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淡い光は精霊と共に  作者: 天宮時雨
1章 初めての精霊魔法
3/4

2話 この村はとても平和で

 グレン・セレナーデとしてこの村に住み始め数週間が経過した。


 その間で、いくつか分かったことがある。

 ここは国境であるがため行商人や観光で訪れるといったことはなく、大人と子供を含め数十人の人たちによってこの村は構成されていた。

 ニーナさんのおかげで村長と思われる老人への顔合わせは終わり、俺は一週間と立たず村になじんでいた。

 自分より年上の人はすでに大人であり、15歳ぐらいになると街の方に出て生活を始めることを聞いた。

 その結果、この村には村に戻ってきた人と子供たちしかいないようだった。村の子たちに初めは警戒されていたが今ではすっかり気に入られている。


「おにぃちゃん、あそぼーよ」


 こうして今では時間があるたびに呼び止められ、遊びを強要される。そのたびにニーナさんに助けを求めるように視線を向けるが


「遅くならないようにね!」


 そう言ってやるべきことをしようと歩みを進める。その言葉を言ったニーナさんは


(仲が良くてよろしい)


 と言わんばかりの笑顔をしていた。家に帰った時にも


「楽しかった?」


 と言って笑顔で迎える。毎日のようにそんな日々を過ごしていた。


 そんなある日、


「ごめんね、今日はグレンにやってもらいたいことがあるの。」


 と言って子供からの遊びの誘いを断った時があった。ニーナさんは俺の手を握って村長の家に向かった。

 村長の家に向かう理由を尋ねると


「村長が私に頼みたいことがあるらしいの。それにグレンには私がいつもどんなことをしてるのか知っといてほしくて」


 俺も気になっていた。子供たちと遊んでいるときに何をしているのか全く分からないまま過ごしてきた。

 初めて会った時に、魔法についても詳しいのにまだニーナさんについて知らないことが多い。

 無言のまま歩き、庭にたくさん咲く花のある村長の家に着き、話を聞いた。

 村長は長く伸びた白い髭を触りながら語り始めた。


「ニーナ殿、よく来てくれたのぉ。おぉ、今日はグレン君も一緒か」


「村長、グレンにそろそろ教えていこうと思ってまして」


 何をするのか全くわからないが、何か頼みごとをしようとしているように捉えれた。


「実は近くの森に犬型の魔獣が現れたという話をきいてのぉ、村に被害が出る前に対処してもらおうと思って呼んだまでじゃ」


「ちなみにその森の場所を聞いても?」


「この村から少し東にある森じゃ」


「……わかりました。終わったらまた報告に来ますので、失礼します」


 返答に少し間があったような気がしたが村長に一礼してニーナさんは俺の手を握り家を出た。

 一度、今住んでいる家に帰宅した。帰宅後にそそくさと準備するニーナさんは俺に


「これを腰に巻いてみて」


「これは何ですか?」


 ベルト状のものに3つの空瓶とポーチが付いたものを手渡してきた。


「これはベルトポーチて言って精霊魔法で使用する供物を入れておくものなの」


 ()()()()という言葉に反応して俺の目がキラキラと輝いた。

 そしてベルトポーチを身に着けると鏡に向かい自分の姿を確認する。

 魔法使いとなった思いが湧き出て思わずいろんなポーズをとってしまう。

 そんな俺の姿をしりめにニーナさんはそっと微笑んだ。



 高まる気持ちが落ち着いた頃に振り返るとニーナさんもベルトポーチを付けこちらを見ていた。

 その姿を見て


「もしかして、()()()()()()


「あれっ?言ってなかったっけ?わたしも精霊魔法を使う魔法使いだよ?」


 ニーナさんのベルトポーチの瓶にはよくは見えなかったが確かに物が入っているように見えた。


(確かにそれなら精霊魔法について詳しくてもおかしくはない)


 と思い、驚きつつも歩き出すニーナさんに付いていった。

 村から歩いて数十分かかる森に向かい歩き始める。

 道は整備され歩きやすかったが何の会話もなく二人の間の空気は少し気まずい雰囲気になっていた。

 思いつめていた表情をしているニーナさんに対して自分から切り出した。


「どうかしたんですか?」


 何か思う節があったようで少し間を開けて話し始めた。


「あんまり言いたくはなかったけど、グレンが倒れてたのも今向かってるもりだなって思って」


 ニーナさんなりの気遣いのように感じた。メルドリア王国に近づくにつれ辛い思い出を思い出させてしまうとでも思ったのだろう。

 しかし、今の俺には楽しい生活を送ることのできる居場所もあり、魔法を教えようとするニーナさんの存在もあるので今となっては辛い気持ちにならなかった。


「今はもう大丈夫ですよ」


 その言葉を聞いたニーナさんは


「そ、そう。」


 思いつめていた表情が和らぎ空気が少しだけ明るくなった気がした。


 そんな二人の歩く道の真ん中に蒼色に輝く1枚の羽根が落ちているのを見つけた。

 その蒼色に輝く羽根を見つめていると自分が引き込まれていく、そんな感覚を感じ取った。

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