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わからないきずかない‐9‐
「あの夜……全て計算尽くで、俺から住所を聴いたのか?」
「いや、偶然だ」
「偶然なのか」
「頼れる人が鏡太郎くんしかいなかった、それだけだ」
「そこまで信用されているとは思ってなかった。驚きだ」
「誇っていいぞ」
他の友人や家族は? とは聴かなかった。頼れなかった理由があることは明白だからだ。
「布団はこの襖の奥か? すまない、私はもう疲れて限界なんだ──」
コーヒーを飲み終えた椛は、寝る場所を作り始めた。襖が開けられた。中には、一人で使うには多い数の布団が重なっている。独り身の部屋ではあるが、必ずしも一人で夜を過ごしているわけではなかった。




