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姫は俺だけ嫌ってる!?

 

  「また新入生が来てくれた!これでうちのサークルも安泰だ!空いてる席座って座って!」

  代表がハイテンションで遅れてきた新入生の女の子を席に座らせた。

  しかし代表は座っている人数を今一度数えると困り笑いをしながら一言。


  「ありゃー?予約人数間違えたかな?1人多い?」


  事前にDMやメールで人数を確認して予約人数していたのだろう。

  誤解があったとは言え、本来は新歓コンパのメンバーにカウントされてないはずの俺がいるせいで迷惑を掛けてしまうのは申し訳ない。


  「あ、あの…俺、新歓コンパの申し込みしてなくて、やっぱり帰ります…」


  俺が帰ろうとすると代表が慌てて、引き止めてくれた。

  「いやいや、気にしないでよ!せっかく縁があって来てくれたんだから!一人分くらい俺らで奢るからそのまま参加してってよ!」


  「そんな悪いですよ…」


  「いいからいいから!俺のワガママだと思って付き合ってよ!」


  奢ってくれるというのはとてもありがたいが、何より俺が帰るのを引き止めてくれたというのが嬉しい。

  代表に惚れてしまいそうである。

 

  「じゃあお言葉に甘えて…」

 俺はそのまま参加することにした。


「ありがとう!じゃあ今いるメンバーで全員だね!とりあえず乾杯!」


  「「「カンパーーーーーーイ!!!」」」


  代表が音頭を取り全員で乾杯する。



  「じゃあ改めて自己紹介していこうか!って言っても皆もうしちゃったから…遅れてきた女性の新入生さん!簡単に自己紹介してもらってもいいかな?」


  「はい!理工学部1年の桜井美優です!アニメとか漫画とか…ゲームも好きです!あとは…イラスト描いたり、まだやったことないけどコスプレとかも興味あります!よろしくお願いしま~す!」


  桜井さんはアニメ声でハキハキと喋り、明るくて社交的なオーラが出ている。

 

  ここで少し疑問が浮かぶ。

  可愛くて社交的な女子があえてオタク男子が集まるサークルに入るだろうか?

 俺がこの子だったら間違いなく、今すぐツインテールをやめて女子アナのような服を着て緩めのテニサーに入りイケてる男子学生と交際を狙うだろう。



  …この時、俺は想像してしまったのだが、もしかして桜井さんはネットで噂のオタサーの姫と言うやつだろうか?

  いや、でも本当に趣味の合う友達を探しているのかもしれないし決めつけは良くない。

  何よりオタク同士ということで可愛い女子と仲良くなれるかも…とここにいる全員が思ってそうである。



  「桜井さん、今日は楽しんでってね!1年生は今のとこ3人いて…理工学部なら高木くんと同じだね。」


  桜井さんの自己紹介を聞いた代表が俺の方を見て言った。


  「あ!1年の高木です!理工学部一緒なん…」


  俺が桜井さんに話し掛けると、桜井さんは俺の顔を見て一瞬だけ目を開き眉間に皺を寄せたような気がした。

  驚いて言葉に詰まってしまう俺に、ハッとし桜井さんは無理に口角を上げると心なしか自己紹介の時よりも低い声で、

  「…よろしくね。」

  と一言呟くと俺から顔を背け他の新入生と話し始めてしまった。

  先程のにこやかで明るい表情に戻って談笑している。



  桜井さんに何か気に触ることをしてしまったのか不安になってきた。

  しかし俺は自分が理工学部であることしか言ってない。俺と同じ学部なのが顔をしかめるほど嫌なのだろうか…





 ♦︎


 

「それじゃ今度は部室で!お疲れ様ー!」



  その後は桜井さんと話すことは無いまま新歓コンパ終了の時間となった。


 同じ新入生や先輩達と高校の頃流行ったアニソンの話などをしていたらあっという間だった。

 大学生になったら陽キャリア充になろうと今までの自分と正反対のキャラクターを目指そうとしていたが、やはり俺はオタク仲間とワイワイするのが1番楽しいみたいだ。


  既にサークルLINEに招待して貰い、ここのサークルに入る意志を決めた。

  と言っても入会金や部費などは必要なく、今のところ週に1~2回の活動日に予定のないサークル員が部室棟の部屋に集まって雑談やゲームをするのがメインのようで、バイトや他のサークルとの掛け持ちも問題ないそうだ。



  帰り道は駅までみんなで歩いたが、俺と同じ路線を使うのは桜井さんだけだった。

  流れでそのまま同じ電車に乗ったもののお互い無言で何とも気まずい空気が流れる。


  「…ねぇ、高木くん。」

  桜井さんが俺の顔を見ず話しかけてきた。


  「ど、どうしたんですか?」

  びっくりして声が裏返ってしまった。


  「高木くんさ、高校の頃よりなんていうか…変わったよね。髪型とか雰囲気とか。大学デビューってやつ?」


  「あ~大学デビュー目指してたんだけどやっぱり上手くいかなくて…って…え?」


  あまりにも自然な会話だったため違和感に気づくのが遅れてしまったが、俺は桜井さんと今日初めて会ったはずである。

  『変わったよね』ということは高校時代の俺を知っているということなのか?

  少なくとも高校3年間で同じクラスになった記憶は無いし、俺は帰宅部でそもそも女子の友達はいなかった。


  「え、えっと…ごめん。俺、桜井さんと会ったことって…」

  もし俺が忘れているだけだったら申し訳ないと思いながら聞いてみた。


  「…分からない?」

  桜井さんが俺をちらっと見ながら言った。

 

  今一度脳をフル回転させて記憶を辿ってみたがやはり

  記憶にない。

  もしかして別の世界線の話とかじゃないよな?


  「ごめん、ホントに思い出せない…っていうか今日が初めて会ったんだと思うんだけど…」

 

  「そう。そう思っているんならそれでいいよ。じゃあ私はここで降りるから。」

  桜井さんが溜息混じりに俺から目線を外すのと同時に電車が駅に止まり降りる準備を始めた。


  「あ、お疲れ様…またサークルで…」

  桜井さんは話しかける俺をガン無視で扉へ向かって歩いていった。



  俺は早足で電車から降りていく桜井さんの後ろ姿を眺めていた。

  あの後ろ姿、何だか見覚えがあるような…まあ気の所為だろう。

 

 

 


 

  残念ながら俺に桜井さんとのワンチャンフラグは立たないようだが、今日出会ったサークルの人達は良い人ばかりで話も合いコンパはすごく楽しかった。

  あの人達とこれからも仲良くしていきたい。

  次の部室棟での活動にも参加しようと思いながら帰宅した。


  つい3時間前にイベント系サークルの新歓で地獄を味わってたことが嘘のように軽い足取りで帰路についた。



 

 

 

 

 

 

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