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からのなか‐8‐
「う、うわぁぁぁっ!」
椛の連れていた男が逃げ出す。鏡太郎もそれにならったほうがよさそうだ。
「椛っ!!」
鏡太郎は椛へと手を伸ばす。
そして──
「え!?」
──椛はその手をとった。
もっともそのことには、手をとってしまった椛が驚きの顔を浮かべていた。
とった手は離さない。指の先に命の熱を感じた。鏡太郎と椛は下卑たネオン眩しい猥雑なホテル街を駆け抜けた。
走る。走る。走る。
走り抜いた先は、終電を見送った無人駅だった。
「はぁ……はぁ……はぁ……!」
「椛は体力がないな」
「あんた……鏡太郎……」
「落ち着け、新呼吸だ。自販機で買ったジュースでも飲め。乾いた喉が潤う」
「ありが……」
桃の缶ジュースのプルタプを開け、椛へ渡した。鏡太郎は小腹が空いていたが、この駅にある自販機では、食べ物は売っていなさそうだ。




