07:絶望の朝
――半壊した窓から差し込む朝の光で、俺は目を覚ました。
どうやらあのまま眠ってしまっていたらしい。すぐそこには佐藤だったものが横たわっている。
――うじ虫がたかり、かなり悲惨な状態になってはいたけれど。
俺はそれに目を背けるようにして、静かに飛行機を去った。
外は朝だというのに焼け付くように暑い。釜茹で地獄を思わせた。
「佐藤……」
消え入りそうな声で彼を呼んだ。が、当然答える者はない。
これでもう俺は、本当の本当に独りだ。誰もいない、食料ももうないも同然だ。
どうすればいいのだろう。
俺は生きた亡霊のような気持ちで、砂漠を彷徨い歩いた。
コンパスの針がぐるぐる回っていて、もはや使い物にならないと訴えている。俺は苛立ち紛れにそれを投げ捨てた。
恐らく北と思われる方向へ、俺は歩いた。
が、もしかすると違うかも知れない。頭がふらふらしてあまり思考が回らないのだ。
「誰か、誰か……。俺を、助けてくれよぉ」
気が遠くなるほど、倒れないのが不思議なくらい進み続ける。
何のために歩いているのか、誰に助けを求めているのか、それすらわからないままに。
景色が変わったのは、その時。
一面の砂漠に緑が突如現れたのである。
俺は飛び上がって驚いた。もしかして何かあるかも知れないと、走って行った。
しかしそこに深緑はなかった。
ドラマなどである蜃気楼、つまり幻影だろう。それを実際に体験するなんて夢にも思わず、俺は絶望した。
希望が絶えたのなんて、ずっと前からの話だ。ただ単に無視しようとしていたそれが、すぐ目の前にやってきただけで。
俺は砂に崩れ落ちた。
もう動く気力なんてない。朝日が俺を無情に照りつける。このまま焼き殺されてしまいたかった。
「なんでぇ……、なんで俺なんだ? 俺が何したって言うんだ? 俺は何も……何も、してねえよ」
声に力が入らない。口の中が砂でじゃりじゃりする。
「もしも……もしも神なんてやつがいたらそいつはクソだ! クソくらえ! なんで俺を、俺たちを見捨てたんだよぅ……」
俺の叫びは、悲しいかな負け犬の遠吠えでしかない。
ふと天を見上げる。真っ青な空が、俺を嘲笑しているようだった。
その瞬間、ぐらりと大きなめまいがした。
――このまま、死ねたらいいな。
そう思いながら俺は意識を手放した。
サブタイトルが間違えていたので修正しました。