第壱話 平穏は唐突に終わるもの
タイトル詐欺はできるだけしたくない
初投稿です
追記:書き足しました
聞き慣れた学校の昼を知らせる鐘(電子音)を耳にしながら、俺こと有月 魔裟斗は本日何度目かの溜息をつく。
つまらないな、と。
唐突で悪いが聞いてくれ。親がかなりの厨二病…いや、幼心を忘れないと言っておこう、そのせいでつけられた名前のせいか(別に俺は某ボクサーを馬鹿にしているわけではない)、それとも親による英w才w教w育wのせいか、俺はこの何気ない日々にどことなく、言いようのない不満を抱えていた。
いつも通り、この後も授業受けて、帰って唯一の親友飯塚楽人とゲームしたりする。そんな昨日とほとんど同じことをするんだろうということに。
それが一番という人もいるが俺はそうは思わない。できることならもう少し心躍るファンタジー展開があってもいいんじゃないかと切に思う。
「はぁー。異世界に飛ばされたりしねぇかなぁ…」
そんな毎日に飽きた故か、俺が最近読んでいる小説によくあることを呟いた。
「なんだよ魔裟斗?何を言うかと思えばいきなり変な事言いやがって。」
俺の隣に座っていた親友、楽人にからかわれる。
それで若干不機嫌そうな顔を取り繕い、楽人に文句を言おうとした。
そう、その時だった。
教室の中心辺りから魔法陣のようなもの…いや、魔法陣が広がり、魔法陣から出た光が教室全体を包んだ。
クラスメイト達(仲はいいが、基本的に話したりはしない。中距離よ中距離)は驚いて何もできていないもの、すぐに教室から抜け出そうと扉の前で押し合っているもの、こういった状況に遭遇するのを俺のように期待していたのか受け入れているものなどとさまざまだった。
「皆さん!落ち着いて逃げ…」
副担任の声を遮るように甲高い金属音のような音が響き、全員が耳をふさぐ。それは俺も例外ではない。
しかし、俺は呑気にもあることを考えていた。
これはもしかしてもしかしなくても…異世界召喚!?と。
…床の魔法陣が、紅く危険な色を放っていることに気づくことなく。
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「これから…始まるのだな。」
「えぇ、私たち人類の希望が…今呼び出されるのです。」
豪勢な衣装を身にまとった老夫婦が、目の前である儀式を行おうとしているところを見ながら感慨深そうに語り合う。
初老のその男の目には涙が浮かんでおり、隣の女の口元はまるで明日どこかに連れて行ってもらえる子供のような無邪気さを感じさせるように緩んでいた。
しかしその反応も仕方がない。
今彼らは、今まで前例のなかった異世界からの勇者召喚を行っているのだから。
異世界にいる勇者の存在が知られたのはこの世界の暦では百年前からである。
魔王を名乗る男が世界を支配しようとその猛威を振るっていた時、ある王国に突如として現れたジャージなる服を着た不思議な男。その男こそがその世界で初めて確認された勇者である。
その男は、その国を襲った魔物の群れにたった一人で立ち向かい、手にした大剣と光の魔法で敵を殲滅していった。
その男は、自らの存在や力について訊かれたときにこう答えたという。
「女神さまが…美しい女神さまが俺をここに送ったんだ。この力を与えて。」と…
その後も様々な場所で別世界からやってきた勇者たちは確認された。
中には戦う力がなかったものや、悪逆非道の限りを尽くした者もいたが、この世界の者たちは異世界より現れいずる者達を慕った。
そんな自分らの希望である勇者たちを人為的に呼び起こそうとしているのだ。
「見ていてください、お父様、お母様…必ず成功させます!」
力ずよく言った少女は、発言通り老夫婦の娘であり、この国の王女である。
そのことから初老の男は国王であり、女の方は女王であることがわかる。
閑話休題。
王女は今回の勇者召喚の儀に参加しており、この国有数の魔法使いや魔導士(似ているようで違う)達と一緒に大規模な魔法を発動することになっている。
そして今、その時が訪れる。
「【勇者召喚!】」
中心に立つ白髭の老人が呪文を叫ぶ。すると、広間の床が黄金に光輝いた。
「おぉお!ついに成功か!」
初老の男が声を荒げる。
しかし、予期せぬことというものは必ず起きる。
「きれぇ…」
吸い込まれるように魔法陣の方に歩いて行ったのは、今年五歳になった国王の孫である。
「下がりなさい。」
そう言いながら、女王は孫を抱きかかえ元居た場所に戻った。
それだけならよかったのだ、それだけなら。
「おばあ様、僕のテディベアが…」
「それくらい後で…」
瞬間、魔法陣の色が危険を感じさせる紅色に変わった。
「な、なんだ!」
「…あれはっ!」
そう言って若い男が指をさしたのは魔法陣の中。
正確には魔法陣の中にあるテディベアを指さしていた。
実は、先程女王が孫を抱きかかえようとした際に少し抵抗され、その時にテディベアが魔法陣の中に投げ込まれてしまったのである。
その結果、魔法陣に異常が発生してしまった。
万事休す…そう思った矢先。
「…ここは…?」
「っ!成功したぞぉおおおおおおお!!」
魔法陣が一際輝いた次の瞬間、魔法陣が展開していたところに複数の人がいた。
…成功である。
感極まって涙を流していた国王だが、すぐに召喚した人たちの方に向き直り語りかけた。
「よくぞ来てくださった勇者たち!…いや、我々が無理やり呼び出したんだがな。…こちらの都合で召喚しておいて虫がいいのはわかっている。だがどうか!私たちと共に戦い、魔王を討伐していただきたい!」
「…いや、それは良いんだけどよ…じゃなくていいんですけど…」
国王が恥を忍んで頭を深く下げると、一人の男が話しかけた。
その男は楽人。魔裟斗の親友である。
召喚されたのは魔裟斗のクラスメイト達だったのだ。
「…どうかしましたか?」
「…俺の親友、魔裟斗がいないんだけど…ですけど?」
「「「「「「「は?」」」」」」」
玉座の前で、異なる世界で生きてきていた者たちの声が一つになった、貴重な瞬間であると皆は語る。
修正しても読みにくいという現実…