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こころのちぎり‐1‐
「椛。俺の背はそんなに大きくない」
「いや、あんたは大柄なほうだろ」
「……例えだ……。頼りづらい背だと思っている」
「まっ、そうだね」
「だが頼れ」
「……命令かい?」
「そうだ。他の誰かを頼る前にまず、話してくれ。そうすれば俺は、お前に全力で共力しよう」
一度結んだ手だ。絶対に見捨てない。解けてしまう時は、よっぽどの裏切りのときだけだ。
「あたしの借金が一億円あったらどうする」
「即金は無理だが、手助けはできる」
「しつこいストーカーへの当てつけに使うかも」
「ストーカーは押しのけよう」
「結婚詐欺でたかるかも」
「何だ椛、お前、結婚したかったのか」
「言葉のアヤよ」
それは、、心地の良い違和感であった。意味のない質疑の連続。しかしそれこそが前進なのだ。
……今、椛は石を投げて心の距離を測っているのだ。




