだ。


「今日呼ばれたのはわたしのことじゃないわ。あなたのことよ、パルティー」


「え、アタシ?」


 アタシ何かした?と首を傾げれば次兄以外が重い溜め息を吐いた。そしてお父様は引き出しから手紙を取り出すと「これはどういうことだ?」とアタシに渡してきた。

 中身はソリッド商会のトラッドとの婚約破棄の書類みたい。あーこれかぁ。とうんざりした顔をした。



「トラッドがアタシのこと束縛するから婚約破棄してあげたの。約束を一回くらいすっぽかされたくらいで煩くてぇもう無理!て思ったの」


「あーあの平民の商会な。別れて正解じゃないか?お前に似ればまだマシだけどあいつ似の顔なんて絶対可愛がれねーだろ」


「でしょー?にぃにもそう思うよね?!子作りのことを考えるだけでうんざり…」


 ドン!とテーブルをお父様が叩きアタシ達は口をつぐんだ。


「それにはお前に過失があってそれをお前が認めたとある。その証人にジルドレド伯爵の名前があるのはどういうことだ?」


「しかももう一人は侯爵家であるミクロフォーヌ様。ご令嬢ですがオパルールでは侯爵家当主となっています。そのふたつの家に不貞を働いたと言われているのですよ」



 ええっと驚いた。あの時はトイレに行きたくてしょうがなくて話半分くらいしか聞いてないけどアタシが破棄されたの?アタシがするって言ったじゃん!


「それアニーさんの嘘だわ!それ全部嘘なの!!可愛いアタシを貶めようとしてるんだわ!!」


「だけど婚約破棄を認めたのは本当なのでしょう?」


「そー…だけど、違うの!アニーさんに騙されたの!トラッドがいいよ、って言ったから婚約破棄したの!アタシがしたのにアニーさんはアタシのこと嵌めたのよ!」



 うわあ!と泣くと次兄が慰めてくれたけど他の家族は優しい言葉をかけてくれなかった。何で?


「……さっきから出てるアニーさんって誰のことだい?」


 声をかけてきたのは長兄のお兄様。お父様に似てちょっと不細工だけどとっても優しいの!

 お兄様にも慰めてもらおうとアルモニカなんとかさんだと答えたら家族全員の顔が引きつった。え?男爵令嬢が仲良くもないのに愛称で呼ぶなって?



「え、だって、名前が言いにくいから『アニーさんでいいよね?』て言ったら許してくれたよ?」


「そ、そうなのか…?」


「お父様、騙されないで。パルティーはお喋りは得意でも目上の方に対してのマナーはほとんど出来ていません。入学前の家庭教師の先生に何度怒られたことか」


「だってあの先生が厳しすぎるんだもん!」


 ぷくぅ、と頬を膨らませればお母様が頭を押さえお父様が頭を抱えた。


「パルティー。もしかしてだけどその言葉遣いでミクロフォーヌ様に話しかけてるのかい?」


「ええそうよ。アニーさんアタシが相手してあげないといつもぼっちだし、ディルクとも婚約者なのに全然相手してもらえないからアタシが引き合わせてあげてるの!」



 お兄様が引きつった顔で質問してきたので元気よく答えたわ。だって本当にアニーさんは可哀想で捨てられ間際のダサいお嬢様なんだもの。


 あれ?でもこの間のアニーさんは別人だったわね。口答えも多かったし。そういえばアニーさんが持っていたあの扇子、アタシに似合いそうな扇子だったなぁ。ディルクに言ったらくれるかしら?


「その、ディルク、くんと言うのは?」


「やだお兄様ったら!ディルクはこの国の王太子のディルクに決まってるじゃない!忘れてしまったの?」


 顔色の悪いお兄様が泣きそうな顔で頭を抱えたのでどうしたの?と聞いたら次兄に頭を叩かれた。


「バカじゃねーの!お前!王子様に対して呼び捨てとか頭おかしいんじゃないのか?!」


「何でよ?!ディルクはアタシの旦那様になる人よ!ディルクがいいって言ったんだから頭を叩かれる筋合いはないわ!

 それにアタシはいずれ王太子妃になるの!アタシの頭を叩いたら牢屋に入れられるんだからね!!」


「うわっコイツ本気で言ってる」



 ドン引きした次兄が距離を取ったのでアタシはまた頬を膨らませた。王太子妃になったらにぃにの髪の毛全部毟りとってやるんだから!!


「……冗談かと思ってたのに」

「思うくらいならと諌めなかったツケがこんなところに……」


「お父様。これが現実です。パルティーは虚構と現実を見失った哀れな娘。これ以上人様にご迷惑をかける前に修道院に入れるべきです」


「何を言ってるの姉様!!アタシは王太子妃になるんだから修道院なんか行かないわ!!」



 ぐったりするお母様の横で「こんな多額の慰謝料どうしたらいいんだ……」とお父様とお兄様が頭を抱えていましたがヒンディー姉様がとんでもないことを言うので思わず大声をあげちゃったわ。


 だってアタシをディルクから遠ざけるってことでしょう?アタシが王太子妃になるから姉様ってば羨ましくてヒステリー起こしてるのね!


「だったら姉様も誰か素敵な殿方をゲットすればいいじゃない!ディルクはアタシのだけど他ならたくさん姉様のこと見初めてくれる人いるわよ!

 子爵の旦那様だって姉様のためならいいよって許してくれるわ!」


 と助言してあげれば姉様は見たこともないくらい顔を歪めてアタシを蔑んだ目で睨んだ。

 なによー。姉様なら『ナイスアイデアね!』て褒めてくれると思ったのにぃ。ぷくぅ。


 それからしばらくアタシは部屋に閉じ込められた。家族はアタシ抜きでアタシのこれからのことを話してるみたい。だからアタシは王太子妃になるから修道院には行かないって。


 え?婚約者はアニーさんだから無理?無理なのはアニーさんよ。だってディルクに全然これっぽっちも愛されてないもん。

 アタシが協力して話せる機会作ってあげてもアニーさんってばいつも失敗してるんだもん。あれじゃディルクだって嫌いになっちゃうわ。


 アタシは本当のことを話してるのに家族はなぜか『不敬罪で男爵家が潰れる』とか『まさかこんなに愚かだったとは』とか言って泣いちゃうの。

 何で?ディルクに好かれようとしないアニーさんが悪いんじゃん。アタシは王子様に見初められたんだよ?王太子妃になれるのに喜んでくれないの?



「学園でどんな噂が飛び交おうと、王子殿下や高位貴族の令息令嬢達がどう言おうとミクロフォーヌ様は侯爵家のご令嬢であり当主。

 そしていずれはオパルールの王妃になられるお方だよ。本来ならお前も私達も、お声をかけるどころか近づくことすら許されない立場なんだ」


「……お兄様の言ってることは難しくてわからないわ。でも淑女として恥ずかしくないように過ごしなさいってことは理解したわ」


 長兄は妹の暴挙を諌めたかったが、パルティーはわかったような顔をして一切理解しなかった。


 それをわかっていたのはずっと言い難い苦痛を味わってきた姉だけ。

 姉のヒンディーはパルティーに絆された家族が『反省しているから』と学園への通学を再開させたと同時に夫である子爵と共に国を出た。

 どちらも貴族籍を放棄し平民になり他国に渡ってやっと穏やかな生活を手に入れることができたという。






読んでいただきありがとうございます。

ごめんなさい。続きます。

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