たからばこには‐7‐
妖精の羽根をもったような小雪だ。ひらりと宙を舞うその姿勢には、椛のたくさんの牙は迷子になってしまったようだ。例え椛が牙を見せたとしても、その顎は閉じられない。小妖精が牙にかかって肉袋、命だったものに果てる瞬間を見ずにだろう。
「ひゃっ」
「椛さん」
「わ、わかってるけどつい反射で恐れてしまう。それに小雪はこういうのに慣れているんじゃないのか?」
「慣れてますよ。でも慣れているから驚かないとは別です」
異常な光景だ。椛は何故ここにいる。拉致同然につれてこられたからだ。だが今の椛はどうだ。まったく、何も気にしている素振りもなく、小雪との空気に馴染んでいた。だからこそおかしいのだ。まるで、どこでも良いから居場所を求めているような……。
(あっ)
そういうことなのか、と鏡太郎は、初対面同士のはずの椛と小雪のなかつつましさを見つめながら思う。
椛は自分の居場所を探しているのだ。
小雪の用意したファイナルレッドとかいう映画はともかくとして、だ。椛は映画よりも、その隣にいる鏡太郎と小雪のことを気にかけているようだ。
鏡太郎は口下手だ。──だからこそ話そう、そう……決めた。




