第弐話 素晴らしく運がないな。俺は。
本日二度目の投稿です。
さらに駄文…
追記:修正作業その2です、かなり変えましたよ。
「というわけで、貴方は死んでしまいました」
「いやどういうわけだよ」
真っ白い空間の中で、目の前にいる女性から発せられた言葉の意味が解らず頭を抱える。
俺は、さっきまで異世界召喚とやらに巻き込まれていたはずだ。
はずなのだ。
それがどうしてこう……なんというか、転生の間のような場所に?
「……どういうわけも何も、貴方は死んだのです。それ以上でもそれ以下でもありませんよ」
「……せめて死因を教えてくれ」
色々聞きたかったが、まずは死因を尋ねてみる。
もしかしたら俺の記憶にないだけで、転移先で何らかの理由で死んでしまったのかもしれなかったからだ。
珍しくシリアスな雰囲気を醸し出した俺に、目の前の女は表情一つ変えることなく(どことなく不機嫌そうなのは何故だろうか)言った。
「テディベアです」
「そうか、テディベアか…それは仕方ない………って、は?」
「テディベアです」
この女は、今なんて言った?
全く表情筋に変化が見られない女性の顔を二度見してしまう。
しっかり二度もテディベアだと言われたが、信じられない。
俺がそこまで貧弱に見えるのだろうか。
……いやいや、もしかしたら俺の記憶にないだけで、異世界には動く強いテディベアが居たのかもしれない。
ソイツに向かって俺は勇猛果敢に戦いを挑み、皆を守って戦死したんだろう。
そうに違いない。そうあってくれ。
「言っておきますが、ただのテディベアですからね?子供向けのお人形です」
「やっぱりかぁあああああああ!!」
椅子から立ち上がり、絶叫する。
うん、予想はしていたけど、やっぱりただのテディベアか。
動く強いテディベア(ゾンビ系)を願った俺が馬鹿だった。
「……逆に、なんでテディベアで死ぬの?」
「…あなた方を召喚するために使用された術式は、その術式を発動した場所と同じ座標にある別世界の生命体を召喚するというものです。ですがその術式はかなり低レベルなもので、もしその魔法陣の上に一定以上のサイズの物体があれば、転移してくるはずの生命体の構成が不可能となり、死に至ります」
「…要するに、魔法陣の上にテディベアがのっかって、そこがちょうど俺の居た場所と座標が重なってたって事?」
「そうですね」
ひ、ひどすぎる。これはもはや逆に運がいいような気がしてきた。
いや、死んだのに運がいいってどういう事?って感じだけど。
「まさかあそこまでピッタリ一致するだなんて誰も予想しなかったでしょうね。ここまで不幸だと逆に幸運では?」
「うん、ナチュラルに心読んだね今」
「………そんなあなたには、一つだけ救いがあります」
「あ、話進めるんだ」
まさかのスルーであった。
だがまぁ、ここで俺の死因についての話をしてグダグダと時間を延ばすより、この後の俺の処遇についての話が必要だ。
「あなたは、異世界転生と言う言葉をご存じですか?」
「キター!!そうそう、転移が駄目なら転生すればいいじゃないってよく言うもんね。わかるよその気持ち」
「………わかっているなら話は早いです」
「よし!待ってろ楽人+その他大勢!俺も行くぜぇ!!」
「が、あなたは私の最終審査を突破できませんでした」
瞬間、俺の思考は完全に停止した。
今、なんて?
最終審査?聞いてないよ?
油の切れかかったロボットを彷彿とさせる動きで、ゆっくりと女性の方を見る。
見たところ、何か先程よりも不快感を隠そうとしていないように見える。
「本当なら、あなたが適切な態度を取れれば、すぐにでも転生させてあげれたんですがね」
「え、何が駄目だったの」
「わからないんですか?」
心底軽蔑したような目でこちらを見てくる女性に、割かし本気で考え込む。
………あ、もしかして。
「敬語?」
「そうです。他には?」
「えぇ…他ぁ…?」
流石にもうわからない。思い当たる節が無いのだ。
知恵熱を出し始めた俺に、女性はゴミを見るような目を向けつつ溜息をついた。
「わからないのならいいです。ただ本当に救いようが無いなと思っただけですので」
「それ良くないやつだよね?あ、いや、ですよね?」
初対面で敬語じゃなかったのを嫌悪されているとわかったので、しっかり敬語に直す。
しかし、もう手遅れのようだ。
「……黙りなさい。最高神相手にこれほどまでの勝手狼藉を働いておきながら、尚もその態度……万死に値します」
「いや、俺ってもう死んでるんだけど」
「だから黙りなさいと言っています」
どうやら、今は口を開いてはいけないらしい。
少しイライラしてきたが、まぁそれは許容範囲だ。
「そもそもです。あなたについての情報をいくらか見させてもらいましたがなんですかその生き方。人として最も愚かで穢れて堕落しきった生き方をし、周囲の人間をなんの感慨もなく誑かし、挙句は」
「お前さっきから何なの!?失礼だからな!?」
流石にこらえきれずに叫ぶ。
黙って聞いていれば愚かだの穢れてるだの堕落しきっただの言いたい放題じゃねぇかこの野郎。
俺はそんな事した覚えは無いし、何より初対面のコイツに言われる筋合いはない。
「そういうところですよ……まぁいいです。理由や欠点について話したところで愚鈍なあなたに理解できる等とは毛頭思っておりませんでしたしね……結論だけ言いましょう。あなたは…」
一度言葉を区切り、女性は指を鳴らした。
すると、俺の足元から『ガコンッ』と何かが開かれるような音が聞こえてきた。
恐る恐る足元を見てみれば、なんということでしょう。
「匠の粋な計らいー!?」
足元に、大きな穴が開いているではありませんか。
叫びながら落ちていく俺に、女性はいい笑顔でこう言ってきた。
「地獄行き、です」
「うるせぇ!いつか絶対復讐してやるからなこの■■■■!!」
俺の捨て台詞は、どうやら公共の電波に乗せられないレベルのモノだったらしく、天からの伏字音によってかき消されてしまった。
つくづく不幸である。