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からのなか‐9‐
初めて来た無人駅であった。目につく街灯が一本しかない薄暗い駅だ。夜天には満月になりきれていない月が輝く。近くの店舗は全てシャッターが閉じられ静かだ。夜がその手を伸ばしている。無人駅に闇の中の孤島のような違和感を、鏡太郎は感じていた。
「この桃ジュース美味いな」
「ちょっとは落ち着いたか椛さん」
「あぁ。息は整えられたよ、鏡太郎」
──ガコンッ!
叩きつけられる金属音。桃ジュースを飲み干した椛が、その缶をクズカゴに投げ捨てた。早い。ほぼ一息で飲んだようだ。
「椛さんとは久しぶり、ということになるか」
「ふざけるなよ鏡太郎。あんた、あんなところで一体、何をたくらんでたんだ」
「たまたま迷い込んだんだ」
「嘘吐き」
「俺のことはこの際、棚においておこう」
「おい。ヤー公があんたをぶっ殺しにくるかもしれないんだぞ。それ以上の問題なんてあるか」




