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03:待てども待てども

 ――その日も、次の日も、そのまた次の日も。

 何もない時間を過ごしたが、一向に助けはこなかった。

 一度だけ、ヘリが上空を飛んでいたことがある。

 手を振り大声を上げて、必死に知らせようとした。が、ヘリは気づかずに飛び去ってしまった。

 その時の悲しみは、今までの人生で一番深かったと思う。

「あれは恐らく、この飛行機を探しているんだろう。けど、砂漠のど真ん中なのに、どうして見落とすんだろうね。……参ったな」

 同感だった。

 あれから二日過ぎたが、以来ヘリや飛行機は一機たりともやって来ない。俺は、俺たちは、神に見捨てられたのだろうか。

「冷静に物を考えてみるんだ。それなら当然、神なんていないことがわかるさ。いたとしたらそれは、疫病神だの死神だの、そういった悪い神様だけだよ」

 佐藤はそんなことを言ったが、何の気休めにもならない。

 とうとう俺は、我慢の限界がきた。

「……死にたい」

 死にたい。

 死にたい。死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい。

 死んでこの地獄を終わらせたい。何もかもを終わらせて、楽になりたい。

 しかし故郷に残してきた物を置いて逝くことなどできるか。いいやできない。だから俺は、悶々と怠惰に時間をやり過ごしていったのだ。

 けれど、そんなことをしている場合ではなかった。

 油断、していたのだろうか。

 いいや油断じゃない。考えないようにしていただけだ。わかっていたのに、無視して、ないことのように思い込んでいただけ。

 ある日、佐藤が言い出した。

「あと三日したら、水も食料も尽きるよ」

 当然だった。

 飛行機に積まれているそれは、元々多くないはずである。基本、機内食が主だろう。だからここまで長持ちしたのが不思議なくらいなのである。

「選択肢は二つだ。一つは、このまま助けを待ち続ける。そしてもう一つは、もっと果てまで行ってみる。僕は一つ目がおすすめだよ? その方が確実だからね」

「…………」

 俺は迷いに迷った。

 恐らく、佐藤の選択肢の方が正しいのだろう。けれども俺はそれを選ぶことはできなかった。

「俺は、行ってみることにする。ここでじっと待ってるよりは、可能性があると思う。……多分」

「さて、それは僕もなんとも言えないが、仕方ない。君の言う通りにするよ」

 そうして俺たちは、持てるだけの水と食料を手に、どこへともなく歩き出した。

 向かうは北。佐藤の予想では、北の方に人がいるかも知れないということらしい。

 死体だらけの場所から離れられることは、ほんの少しだけ嬉しかった。毎日精神が削られるような気がしていたから。

 どこへ行くのかはわからない。しかしこれはもう、祈るしかない。

 人のある地に、辿り着けることを。

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