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まえにいっぽ‐4‐
「お待たせしてしまいましたかね、小雪さん」
「いえいえ。偶然、私が早く来ていただけですよ、鏡太郎くん」
テーブルを先にとっていた約束の相手とは、小雪のことだ。小さな体に透き通った羽根が輝く。鏡太郎を見上げる小雪の表情は花を咲かせたような、笑顔そのものだ。鏡太郎の表情も自然と小雪の笑顔につられた。
「何か注文しましょうか? 勿論、こちらの奢りです。私の都合でお呼びしてしまいましたから」
「いえ、小雪さん、先に要件を聞かせてください」
「大したことではないですよ」
「御冗談を。呼びつけられたんです。嫌とはいいませんが、今までなかったことなので驚きました」
「鏡太郎くん」
「はい」




