二、アリーチェ
そう、この美しい場所。近くには小川が流れ、北側には山が連なる。
でも、私たちにはここがどこかすらわからない。
気がつくと、ここにいた。地球上のどこかなのだろうか?
スズメやカラスや川魚。
雑草や野の花、木々などの植物。
明らかに見知ったものに見える。
ここは……ここは、ママがどこかにいる、同じ世界、同じ時間なのだろうか?
それとも……よくわからないけど、映画などである『次元の歪み』とかで、他の世界に来ているのかしら?
あの時——私達がここに『来た』時、私達は老若男女や肌の色さえ問わず総勢十三人だった。
なんとか言葉は通じた。
どうやら皆、ここに来る直前、近くにいたようだ。
イッチは一月前、ここにやってきた日本人だ。
この『出現』は、第一陣の私たちから始まり、イッチ達で三陣目。
イッチたちが来た時は五人程度で、しかも皆日本人だった。
言葉があまり通じないが私たちの日本人に対するイメージがそもそも良いので、一陣の私たちとうまくやっている。そのイメージは、ユキさんに負うところも大きいだろう。
第二陣の時は、陽気な二人の黒人男性で、フランス語を話したためすぐに一陣の私たちに溶け込んだ。
そもそもフランス語とイタリア語は、訛りが強くてお互いに少々わかりにくいだけの一つの言語のようなものだし、何より黒人の人たちは言葉を習う能力に長けているイメージがあるから……。
でも……。
一体、何がどうなっているのだろう。
何が起こっているのだろう。