02:寂しい騒音
「おはよう」
「……」
翌朝、佐藤に起こされた俺は大きく溜息を漏らした。
昨日のことが全部夢であればよかったのに、やはりこれは現実でしかなく、今日も砂に囲まれた大地に二人きりだった。
「はぁ……」
まだ太陽は昇り始めたばかりだ。空が白み、まさに一日の始まりというふうだ。
「もう少し寝かせてくれよ」
「無理だよ。いつまでも寝てはいられないんだ。とりあえず、朝ごはんを取りに行こう」
ということで、またもや飛行機の中に行った。腐敗が始まった死体が俺らを出迎える。
「お前、平気なのかよ」
「いいや、僕だって何も思わないわけじゃない。けど、食料が必要なんだししょうがないよ」
相変わらず目を覆わずにはいられない俺なのだが、佐藤は気にせず機内をあさり、食物を手にした。
「こんなくらいで事足りるだろう。ある程度節約も考えないと」
「……そう、だな」
折り重なる死体を踏まないように踏まないように注意して、二人は外へ戻った。
食料などの限りがある中、永遠に二人ぼっちでいることはできない。
俺と佐藤はこの日、付近を歩いて散策してみることにした。
考えにくくはあるが、砂漠の中に集落などがあったり、井戸があったりさえすれば儲けものだからだ。
水だけを手に持ち、砂の上を歩き始めた。
――進んでも進んでも、砂漠は続く。
まるで悪い夢を見てるみたいだ。喉が渇く。目がヒリヒリした。
数時間歩き回ったが、街はおろか、井戸や川すら見つからぬ。俺は疲れ果て、砂漠に座り込んだ。
「やはり収穫はないか。だが不思議だね、ここらには獣がいない」
「水不足で死んじまったんだろ。ああクソ暑い」
何もない。本当に砂だけで、何もない。
吹き抜ける風はヒューと音を立て、うるさいくらいに寂しい音を奏でる。それは、俺の心を表しているようだった。
「帰ろうか」
「……ああ」
俺たちは手ぶらで元の拠点へ戻った。
無事に戻ってこられたのは、壊れかけのコンパスがあったおかげだ。これがなかったら、一歩も動けなかっただろう。感謝。
軽く昼食を摂り、また蹲る。
一体こんな空っぽの時間を、いつまで過ごせばいいのだろう。……せめて、日本に残してきた彼女といられれば良かったのに。
「行ってらっしゃい。楽しんできてね〜」
そう笑った彼女の顔が脳裏に浮かぶ。
ああまた会いたいなと、そう思った。
俺は佐藤に見えないように、そっと涙を流した。