謎の真実
~再生された英雄譚~
ピィ――――――――――
室内に大きな音が鳴り響いた。
「絲璃藍、こちらでの死亡、および消失を確認しました。」
「えぇ、これで、すべてうまくいったわ。
あなたにも迷惑をかけたね、御古都さん。」
一人は若い女の人。
そしてもう一人は年老いた老婆の声。
心拍停止を知らせるその音と共に、彼女たちの声が室内に響く。
「本当に助かったわ、これで、あの人の元に安心していける。
あなたには本当に迷惑をかけたわ、私たちの寿命もこれで終わり。
この後は誰にも何も言わず、燃やしてくれて構わないわ。」
これは老婆の声である。
「それにしても、本当にこんなことがあるなんて―――――」
「このことは、絶対にだれにも話してはいけない、わかってるね。」
「はい、承知しています。」
続いて女性の声にきつく忠告をする老婆の声。
ドシャッ―――――
っと、突然後ろで何かが倒れる音。
振り返るとそこには蛻の殻になったおじいさんの姿。
「ほんと、ぎりぎりだったわね。」
老婆の声には悲しみも優しさも、何も感じられない。
「それでは、私ももう逝くわ。
この我楽多も、すべて処分して何もない状態にね。」
その言葉のすぐ後に、おばあさんも倒れて動かなくなった。
カランッ―――――
おばあさんのすぐ横にはさっきまで彼女が握っていた、細長く、先にはきれいな装飾が施された杖が落ちている。
それを拾い上げ、ただの金属でできた我楽多のベッドモドキを杖で殴る御古都。
「頑丈だけが取り柄の金属でできたベッドは粉々、それに比べこの細いだけの杖は傷一つついていない。
杖自体の原料も、原理がわからないがなぜか浮いている先の装飾も、意味不明。
本当にこんなものが...」
ぶつぶつとつぶやく彼女はその杖が次第に腐り、【ドルトロント】同様我楽多になるのを確認し、ため息を一つ。
「この二つの遺体、それとこの部屋にある我楽多をすべて片付けて。」
そう言って握っていた鉄くずを投げ捨てる。
彼女の言葉に反応した執事たちは、手際よくそれらを片付けていく。
数分にしてその部屋は何もなかったかのように綺麗になり、あとには彼女一人が残された。
「さぁ、忘れましょう。」
彼女は彼女の世界を歩む。
未知の技術や物質によって世に名を知らしめた未知のグループ会社。
それはこれからも世に名が轟き続けることになるが、そこに絲璃藍という人格が存在していたという小さな歴史は、何一つ残らずに抹消されていった。




