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初めてのサークル活動!

 


  新歓コンパから一週間後。

 

  俺はサブカルチャー研究会今年度第一回目の活動に参加するため部室棟に向かっていた。

  …4限が一緒だった桜井さんと。


  「なんであたしの後付いてくるのよ!」

  「そんなつもりじゃ…サークルに行こうと思って…」

  「はぁ?高木くんサブ研入るの?」

  桜井さんは嫌そうな目で俺を睨んだ。

  「ま、まぁ…新歓コンパ楽しかったし先輩達もいい人だったから…」

  「ちっ…」


  今舌打ちしましたね、桜井さん…


  不機嫌そうに歩く桜井さんの3m後ろを歩いて部室棟に向かっている。

  今日もハーフツインテールというのか、サイドの髪をツインテールに結い上げ後頭部はストレートでロングヘアのオタクの好きな髪型BEST2を欲張ったサラサラツヤツヤの黒髪が眩しい。

 

  服装もフリルの付いたブラウスにアイドルのような赤と黒のチェックのスカート、そして絶対領域が眩しいニーハイソックス。ちなみに今日のニーハイには猫はいない。

 やはり大学ではあまり見かけない目立つコーディネートだ。…似合っているが。


 なんてことを考えてるうちに部室に着いた。


「こんにちは~!1年の桜井で~す!」

  桜井さんは部室のドアを開けると俺と話している時より1オクターブ高い声で挨拶した。

  その鼻にかかったアニメ声はどこから出しているんだ。


  「こ、こんにちはー。1年の高木です。」

  続いて俺も挨拶をして部室に入る。


「桜井さんおはよー!高木くんも!」

  「おー!来てくれてよかった!」

  「よかったよかった!じゃあ代表がくるまで空いてる椅子に座ってよ!」


  先に部室に来ていたサークル員達がこちらを見て声を掛けてくれた。

  10畳ほどの部室には既に8人がいて新歓コンパではいなかったか(と思う)人もちらほらいた。


  俺が適当な席に座ると桜井さんは3人で固まって盛り上がっている先輩の輪にごく自然に入っていき何やら談笑している。恐るべきコミュ力である。

  何となくスマホでソシャゲを始め10分程たった頃扉が勢いよく開かれ新歓コンパで代表と呼ばれていた人が入ってきた。


  「遅くなってすまん!お!新入生も来てくれたみたいだね!今年度最初の活動をはじめよっか!」

  部屋を見渡した代表が上機嫌で棚から書類を取り出すと俺と桜井さんに渡した。

  「新入生の2人にはとりあえず入会届けを書いてもらおうかな!入会金とか部費はないから安心して!」


  受け取った入会届けを記入するため、ペンケースを取り出そうとカバンの中をガサガサしていたら姫川さんが代表に質問した。


  「あのぉ~新入生2人って…私と…高木くんだけなんですか?」

  …高木くんの部分だけ一瞬声が低くなった様な…しかしその質問は俺も気になる。


  代表は少し悲しそうな顔をすると、

  「新歓は…無料でご飯食べれるからって来る子も多いからね…それかうちのサークルが思ったより限界オタクだらけで引かせちゃったのかも…ハハ」

  と言った。


  部室を軽く見渡すと…確かにパッと見でオタクだと思うようなメンバーが大半を占めているし、さっきからチラホラ聞こえてくる会話もマニアックな用語や

ネットスラングが飛び交っている。



「え~そんなことないですよぉ!先輩達は皆優しそうで素敵なサークルです!私も入会しまぁ~す!」

相変わらず桜井さんは先輩に媚を売りながら入会届けを記入し始めた。

このままだと新入生は俺達2人だけだ。

サークルで一般教養科目の課題を助け合ったりする友達を作ろうと思っていたのだが、桜井さんとはなかなか厳しそうだ…



「書き終わったら貰うね。」

俺は学部と名前を書いた入会届けを代表に渡した。

少し遅れて桜井さんが提出したのだが…



