表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡い光は精霊と共に  作者: 天宮時雨
1章 初めての精霊魔法
2/4

1話 目覚め

 目が覚めるとそこは見知らぬ天井だった。俺は、木造建築の家に置かれたベットの上で目を覚ました。

 どうやら追っ手に捕まってしまったことではないらしい。部屋に置かれた鏡に写った自分の姿を見て状況を考察してみる。

 怪我した場所は包帯が巻かれ、逃げている最中に木の枝で引っ破れてしまった服の代わりに、白い布生地の服を着ていた。

 頭も倒れた時に怪我をしたようで、黒髪の下に包帯が巻かれていた。

 もしも捕まっていたらそのままの状態で拘束されるか、もしくはすでに命を消されていてもおかしくはない。

 だが、自分が目覚めた部屋は綺麗に清掃され室内には家具のほかに所々に可愛いクマのぬいぐるみが飾ってあった。


(時刻は昼時だろうか?)


 部屋にある窓の緑色のカーテンの隙間から暖かそうな日差しが差し込んでいた


「ここは…どこだ?」


 その問いの答えを探すように部屋の扉をゆっくりと開ける。


 扉を開けた先に一人の女性が椅子に座り本を読んでいた。

 窓の日差しに照らされ、窓から入り込む風によってなびく銀髪、それに純白というにふさわしい透き通った瑞々しく白い素肌。

 凛とした表情の女性は、扉が開く音に反応して安堵(あんど)の表情を浮かべる。


「よかった。気が付いたんだね。積もる話はあると思うけど、まずは食事にしない?お腹空いてるでしょ?」


 彼女はそう言うと持っていた本をそっと閉じ、食事の準備を始める。

 確かに今まで逃げることに必死で物を食べる余裕は無かった。

 そう思うとさらにお腹が空き、


「いつまで立ってるの?とりあえず座ったら?」


 少し警戒していたが彼女には敵意がないことを感じ、言われたように席に着いた。


 並べられた料理は肉と野菜のバランスを考えた料理の構成で食欲をそそるものだった。

 料理を並び終えた彼女は席に着き二人で食事を始める。

 久しぶりに食べ物を食べた感想はとてもおいしかった。

 野菜のスープを口に運ぶとその温かさが身に染みわたった。

 それと同時に家族に捨てられた事と追われて何日も逃げた辛さを思い出し、自然と涙が零れる。

 その流れた涙は止まることなく、涙を流しながらも食べることを辞めなかった。

 彼女はそれを見ても何も言わずに食事を続ける。




 食べ終わるころには涙も止まり、彼女は食器を片付け始めた。

 片付け終え、再び向かいの席に座る。


「私はニーナ・セレナーデ。ニーナでいいよ。そして此処(ここ)は、ユースティア王国とメルドリア王国の国境にある村だけど、君の名前を教えてもらえるかな?」


(ふつうあの森に子供が一人でいること自体普通じゃないんだけど)


「……グ、グレン・ハイウォーカー。10歳」


「…ハイウォーカー、それで何があったの?」


 小さな声で家名を呟いた後、何があったのか何があったのか尋ねてきた。

 自分は事の発端である魔法適正のところから話し始めた。




「……それで、気が付いたらここに」


 話を聞き終わったニーナさんは、全てを納得したようで口を開いた。


「辛かったね」


 誰からもかけてもらったことのないその一言で自分が今まで我慢してきた感情が押し寄せてきた。

 自分の事を知ろうとしてくれた人がいなく、また涙が零れそうになる。

 そんな自分をニーナさんはそっと抱きしめた。

 次に、流れた涙はしばらく止まりそうになかった。




 そうして落ち着くのに時間がかかったが、涙も止まったところでニーナさんが話し始めた。


「グレン君が魔法適正で無色だったのにはちゃんと理由があるの」


 自分は魔法適性は使える属性を知るもので、今までに色が変化しなかった人を知らないということを伝えたがその回答はすぐに返ってきた。


「確かに、グレン君の住んでいたメルドリア王国の魔法適正は、確かに魔法の属性を知るというのに間違いはないの」


「ただ、国の人たちは例外を知らなかっただけなの」


「れ、例外?」


 自分は思わず問い返した。


「一般の魔法を使う人はその魔力に反応して魔法適正で属性がわかるんだけど、精霊魔法を扱う人は無色のままなの」


「【精霊魔法】って何ですか?」


 聞いたことのない魔法の名前に驚きを隠せない。


「精霊魔法というのは供物と呼ばれる物を精霊に捧げ、その力を借りて魔法を使うの。

 たから、メルドリア王国では使える人がいなくて知っている人がいなかったの」


「…その話だと自分は」


「精霊魔法を使う、ちゃんとした魔法使いだよ!」


 無能だと思っていた自分も魔法使いであることを知れた嬉しさと、家族の元に戻っても受け入れられないということを知り複雑な気持ちになる。

 ニーナさんはそんな自分を見て


「メルドリア王国では受け入れてもらえないかもしれない。だけど、今いるユースティア王国にはちゃんと精霊魔法も教えてくれる魔法学校もあるの。だから…」


「私と家族にならない?」


 その言葉を自分は承認した。そして、ここが新たな居場所となり、新しい家族ができた。


「今日から君はグレン・セレナーデだよ!」


 こうして魔法使いとしての生を受けた少年の物語が始まった。

1話を見ていただきありがとうございます。

次話よりグレンの魔法使いの物語が始まっていきますので

ご愛読してもらえれば幸いです!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