チラッと見えてしまった桜井さんの書類…その文字を見た俺に衝撃が走った。



桜井さんの丸くてアンバランスな…なんと言うか女子特有の崩しが入った文字、見覚えがある。

俺が高校生の時…体育館裏への呼び出しの手紙と似ている…今も机の中にあり、たまに読み返しては切ない記憶が蘇る。


いや、でも女子は皆こんな感じの文字を書くのだろうか?それならこじつけも甚だしいよな…


「ちょっと…何見てんのよ。私変なこと書いてないと思うんだけど…」


桜井さんは入会届けをガン見して固まる俺に冷たい視線をぶつけながら嫌そうに言う。

俺にもアニメ声で優しく対応してくれ。


勇気を出して聞いてみることにした。

「あの…桜井さん、もし違ったら…申し訳ないんだけど…」

「何?いいから早く言ってよ」

早くしろと言わんばかりだ。

「桜井さん…中学生の頃…」

言いかけると俺にだけ見える角度に向き直り、かなり怖い顔で睨みつけ言葉をさえぎった。

「高木くん。その話は帰りに。」

「あ、わかった…」

他の人に聞こえない静かだがドスの効いた声の桜井さんの威圧感に負けて言葉を飲み込んだ。

帰りの電車が同じだからその時に話せばいいか。



俺達が書いた入会届けをファイルにしまうと代表はホワイトボードの前に立ち一言。

「さあ!これから第一回目のサークル活動を始めようか!」


他の先輩達も代表に注目する。


「じゃあとりあえず…」

どうしたのだろう?代表は口ごもった。


「…ええと新入生には申し訳ないんだけど、これといった活動はしてないんだ…」

「「ええ!?」」

意図せずに桜井さんとハモってしまった。

申し訳なさそうに眉を下げてモゾモゾする代表を見兼ねたのか他の先輩が助け舟を出した。

「去年の12月にサークルを作ったものの、知り合い繋がりのオタクが集まって思い思いにアニメ観たりソシャゲしてるうちに4月になってたんだ…」


つまりオタク友達が集まってオタク活動をしていたということか。

それはそれで楽しそうだが、わざわざサークルとして部室棟の部屋を使ってまでやるには…というのは先輩達も感じているのだろう。


ここまで小首を傾げて話を聞いていた桜井さんが口を開いた。

「それならイベント参加なんてどうですか?」

新歓コンパの時に『オタク版イベントサークル』を目指してるって話していたし妥当だ。

代表も桜井さんの一言になにか閃いた顔をした。

「なるほど!皆でオタク系のイベントに行く感じだね。何かあるかな…」

すると他の先輩が一言。

「俺、来週末のアニメジャポンに行こうと思ってたんですけど皆で行きます?」


ちなみにアニメジャポンとはアニメ会社を中心に玩具メーカー、イラストや声優の専門学校などが出店し新作アニメや関連グッズ、学校の体験会などを行っている。アニメーターや声優を招いたイベントやここでしか買えない限定グッズも販売されるため来場者も多く賑わうイベントだ。


「おお!じゃあ予定空いてる奴はそれに行こう!」

代表の一言でサブカルチャー研究会はアニメジャポンに行くこととなり、第一回目の活動では待ち合わせやどのブースが気になるかなどを話して解散となった。


俺も桜井さんもアニメジャポンに行くことになったが、何人かのサークル員は桜井さんが参加すると知り

「女の子とお出かけなんて…初めてだ…」

「服を買いに行く服がない…」

と、アニメジャポンに行くという目的を忘れてる人もいるが…それが聞こえているであろう桜井さんは満更でもなさそうだった。





帰りの電車は前回と同じく俺と桜井さんは二人きり。

ホームで一緒に電車を待っている桜井さんとはお互い無言だ。

今ならサークルのメンバーや同じクラスの人は見当たらない。思い切ってさっき言いかけた質問を再びぶつけてみることにした。



「桜井さん、さっき言いかけた話なんだけど…」






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